表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

364/379

【第346話】真実③ 頼み。

いつも読んでいただきありがとうございます。

本日話のキリの関係で、少し短めですみません。


「おい、一体何を言っている?」


「どうかよろしく頼む」


 不機嫌そうに抗議するのはムナールであり、それを無視して僕に頭を下げるサクリ。


 正直全く予想外の要望に、僕も些かきょとんとしてしまった。


 ムナール、この人物は一体誰なのだろう? 少なくとも、正導会を始めとした主要な会派には、そんな名前はなかったように記憶している。


「、、、、ムナールが誰なのか、気になっておるようだな。この者は何者でもない。さらにいえば、教会に名を連ねてさえいないのだ」


「教会の人間ではない?」


「左様。貴殿らが教会についてどこまで知っているかわからんが、教会にサルシャの血の混じった者の居場所などない。いや、リフレアと言う国の中に、居場所がないのだ。この者は食って行くために仕方なく、此度の首謀者、ネロ=ブラディア個人に雇われただけの部外者よ」


 部外者、、、、にしては、危険な雰囲気を纏った人物だけど、、、


「一つ宜しいか?」


 ウィックハルトが発言を望み、サクリは小さく頷く。


「その者を野に放って、ルデクに、或いはロア=シュタイン様に危害を加えないという保証は?」


 その言葉を受けて、サクリがムナールへ視線を移す。


「兄上の命でなければ、そのようなことをする必要はない。そうであろう? ムナールよ」


 だが、ムナールは不機嫌そうに「だから俺の事を勝手に決めるなと言っているのだ。なぜ、貴様にそのような施しを受けねばならんのだ?」と、今にもサクリに掴みかからんばかりだ。


 しかしサクリも引き下がらない。


「もう良いのだ、ムナールよ。お前を虐げてきた者達は、今日、潰える。お前には随分と汚れ仕事を押し付けてきた、、、、もう、十分であろう。ここからは好きに生きよ」


「お前っ、、、!!」


 なおも何か言いかけたムナールを再び無視し、サクリは改めて僕の方へ頭をさげ「頼まれてくれるか」と願い出た。



 サルシャの混血に居場所がない? それはつまり、この赤い瞳をした老人にも同じことが言えるのではないか? だとすれば、ムナールを逃がすのは、サクリの個人的な願いということなのだろうか。



 僕は、サクリの条件を飲んでも良いかなと言う気持ちになっていた。しばらくは第八騎士団をつけ、ムナールの動向を監視すれば問題ない。



「、、、、分かった。サクリの要望を受ける」



 僕の返答を聞いて顔を上げたサクリは「感謝する」と礼を述べ、「では、早速ムナールは預けておく。教皇は後から送り出す。約束の刻限を守るためにも、本山へ戻らさせてもらう」と言うと、早々に陣幕を出てゆく。


「おい! 俺の話はまだ、、、、!」


 なおも食い下がろうとするムナールに「長い間、ご苦労だった」と言い残して。



 サクリとはもう少し話してみたかった気もするけれど、本人にその気がないのなら仕方ない。僕は一人残されたムナールに視線を向けた。


「さて、ムナール殿、約束通り我が軍が保護させていただく。しばらくは別の陣幕で、監視のもと、、、」


「待て、俺からも話がある」


 僕の言葉を遮って、ムナールが口を出した。少し怒っているようにも見える。



「なんだ? 悪いが、サクリの助命は受け付けられない」



 先手を打って伝えると「違う。そんなことを願うつもりはない」とキッパリと否定するムナール。


「あの男が決着をつけるまで、お前達はこのまま包囲を続けるのだろう? なら時間があるはずだ。俺も対価を支払う。俺の話を、聞いてもらいたい」


「話を聞く?」


「ああ。聞くだけだ。他に何も、、、いや、それは話を聞き終えてからでいい。とにかく俺の話を聞け」


 最後は命令口調である。



「おお、生意気だな」

「ロア、ちょっと小突くか?」



 血の気の多いのが色めきたったけれど、止める。何を話すのか聞いてみたい。それに、サクリには聞けなかったことを聞き出せるかもしれない。



「許す。長い話か?」


「そうだな。それなりには」


「ならお茶を用意させる。それからムナールにも席を」


「いや、俺はこのままでかまわん。茶を用意するならここで待つ」


「そうか。では、悪いが、こちらは準備させてもらう」



 そうして準備が調い、僕らは話を聞く体勢をとった。



 そしてムナールの口から語られたのは、全ての、本当に全ての、始まりの物語であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] サルシャの血というよりは、異国の血が混じっていること自体が純血種には「許しがたい」のでしょうか。 「純血」ですもんね。 サクリやムナールがかの国で受けた仕打ちはどのようなものだったのか…
[気になる点] おお、とうとう真相回か。 ロアがなぜ死に戻りしたのかなどの理由も浮上してきたりするんだろうか?
[気になる点] ムナールの対価 [一言] お兄ちゃんが自分だけの助命を願った瞬間に蜘蛛の糸にまで細っていたサクリの家族愛がプツっと切れてしまった感じで残ったのは血を理由に虐げられてきた憤りなんですかね…
2023/05/11 05:02 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ