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アストラル・アタック!

 ついに文章が簡単に書けなくなった。もうこればっかりは仕方ないよな。いつかこんなときがくることはわかっていた。だが今こそ、おれの自転車操業執筆法に改良を加えるときだということだ。もうあれなんだ。おれの頭の中にはカス、どぶろくに浮く滓みたいなモンしか残ってないんだから、そんなものに期待したってしょうがない。だからね。呼ぶのさ。アクセスを試みるのさ。

 エーテル、メンタル、アストラル、なんだっていいんだ。よくわからない場所から、エネルギーを引っ張ってきて、そいつを文章に変換するんだ。おわかりかな? どこにアクセスしたっていいんだ。おれの中、無意識の中でもいいし、その辺に浮遊している霊性存在からでもいい。なんでも利用してやるぜ。手段なんて選んじゃいらんないの。自動筆記みたいなものさ。文章のリズムとか美しさとか構ってられないの。もうそんなとこ、とっくにおれは後にしてるわけよ。おわかりかな? わかっているのかな? なにも急にスピっちゃったわけではないですよ。だって、うんうん唸りながら、文章を書いている暇なんておれにはないのよ。つーか、誰にもないでしょう? だからですよ。おれであり、おれでないもの、本当におれではないかもしれないもの、そういうものと交信、チャネリングして書いた文章がこの文章ってわけですよ。


 爆音めいた轟音。フルテンにしたギターノイズ。そういうものがおれに元気を与えてくれる。調整された音ではない音が欲しいんだ。そういう音を出すために、ギターは電気を通したのではないか。弦の振動音ではなく、電気信号としての音へと生まれ変わったのではないか。そうだ。もっとやれ! 音の圧で、おれの頬をぶるぶると震わせてくれ。笑ってる場合じゃない。音楽を聴いて笑ってる場合じゃないんだ。チルアウトするための音楽なんて、おれには必要のないものなんだ。ぶっ飛ばしてくれ。おれのからっぽの精神を、根源から揺さぶってくれ。もっとだ、もっとくれ。おれは歯を食いしばってそれに耐えてやる。それが幸せってもんだ。


 キュート&ポップ! ロリポップ咥えた赤いスカジャンの可愛いあのこ。ミニスカートから伸びた真っ白な足には不釣り合いなごっついスニーカーが最高にクールだね。自分の魅力をわかってるんだ。ニット帽からはみ出た、ふんわりパーマのボブヘアがまたイカしてるわけ。綺麗な色だね。話しかけたってシカトされるだけだって、解っちゃいるけど、話しかけないわけにはいかないよな。ねえねえ、その脚、ヤバいね。綺麗過ぎてびっくりだよ。きみと遊びに行きたいな。そうだね、きみとだったら、きっとどこに行ったって楽しいに決まってる。ショッピングモールだって、アウトレットモールだって、ファッションビルだって、きみとだったら楽しいに決まってる。でも結局シカトされて終わるのさ。わかっている。一瞬だけでもきみにアクセスを試みることができたおれって大したやつだろう。身の程知らずなんだ。それがおれの取り柄なんだ。おっかない彼氏は呼ばないでくれよな。


 マツダスタジアムの喫煙所で、おれと同い年くらいのヒップホップっぽい格好した小指と薬指のないヤクザが、信じられないくらい若くてかわいい女の子を連れてて、広島ってやっぱり凄いって思ったよね。見ちゃだめだってわかってるんだけど、ちらちら見ちゃうのね、おれってやつは。ヤクザね。怖いし、関わり合いになりたくないけど、やっぱりどうしても興味あるよね。どこの街に行ったって、まずはヤクザ探しちゃうもんね。東京はよくわからないから嫌いだよ。誰がヤクザで誰がただの輩なのかよくわからないんだもん。八王子はいいよね。逆の意味でよくわからない。みんなヤクザみたいで。スキンヘッドの頭にまで和彫りが入ってる人なんてのが見ることのできるのは、東京では八王子くらいじゃない? いや東の方はよくわからないけどさ。北千住とか。いや行ったことあるけどね。八王子ほどのインパクトはなかった気がするけど、夜の北千住を知らないからなあ。昼の八王子だって普通の街に見えたからね。柄の悪い街。いいんだよねえ。やっぱりおれって不良が好きなんだよ。ヤンキー、暴走族、ギャング、愚連隊、ヤクザ。どうしても惹かれてしまう。憧れではなくてね。憧れなんかはないよ。人種が違い過ぎる。普通に残酷だったりするからな、連中は。でもおれが嫌いで仕方のない凡庸な悪よりは好感がもてるよね。当たり前の話だけどね。だって不良って魅力的だもんね、どうしても。


 凡庸な悪ってなに? おまえらのことだよおまえらの。てめえを善人だと信じて疑わないクソ野郎どものことだ。多数決で善悪決めちゃうおまえらのことだ。おれたち少数派はおまえたちの無邪気な暴力に長年さらされてきたんだ。おまえらがどれだけ危険な存在かはじゅうぶん理解しているつもりだ。ここ小説家になろうでもそういう大多数の論理がまかり通っているけど、おれはそんなもんシカトだね。当たり前の話だよ。なんでクソなやつらがくっちゃべる内容に同意しなけりゃいけないんだ。ファックなんだよマジで。ケツの舐め合い、堀り合い、ほじくり合いを目の前でやられて見ろって。どこか遠くに消えてくれって思うだろう。おれは決してエッセイストなんかではないし、エッセイジャンルがどうこうとかクソほど興味ないけど、エッセイジャンルで書いている人を紹介するみたいな文章書くってのに、おれが入ってないのとかありえないでしょう? って話ですよ。

 どうしてわからないのかな~? ねえなんで? なんでなんでなんで? それは連中が凡庸な悪だから。なるほどね! わかりやすい! これにて一件落着ですな、ホッホッホ。お茶がうまい。

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