表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/44

15 無能で穢らわしい人間の分際で

「貴様の目的は何だ……?」


 ルディガーが問う。次の攻撃に警戒を強めながらも、ルディガーは堂々と響く声でその場を支配した。


 挑発にも取られかねない角度に眉をひそめ、ルディガーが言った。


「持っている力を使いたがる者は、たいてい幼稚な目的しか抱かない」

 

 警備隊がなだれこむ。彼らは素早く状況を判断してエッケルトのそばに近寄り、負傷した彼の身体を保護する。

 フランシーヌのまわりにも警備隊員が張りつき、その場からの離脱をはかった。

 皇太子の盾になろうとする護衛たちにルディガーは前へ出るなと命じる。

 敵との対峙の緊張がつづいていた。


『そう問われるなら、この場の目的は、フライアの聖女の死だな』


 漆黒の謎めいた魔術師が片腕を振った。

 同時に鳴りわたる銃声。

 

 無数の氷の矢が降りそそぐ瞬間に、フランシーヌは首の連珠をむしりとった。


「く、くらえ、白煉の魔術師のパチモンめ、おとといきやがりなさいよ、雑魚がーッ!」


 ルディガーの放った鉛弾は白炎の結界に阻まれ砕け散った。だがフランシーヌがとっさに投げつけた数十個の珠は白炎をすり抜け、結界の中で清浄な光の嵐を起こす――。


 常人の瞳を灼く光輝が辺り一帯をつつみこんだ。


 やがて光と闇がすべて消え去った気配に人々が顔を上げると、魔術師は消えていた。


 しかし、瞼を開いたフランシーヌの視界は闇に閉ざされていた。

 何か柔らかいものに頭からすっぽり身体全体を包まれ、抱きしめられているような感じで……それは幼い頃からよく知る気配で、慣れ親しんだ暗がりの心地よさを感じさせた。


「フランシーヌ。大丈夫ですか。怪我はありませんでしたか?」


 そう、これはメルテレースだ。

 フランシーヌは安堵して顔を上げた。


「どうやら大丈夫なのよ。メルテレースが攻撃から庇ってくれたの?」

「はい。フランシーヌに傷ひとつ付けさせたくありませんから」

「ありがとう、メルテレース。あっ、ルディガー皇太子は?!」

「あっちはどうでもいいです」

「おい、貴様……」


 抱きしめる力をなかなか緩めないメルテレースの腕の中から振り仰ぐと、まだ敵と対峙する緊張状態の厳しい顔つきをしたルディガー皇太子が、銃を構えたまま言った。


「貴様は何だ?!」


 フランシーヌは一瞬意味がよくわからなかった。

 この状況の意味が。


「ちょっと待って。ちょ、ちょっと待って。メルテレース、さっきから私は誰と喋って……メルテレースよね。でもメルテレース……あなたさっきから普通に喋ってる?!」

「ああ、何か最近、喋れるようになりました。二週間前くらいから? 不思議なこともあるものですねえ」

「そ、それは良かったけど。でももう一つ待って。ルディガー皇太子殿下、あの……メルテレースが、視えてる……?」


 完璧な顔を歪めたルディガーが軍靴を鳴らし近づいてきてメルテレースのこめかみに銃口を突きつけた。


「貴様、フランシーヌ・フライアから離れろ!」

「嫌ですね」

「は?!」

「君こそ僕のフランシーヌになれなれしく近づくのはやめてください。無能で穢らわしい人間の分際で」


 フランシーヌにはけして見せたことのない冷たい表情を向けてメルテレースはルディガーに言い放った。


「フランシーヌは生まれたときから僕の所有物ものです。君には絶対にわたさない。わかったら早く離婚しろ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ