ひねくれものと学園のマドンナによる波乱万丈ラブコメディ
陰キャとは、その名の通りノリについていけない暗い感じの人たちのことを言う。
そんな陰キャだがネットでは醜い争いが繰り広げられている。
「いや、俺の方が陰キャだからw」
「これのどこが陰キャだよ、俺なんてクラスに一人も友達いないw」
こんな輩がネット上には大量にいる。陰キャのブランド化とでもいうべきだろうか。
自分の方が陰キャと主張する
しかし断言しよう。
現実に陰キャはほとんどおらず、いてもただ面倒くさいだけなのである。
陰キャにメリットだとか、ブランド価値は一つもない。
そんな真に恵まれない人間こそ陰キャなのである。
爆ぜろビジネス陰キャ
俺の名前は佐藤龍平。
女子に話しかけたら目がキョロキョロして言葉が出ないし、カラオケに行っても盛り上がらないのである。そのくせアニメやラノベ、ゲームにはまっている典型的な陰キャである。
本当にどうしようもない人生だ。
しかし俺は自分の立場をわきまえている。
容姿端麗、頭脳明晰な学校のヒロインと付き合うなどという煩悩はとうの昔に捨て去っているのだ。
「ねぇ、龍平君。」
ん?俺の名前が呼ばれた気がしたが気のせいだろう。
「ねえってばー、聞いてる?」
「え?」
「もう何考えごとしてんのよー。」
「ああ、すまんすまん。」
話しかけてきたのは学年一の美少女「涼風いずな」だった。
キラキラ成分は控えめで、お近づきになりたい女子では間違いなくNo.1だろう。
そのくらいナチュラルな魅力がある学園のマドンナである。
いやいや突然学年一の美少女から話しかけられて戸惑うなというのが無理な話だろう。
当然陰キャの俺は話したこともないのだ。
「龍平君のLOINアイコンって」
「ああこれ」
「これクルナドだよね?このアニメ、龍平君も見てるの?」
「あ、ああちょっとね。」
クルナドとは、少し前に流行った感動系アニメである。
義務教育として学ばせろ、という意見もあるほど、根強いファンが多いのである。
え、いずなさんもクルナド見てんの?うれしい。
でも気持ち悪がられてないかなー、ここは慎重に会話せねば。
「クルナドは友達の影響で見始めてハマったんだよ。LOINのアイコンはわかる人だけわかるようにね。」
「そうなの!これ見た瞬間にピーンときて、クルナド好きに悪い人はいないわ。友達追加しておくから、また話しましょう。」
「ああ」
「じゃあ、またね。」
ん?とんでもないことがあったような…。
まあ気のせいだろう。夢かなにかを見てるんだなきっと。
こんな俺が学園のマドンナとLOIN交換なんてするわけ
えええええええええーーーーーーーーーー!!!!!
凄い、これが陽キャの距離の詰め方なのか。
でも一般的な陽キャはこんな陰キャに話しかけたりしない。
それでも涼風いずなという学園のマドンナは、俺に話しかけてくれた。
こうやって人を見下したりせずに、誰とも平等に接してくれるのが涼風いずなの魅力なのだろう。
うん、だって陰キャの俺はこれだけで惚れそうだから。
えー、何を話せばいいんだろうか、入念な準備が必要だなこれは。
そうやって俺はじわじわと胸の高鳴りを感じていた。
その日の夜、俺のLOINアカウントに一件のメッセージが来ていた