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まずもって無体

 おれという人間は日々いろいろなことにムカついている。家人すら、そんなことはどうでもいいじゃないか、と思うような細かいことにさえ、いちいちムカついている。かといって、要望を出すことはしない。いわゆるクレームをつけたりとか、報告して改善を促すとか、そういうことはしない。ただムカついて、個人的にぶつくさぼやくだけだ。ごくごくたまに、そのぼやきの声が大きくてトラブルに発展することはあるけど、そういう時は、まあ場合によりけりだ。相手がしょうもないやつだとおれが判断すれば、食ってかかっていくし、そうでもない場合は比較的簡単に謝罪する。謝罪することは滅多にないけれど。

 とはいえだ。おれを短気なヒステリー男だと、判断はしてほしくない。おれ自身は、むしろ自分のことを、かなり無関心で無感動な方だと認識している。おれってなんでムカつくんでしょうね。あんまり考えたことないけど、ちょっとそのあたりを考えてみよう。どう? なんかいつもの文章とちょっと違う感じ? 書き方は一緒なんだけどね。でも今回はテーマがありそうっぽくない? ま、でも期待はしないで。書き方はいつもと一緒だから。


 ガキの頃から、逆張り人生を生きているミスター逆張りのおれからすると、みんなが同じ方向を向いているってのは、非常に気持ちの悪いことだ。これは感覚的なものなので、どうしてそんな風に感じてしまうのかは自分でもわからない。別にそれがおかしいことだとも思っていなかったし。でも、こういう感覚を持ってしまっているガキってのは、たいへん可哀想な幼年~青春時代を送ることになる。群れからはぐれちまう。おれの場合は家庭が複雑で、お家が貧乏だったから、なおさら可哀想だった。まあ家庭の事情などはどうでもいい。


 うーん。どうもおれがなにを伝えたいのか、はっきりとしないな。おれって本当こういうテーマ的なものを決めて書くって苦手だよな。絞るってことができないんだよな。あれもこれもって説明しはじめちまう。でもおれが他人の文章を薄味に思えるのって、きっと論を絞りすぎてるからだと思うんだよな。お米だけじゃなくて、おかずをちょうだいよ、そう思ってしまうわけだよ。これって罪? いけないこと? いけない!ルナ先生? また出た、おれのクエスチョンマーク三連発。なんでおれはこれが好きなんだろう。それはおれが面白いから。でもあんまりやると飽きられるよ。いいよ別に。

 おれは今、なにを考えながら文章を書いているのかって言うとだね、おれをあんまり嫌わないでくれよ、ってことを伝える文章を書こうってことなのよ。だって明らかに嫌われてるんだもん。異常事態ですよ、マジで。

 確かに自業自得だ。おれは嫌われたってしょうがないことを書いている。そんなもん、わかってることだ。でもさ……少しくらいは好意的な人もいるだろうって思ってたわけ。だっていないわけないじゃん? そう思うじゃん? でもいまだにレスポンスがまったくないもんね。良いものも悪いものも。それが嫌なわけではないんだけどさ、困惑しているのよ。なにが起こってるのか知りたいのよ。あれかな? おれって頭が良すぎてびびられてる感じ? こういうこと書くからシカトされるんだっての。冗談だからな。真に受けんなよ。


 でさ、なんでおれが生まれながらの逆張り男なのかというとさ、もうそういう個体だからしゃーないってことなんだよね。働かないアリみたいなものでさ。労働力的には人類のリザーブって意味があるんだろうし、思考的にはバランス取りって意味があるんだろうと思うよ。そういう役割なの。もう仕方ないの。


 はあ……飽きた。飽きてしまった。おれは、いまおれが陥っている状況に対して、言い訳をしておかねばと考え、理路整然とおれの存在意義を説こうとしたわけなんだけど、しゅるしゅるしゅる~ってやる気が萎んでいった。もういいじゃん。嫌われたままで。文章を書くことに支障はないんだから。でも結構気にしちゃうんだよ? 自分ではそれなりに読める文章を書いているつもりだからさ。一昨日書いた文章なんて自分でもよく書けたなあってちょっと満足したもの。昨日はちょっとアレだったけどさ。けど昨日書いた詩はなかなかよかったね。まあまあ、お気に入りです。あれは他の人が書いた詩のタイトルにピピンと反応して、10分くらいで書き上げたんだよね。まあ、すべてどうでもいいことだけどな。おれにとっても、他の人にとっても。


 結局さ、自分のために書いているなんて言ったって、どうしても他人の目は気になるわけよ。そして、想定外に受けが悪いと、おれもやっぱり動揺してしまうの。人間なのよ。おれだって。悲しいほどに人間よ。人間を超越したいと願いながら、あまりにも人間そのものですよ。トゥーヒューマンですよ。

 文章を書くということは、そういう自分の悲しい人間らしさとの戦いでもある。いかに自分の哀れな人間らしい部分をおちょくることができるか。夜尿症の少年という文章群は、そういうチャレンジでもあるってこと、知っておいてもらいたいね。自分を馬鹿にして、他人を馬鹿にして、世間を馬鹿にして、あわよくば人気を得て、カルトヒーローになろうという試みなんだよ。

 その試みは、現段階では大失敗であると言える。ただ他人を馬鹿にしているだけだ。それはそれで、おれは面白いからいいんだけど、読んでいる人からは盛大にNOを突きつけられている、ような気がしている。だからと言ってだ。終わらせるわけにもいかないし、スタイルを変えるわけにもいかないんだよ。意地? プライド? わたしはいま南のひとつ星を? うるせえな。まあ意地とかさ、そういう部分もあるかもしれない。でも一番大きいのは美学だよね。あと自信。それに反逆。あと嫌がらせ。それと修行。もちろん暇だし。あと、これは真面目に、評価だけが全てじゃないんだぜ、そういうメッセージを届けるって意味もある。評価ゼロでもこんなにしつこく毎日おもしろい文章を書いている偉人もいるんだよって。世界は広いんだよって。捨てたもんじゃないぜって。中にはこんなに素晴らしい人がいるんだよってさ。いま、この世界に絶望している人にこそ、そう伝えたいね。それこそが、おれの役割なんじゃないかな、そう信じて止まない阿部千代であった。


 結論めいた雰囲気になったけど、まだ終われないんだよ。あと原稿用紙一枚分くらいなにかを書かなければいけない。でもなんかこう、おれの中でスッキリしちゃったからな。もう新しいトピックを出そうとはとても思えないよ。もう本当に内容のない、字数稼ぎに終始するけど、もうちょっとだけ付き合ってくださいよ。え、ダメ? いやいや、そうおっしゃらずに。おれ、良い店知ってますから。高くないですよ、この辺は良心的な店ばっかりですから。大宮なんかのならず者の街と比べられたら困りますよ。かわいい子ばっかりですよ。いや本当に。

 そうなんだよ。ちょっと前にチラッと寄ったガールズバーの女の子が、本当に良い子でね。話も面白いし、おれの話でもケラケラ笑ってくれるし、いやあ楽しかったね。持ち合わせがあれば、もう少し居たんだけど、おれもあんまり派手にお金を使うわけにもいかないからね。来月には龍が如く8も出るし。

 やっぱりガールズバーはおれにとって最高の娯楽ですよ。いま生きてて一番楽しい瞬間かもしれん。虚しい男だと思うか? でも若い女の子とフレンドリーにお喋りできるんだよ。こんな最高なことってないじゃない。若いころは男と話してた方が楽しいと思ってたけど、おれは間違っていたね。連中は理屈っぽくて、プライドが高くて面倒くさい。女の子の方がカラッとしていて、下らない話で盛り上がれるから楽しいよね。すごい楽しいんだよ。すべての男はガールズバーに行くべきだね。でもカッコつけんなよ。バレてるからな。あと恋するなよ。そういう場所じゃないからな。おっと、こんな時間だ。ご飯作らなきゃ。それでは。ではでは。さようなら。 

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