第二十一話 魔眼
続けざまに、ヒナは自分の眼のことを話す。
「使用用途としては、魔力の流れ、魔術陣の場所等の魔力に関するあらゆることの看破です」
「………リズウェルさんは魔眼持ちなのか!?」
黙っていたカナタはその驚くべき内容に歓喜し、その眼をもっと近くで見ようと机に身を乗り出した。咄嗟にヒナは身を仰け反るが、カナタにはその眼にわずかな魔力を帯びていることが分かった。
『魔眼』
一定の割合で極少数の生物が持つとされる魔術を帯びた目の総称である。
魔眼と言っても、眼からビームを出すがのごとく魔術を発動させたりすることは出来ない。目とはそもそも何かを見るための感覚器官、つまり受動的な器官なのだ。そのため、目に魔術を組み込めれた魔眼だろうと、所詮それは目の延長線上にすげないため、見ることに特化した能力しかつかない。
そんなこともあるので、戦いに魔眼その物を使用することはほぼ皆無に等しい。だが、本来見ることのできないものまで見ることができるため、戦いに利用されることはある。
本来、この器官は昔に存在していたエルフという種族が有しており、エルフの一定数の者は魔眼を生活に役立てていたらしい。
「しかも、魔素看破の魔眼か!」
カナタはより身を乗り出すが、ヒナも同様にその分身体を引いていく。その反応を見たカナタは徐に人差し指を立て、目をつむる。
「Koagulering vat helse /r Hvis det blir det Resonance/e」
カナタは言語化することのできない特殊な言葉でも使うかのように何かをつぶやく。
そんな姿が、魔術の起動であることを視たヒナは逃走を図ろうとする。
「《kropp tilbakeholdenhet》」
しかし、カナタの口頭形成による魔術形成の速度は逃走すらも許さずに、簡単に拘束されてしまった。
「少しだけ、ね?いいでしょ?」
さわやかな顔つきで言っているがヒナにとっては恐怖でしかない。わずかに動く眼球を動かし、マーリンに助けを求める。マーリンもこちらを少し気にしていたのか簡単に目が合った。マーリンはため息をつきながら「あきらめて」とだけヒナに言った。
助けを求めた師匠にも易々と見捨てられて軽くショックを受けているヒナをよそに、カナタは魔眼の観察にいそしむ。
「マーリンのほうばっか見てないでこっちを見なさい」
そう一喝され否が応でもカナタの方に目を向けてしまう。改めてカナタの顔を見ると形が整っていて、美人のマーリンにも引けを取らないほどの美人だった。深紅の髪色に合わせたかのようなきれいな目をしているカナタと見つめあう形になっているヒナは、これ以上ないほどに緊張していた。
こんなに自分の眼をみられることもなかったヒナは、多少のテレもあったのか自分の顔が赤くなっていることがわかった。
目のことを受動的な器官だと書きましたが、じゃあ能動的な器官とは?と考えるとなんも思いつきませんでした。
とりあえず、今のところは変えるつもりはありませんが、もしかしたらこっそり変えているかもしれません。ご容赦を。




