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曇天のカナタ  作者: 菊桜 百合
第1章 陽光なくとも花々は咲き誇る
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第十五話 自業自得 

 迷いの森(ウィッチ・スコッグ)を歩き始めてから数刻、カナタは案の定道に迷っていた。より正確言うなら、迷わされたという表現の方が正しい。

 何処まで行ってもこれは迷路であり、この森に一本道は存在しない。入ったモノを惑わせ、迷わせ、狂わせる。

 さっきも言ったが、だからこそ、この森は(たち)が悪い。ただの人にとってはここは地獄よりもつらい。なんせ周りには、変化することのない木々しかなく。空を見ても一切の変化は見えない。

 自分の進んでいる道の是非は自己の判断で下せるはずもなく、自分の正確な位置も理解することは不可能だ。


 曰く、マーリンの工房は、人によっては30分と持たずに狂人になってしまう。もしくは、運がよく森を抜け出せても数日は寝込んでしまうほどの精神汚染に見舞われる。それほどまでにここは厄介だ。

 本人はかわいいトラップと言っていたが、それもあくまで本人談である。時間の流れが根本的に違う彼女の()()()()で言わないでほしい。傍から見たら、ただのえげつないトラップだ。

「なんで、毎回、こんな思い、するんだよ」

 カナタは平野だったはずのハルジオン近郊にあるはずのない急な坂道を一歩一歩確実に登っていく。

 これでも簡単になっている事実に目をそむけたくなりつつ悪態をつくことしかできなかった。


 この工房を作るにあたって、マーリンはカナタに手伝いを求めている。

 『幼少期の恩を返すと思って、手伝ってほしい』と言われてしまえば、断ることは出来ない。だから渋々手伝うことを承諾したが、どうやら術式の調整をミスったらしい。本来、この工房の迷路を攻略しないといけないのはマーリンとカナタを除くモノだったはずなのに、その枠組みから外れている。

 この事実に気づいたのはハルジオンに着いた時だった。

 時すでに遅しというか、覆水盆に返らずというか、事前に知っていれば対策のしようはいくらでもあったはずなのに、どうしてこうなった、と考えるしかできなかった。


 ここまで、カナタは文句を言い続けているが実はこの工房の迷路は難易度が何個か存在していて、マーリンに認知されている者は強制的に難易度〈やさしい〉になっている。これはカナタの術式があまりにも、難しすぎたためマーリンが変更させたからだ。もしカナタの術式のままであったら、森の中は死人だらけになっていたかもしれない。これはマーリンの考えた最低限の救済措置だったりする。


「もう疲れてきた…。あとで絶対魔術ぶちかまそう」

 ただの自業自得で最低な決意を胸に、独り言を口にしているカナタの声は周りにある無数の木々に吸われ、風音だけが森を支配していた。

気づいたらユニークが100人超えていました。びっくりです。

見てくれた方々、ありがとうございます。

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