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【第58話】入団式模擬戦⑦ 僕の部隊


 第10騎士団には裁量の大きな中隊として、グランツ隊とラピリア隊の2つの部隊が存在している。


 この2つの部隊は第10騎士団の10の部隊から、数隊をどちらかが率いる場合に呼ぶ。つまり今回の模擬戦のようなケースだ。


 また、この両部隊はレイズ様が出陣するほどではない案件において、処理を一任されて出撃する場合もある。


 レイズ様の言った”僕の部隊”とは、この中隊のことだ。


 ありがたい話ではあるけれど、しかし、中隊はグランツ様やラピリア様だから成立しているのではないだろうか。


 つまり、レイズ様に代わっても大将として任せられるという、部隊長や兵からの信頼があっての話だ。


「はっきり言って、部隊長の人達から僕には、そこまでの信頼はないのではないですか?」


 僕は正直に口にする。


「そうか?」とレイズ様は涼しい顔だ。


「そうでしょう」と僕が続けるも、レイズ様はグランツ様とラピリア様を見て「どうだ?」と聞く。


「そうですな。私は面白いと思いますが。捨て身云々はともかく、エレンでは卓越した見識を示してみせ、ハクシャでは果敢な判断と策で結果を出して見せました。そして今回の演習では複数の部隊を問題なく、いえ、高く評価できるくらい見事に動かして見せました。決して不足はないかと」と、グランツ様がやたらに褒めてくれる。


「ま、レイズ様やグランツ様や私には遠く及ばないけれど、普通の部隊長よりはマシかも知れないわね。でも、調子に乗るんじゃないわよ」というラピリア様。


「けれど、、、」まだ困惑している僕に、レイズ様が一言。


「ともかく一度、中隊に組み込む部隊の部隊長に聞いてみればいい。自分の中隊に入ってもらえるか? と。もちろん、ベクラド、ハース、サーグ、ジュノの4部隊以外だが」


 中隊は2つ部隊を固定して、必要に応じて増援する。グランツ隊はベクラド隊、ハース隊が、ラピリア隊にはサーグ隊、ジュノ隊が固定で所属している。


 僕がロア中隊を作るとすれば、残った6部隊から2部隊、選ぶことになる。というか、僕が声をかける相手はほぼ決まっているようなものだ。レイズ様もそれを分かった上で聞いてみろと言っている。


 、、、、、もしかして僕の中隊のことも見込んで、リュゼルとフレインを僕の指揮下に付けたのか? この人は本当に、、、、どこまで見越して話をしているんだ?


 僕は今日初めて、レイズ様の本当の凄さを体感した気がした。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「ロア隊? ああ、いいぞ」


「俺もだ」



 一旦レイズ様のいる天幕を辞して、先ほどまで酒を酌み交わしていた場所に戻ってきた僕は、リュゼルとフレインに中隊の話をして、それから協力を仰いだ。


 その答えは想像以上にあっさりとしたもので、少し拍子抜けしてしまった。


「本当にいいのかい? ロア隊だよ? 自分で言うのもなんだけれど、不安しかない部隊だと思うよ?」


「構わん。今回、俺とリュゼルがこちらに回された時から、もしかすると、とは思っていた」とフレインが肉を齧りながら答える。


「基本的に中隊に配属される部隊は固定で、入れ替わりは滅多にないからな。少し憧れていたんだ、中隊」とリュゼル。


「レイズ様に2人が問題なければ、連れてくるように言われたんだけど、、、、」


「そうか、なら行こうか」


「本当にいいのかい? ロア隊だよ?」念を押す僕に、リュゼルとフレインは顔を見合わす。それから僕を向いてニッと笑顔を見せる。


「いいじゃねえか、ロア隊。しかもあの蒼弓、ウィックハルトのおまけ付きだ。俺たちが支えてやれば、なかなか強い部隊だと思うぞ」と言ってくれるので、僕は密かに泣きそうになった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 と言うわけで再びレイズ様の天幕。


「2人の意志は分かった、では、ここにロア隊の成立を承認する」


「ありがとうございます」僕らは揃って頭を下げる。


 それから、リュゼルがよろしいですか、と手を挙げた。


「どうした?」


「ロア隊に配属されることに異論はありませんが、我が隊は第10騎士団で唯一の騎兵隊です。今後の先行任務などはどのようになりますか?」


「ああ、実はそのこともあって2人を呼んだのだ。実は、騎兵を増やそうと思っている」


「騎兵を?」


「そうだ。第10騎士団は元々騎兵の少なさが難点だったからな、ここが良い機会だと思う」


 レイズ様の説明によれば、第10騎士団に騎兵が少なかったのは、この騎士団が他の騎士団に比べて一番歴史が浅いからなのだと言う。


 実質レイズ様の騎士団として誕生した第10騎士団。そのため騎兵を育てるのが遅れていたのだ。ある程度練兵も済んだ現在、騎兵を増やすか考えていたのだけど、今の騎兵と歩兵のバランスでも十分に強さを発揮していたため先送りになっていたと。


「だが、先日のハクシャのように、より機動力が求められる場合もあるかもしれん。その時に騎兵隊がリュゼル隊だけでは心もとないからな。そこで、だ。フレイン」


「はい」


「フレイン隊も騎兵隊にするのはどうか?」


「我が隊をですか! はい! ぜひ!」躊躇なく食いついたフレイン。フレインも馬、好きだものなぁ。


「よし、では、フレイン隊と、あとはもう1部隊を騎兵隊に切り替えることとしよう」と満足げなレイズ様。


「ってことは、、、ロア隊は全て騎兵で構成される部隊になるんですか?」


「そうだ。何か問題はあるか? むしろお前の戦い方には向いていると思うが?」


「いや、なんだか責任重大な気がして、、、、」


「気がするのではなく、責任重大なのだ。お前たちロア隊には機動力を十分に発揮して働いてもらうこととなる。期待しているぞ!」



 最後は気合を込めるように語気を強めたレイズ様の言葉に、リュゼルとフレインが「はっ!!」と力のこもった返事をする。



 こうして僕の部隊、ロア隊はここに産声を上げたのである。



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