第三十話 不思議な眼
この土日で何話か更新予定です。
この話は土日で二個目ですのでご注意を…
不思議な見た目だった。
私は昔から眼がいい。人の中に、微弱にある何かを見ることができ、何となくの感情と嘘を見抜けた。
初めてそれが自分にしかないことを知ったのは小さいころだったからか、周りに変な人扱いされかけたけどそれも個性だと受け入れてくれた。両親も、そんな私を始めから気味悪がる無く接してくれた。
この“何か”がない人や極端に多い、少ない人に会った事がない。どうやらその“何か”は大体同じぐらい保有されているらしい。
けれど、彼女(?)は違った。
何か、強い力で押さえつけているように感じた。流れに違和感があったのだ。どこか人為的な、不自然的な動きだ。
「そんなに、魔力が気になる?」
初対面にも関わらず、ジッと見ていたらしい。
「魔力って何?」
「あなたが見ているモノよ」
何を言っているのかすぐには理解できなかった。
自分の視ている景色は他者とは違うことは小さいころからわかっていたけれど、いざ視ていたモノの名称を言われても、どう嚙み砕けばいいかわからなかった。
「あなたの力を貸してくれない?」
魔力を自分なりに理解する時間を欲しているのを無視するように話を進めてくる。待ってほしいと願ってもシロだった女性は話を続ける。
「あなたの力があれば虚王すらも打ち倒せる」
その言葉を聞いて、魔力に関する思考が一時ストップする。
「…ほ、ほんとに虚王を倒せるの?私の力があれば」
「ええ」
即答だった。
自分の質問なんてわかっていたかのような即答に、戯言のような内容に現実味を感じた。
それでも、この話を自分一人の一存で決めることは出来ない。空の果てを視て、天気を知って、陽光を浴びたいとは思っても、その実力が伴っていたとしても自分はまだ子供だ。
「……お母さんに相談させて」
絞り出した声に反応して、白い、魔力と呼ばれる物質で出来た壁が霧散していく。
「あら、お帰り」
いつものリビングに戻って来た。
いつものようにあっさりとした反応を示すお母さんに(びっくりしなさすぎでは?)と思いながら「うん」と返事を返す。
「改めて、私はマーリン。魔女よ」
「お母さん。もしかして、このマーリンって人と知り合いなの?」
マーリンのことを指さしながら話を振る。
「人を指差さない。……ええ。そうよ。私たち夫婦の命の恩人ともいえるわね。故郷の村の危機を解決してくれたのよ」
お母さんはハルジオン近郊の村出身だ。それもあって、昔命を落としかねない人災に会ったことがある。このマーリンはそれをどうにかしたのだろう。
「…じゃあ、お母さんはシロがマーリンだってわかってたの?」
「ええ。だって、あなたのことを見守る必要があるって言われてねぇ。ヒナが生まれてからは人以外の形で見守っていたのよ」
ふと、幼少期から自分の周りには何か小動物がいたことを思い出した。というよりのなぜか小動物に好かれていた。それがこのマーリンであるなら辻褄が合うんだろう。
「……お父さんは許してくれるかなぁ」
ヒナの父にこのことが知られるのは、3か月後の春だ。
「大丈夫。私が説明しておくから。行ってきなさい」
母とマーリンの話は準備をしていたから聞けなかったけど、大丈夫だと確信している。
玄関で向き合う。
最後というわけでは無いけれど、当分顔を見ることは無い。
「行ってくるね」
「それじゃあ、次会うときは快晴の下かしらね」
「そんなにすぐにはできないよ。多分だけど」
母の自分よりも少しばかり大きな手を、頭の上に置いてくる。この動作をされるととても落ち着くから、小さいころからよくせがんでいた。
「一個だけ、いいかいヒナ。自分の人生なんだから、色んな世界を見てきなさい。いいね?」
「……うん。わかった」
「まぁ!まだわからないだろうけどね。ほら行ってらっしゃい!いつでも帰ってくるんだよ!」
背中を押してくれた母に背を向け、家を飛び出す。
「行ってきます!」
ヒナは、母親との別れを済ませ、生まれて数度しか出たことのない町の外へと足を運ぶ。




