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曇天のカナタ  作者: 菊桜 百合
第1章 陽光なくとも花々は咲き誇る
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第十三話 悪態

見てくれている人が意外に多くて驚いてます。

頑張らせていただきます。

 本来、魔術というのは魔術以外の事象に対して絶対的な優位性を持っている。極まれにその優位性をひっくり返すレベルの才能を持った者も現れることもあるが、その才能に気が付くこと無く一生を終えることがほぼである。

 それもそのはず、魔術は一般的な技術ではない。むしろ秘匿されているモノだ。秘匿に秘匿を重ねた魔術、特に《固有魔術(ユニーク)》と呼ばれている術式に至っては、その性能は秘匿性が物を言う。


 魔術とは情報の塊、情報体と言っても過言にはならない。 

 実際、魔術には認知されているモノとされていないモノでは天と地ほどの差ができる。

 仮に、火を生み出し火球として相手にぶつける魔術があったとする。魔術を知らない者からしてみれば、いきなり火の玉が自分めがけて投げられる。だが、もしすでに魔術についての理解をしている者ならば、無意識下で自身の体内の魔力を使って極薄い壁を作る。

 そのため『結果を知っている』という状態は無意識な抵抗を生む。だからこそ、腕の立つ魔術師は魔術を放ったことを悟らせないように、または壁を貫通するほどの威力を出すなどしてこの問題を強引に解決している。


 ハルジオンの門番は、魔術の事を知らなかった。

 ただ、その事実があったからこそカナタに何もすることができなかった。

 体内の魔力が反応することなく眠らされ、少女の人ならざる身体能力に何もできなかった。

 眠気に抵抗する。特異な事態に対応する。これらも、あらかじめ知っていればできなくもないのである。



「それにしても、あの子は何をしでかしたんだろう」

 周りに誰もいないことをいいことに、独り言の声量を気にすることをしない。月明りすら存在しない世界にある、かすかな光はハルジオンの壁の向こう側だけだった。

(こんなことになるなら、ハルジオンで一泊すればよかったかなぁ。マーリンに会ったらとりあえず文句を言おう)

 現状の元凶へと心の中で文句を言う。

(大体、マーリンはいつも勝手だ!あの時も、一獲千金のチャンスを無駄にさせるし!あの時だってーーー)


「ーーーんうん?」

 眼を開けると、曇りだった。マーリンへの愚痴を考えていたら、眠っていたらしい。木から落ちないようにかけていた魔術を解除し、飛び降りる。

 音を立てずに着地したカナタは、昨日の時点で隠していた荷物袋を草むらから取り出す。荷物の中にある白手袋をつけて、右手の親指と薬指を使って器用に音を鳴らす。

 この行動がキーとなってカナタの目の前に水球ができる。かすかに体内の魔力が抜けたのを感じつつ、そのまま洗顔や簡単な髪の手入れ、朝の水分補給などを済ませた


 ひとしきり朝の準備を済ませ、立ち上がると感じたくないモノを感じる。異様な魔素を含んだ森は、まるで夜のような暗さに帯びていた。この目の前に広がる森を見ると億劫になる。待ち合わせを無断で遅らせてしまったことだし、このまま王都に帰ってもいいのでは?という思考に陥る。

 だが、ここまで来てしまったからには行くしかない、と決意をしてカナタはマーリン専用の魔女の工房である迷いの森(ウィッチ・スコッグ)に入り込んでいった。

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