第十八話 歴然の差
後で聞いた話だが、その時ヒナが顔を赤くしたのは恥ずかしかったからではなく、怒りの感情でいっぱいだったからだそう。
ヒナにとって、この状況を推察していた。
マーリンの旧友は昨日のうちに来なかった。なら次の日である今日に来てもおかしくはないと考えていた。
謝罪の気持ちを持ってここに来るならそれはそれでいい。しっかり自分の非を認めてくれればいいと思っていた。
けれど、そこにいるのは全身に魔力を帯びさせた存在。それに、明らかに自分に対しても魔術行使しようとしていることは視てわかった。
ヒナは咄嗟に立てかけていた剣をとる。
マーリンの知り合いであることはわかっているものの、自分に魔術が飛んできそうな状況に体が反応してしまった。
ヒナは、剣を抜いた流れのままに剣を上段に上げつつ、素早く間合いを詰める。
そのまま、流れるように剣を振り下ろす。
いきなりの出来事に、命を狙われていることを遅れて理解したのか、片手に携えていた木製の杖で剣を受けに来た。
ヒナは価値を確信した。鉄製の剣が木製の、まして剣でもない杖に防げるものではないと思っていたのだ。
ガキィン!
が、家の中に響いたのは金属と木がぶつかる音では無かった。
ヒナの慢心も、カナタの油断も瓦解するには十分の音だ。
二人の顔が少し歪む。
(なんで!?どうしたら木で金属を止められるの!?)
ヒナは受け止められたことに思考を持っていかれ、一瞬のラグができた。本気で殺す気で剣を振ったわけでは無いが、まさかいとも簡単に受け止められるとは思いもしなかった。
その間も、遅刻者は魔力を体にまとわせ続けている。その顔は決して、こちらを見下しているわけでもなく、ただただ驚いているようだった。
ヒナが硬直していた数瞬をついて、魔術を叩き込むっことぐらいできそうなのに、一切そんなそぶりは見せない。神経を逆なでしているかのようなその言動に、より深い怒りを覚える。
もう一度、距離を詰め、怒りの感情を剣に乗せるが冷静に剣劇を描く。攻撃と攻撃の間を極力短くして反撃の隙を与えないように無呼吸で連撃を放ち続ける。
マーリンとの模擬戦闘を思い出しつつ、相手が格上であることを前提とした動きをする。格上の相手の場合、下手に受け手に回るより、攻め手に回った方が幾何か勝率がいいらしい。しかし、格上の彼女はどんどん加速していく剣速を杖一本で受け、反撃もしてこない。攻めているはずのヒナだったが、名前も知らない彼女との差は歴然であることを肌で感じる。マーリン相手にも持っていた感覚に近いが、何かが違うように感じた。
「……ああああ!」
唇を噛み締めて、悔しさを隠している暇すらないヒナは、外聞なんて気にしないように剣を打ち込む。
もうすでに、彼女がマーリンの旧友かなんて関係なかった。ただ、彼女に負けるのが嫌だった。
自分の弱さに憤りを感じているヒナは剣劇を続けていくにつれ、加減を忘れ、本気で命を取りに行こうと体を動かしていった。
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