表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

355/379

【第337話】フェマスの大戦23 運命の一手



「ぬうん!!」


 戦場にザックハートの槍が唸り、敵兵が吹き飛ばされる。それが何度か繰り返され、徐々にザックハートの回りからは敵兵が避けて空間ができた。


 そのぽっかりと空いた空間に、一人の騎士が飛び込んできた。騎士はザックハートを見ると、口角を上げる。


「なるほど、噂に違わぬ無双ぶりよ。しばし、私の相手をしていただこう」


「貴様は?」


「聖騎士団、騎士長の五席が一人、ショルツと申す。一手、願いたい」


 ザックハートと比べると小柄な体躯であったが、纏う気配は強者のそれだ。


「、、、よかろう。貴様の首を掲げて進軍してやる」


 言葉を交わすはここまでとばかりに、先ほど塁壁を砕いた巨槍を軽々と横に薙ぐ。


「できますかな」


 ショルツは騎馬ごと体勢を低くすると、前傾姿勢のままザックハートとの距離を詰めてゆく!


 ショルツのわずか頭上で空を切る巨槍。初撃を避けたショルツは、地面へと押しつけた騎馬が跳ね上がる勢いを利用して、速度のある一閃を繰り出してきた!


「小癪な!」


 ショルツの放った槍はザックハートの右の肩当てを跳ね上げ、その肩に赤い線を残す!


 一瞬の攻防ののち、距離を取る両者。


「やるの。その腕で無名とは惜しいものだ」


「一応、国内ではそれなりに知られているのですがね」


 軽口ののち、再び槍は交錯する。


 周辺の兵士たちは、敵味方問わず、嵐のような戦いにとにかく巻き込まれぬように逃げ回るのだった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「なかなか手強いわね」


 思ったよりも強い抵抗を示すリフレア兵に、ニーズホックは感心したような声を漏らした。どうやらそれなりに優秀な指揮官が敵にいるようだ。先ほどからニーズホックの用兵に併せて、細かく部隊を動かしながら行手を阻んでくる。


「一度強行突破しますか?」


 レゾールの提案。その横顔は、突撃したくてたまらないように見える。気分が高揚しているのだ。こういう時のレゾールは、強い。


「分かった。レゾール隊と、、、適当にもう一隊連れてかき回してきなさい。アタシ達はあっちの元気なのをこのまま支援するから」


 ニーズホックが言った”元気なの”とは、今大暴れしているフレイン中隊だ。先んじてリュゼル隊が突っ込んできて奮闘していたが、フレイン達も合流して、その勢いを増していた。


 彼らは東の砦の攻防戦以外、ここまでほぼ戦闘に参加しておらず無傷に近い状態であったため、前線にいる味方の中でも最も余力のある部隊だった。


 また、ここまで戦いに参加できなかった鬱憤が溜まっていたのであろう。ここぞとばかりに敵を突き崩している。


 勢いがあって良いのだが、ニーズホックから見て少々前のめりな感じがある。普段であれば冷静に事を運ぶ将達だろうけれど、今回は色々あったから仕方ない部分はある。


 しかし、向こうに用兵上手がいるなら、その勢いを利用して罠に嵌めてくるかもしれない。ニーズホックはフレイン中隊が孤立しないように、上手く立ち回りながら敵と戦っていた。


「では、少し散歩してきます」


 嬉しそうに言ったレゾールは「前に立つもの、全て突く!!! 突撃!!」と叫ぶなり、敵陣を切り裂いてゆく。


 その様子を見てニーズホックは少し苦笑する。前がかりなのは第二騎士団も一緒か。


 陽がゆるりと傾き始めた。暮れるまであと一刻くらいかしら?


 慣れぬ地形で夜戦は避けたいところね、、、


 そう思いながら、ニーズホックは夜戦になった時の対策を考え始めるのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「おらあ!! 次だ!!」


 リュゼルが先頭で敵指揮官の首を獲り、咆哮した。


 指揮官を討たれ、またその迫力に怯んだ敵目掛け、リュゼル隊が一斉に攻めかかってゆく。


「う、うおおおおおお!!」


 必死に槍を振り回す中には、新兵のロズヴェルやノーキーの姿も見えた。散々リュゼルに鍛え込まれた彼らも、なかなか堂にいった戦いを繰り広げている。


 もう新兵とは呼べんな。ロズヴェル達の戦いを見たリュゼルは目を細め、成長を喜びつつも、近づいてきた敵兵をまた一人、切り伏せた。


 リュゼル隊はとにかく前へ前へと切り進み、フレインがラスター隊に上手く指示を出してリュゼル隊が包囲されぬようにフォロー。


 現時点でリフレア兵にかなりの損害を与えているが、それでもまだ、リフレア兵も反撃するだけの気概を見せていた。



 文字通り、敵味方入り乱れての大混戦。


  

 両軍ともに死力を尽くした極限状態の戦いは、この直後、決着に向けて大きく動き出すことになるのであった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 戦況を見守っていたサクリの元に、慌てた様子の伝令が駆け込んできた。


「フェマスの北方より砂塵!!」


 同じ頃、敵陣を一度駆け抜けて突破し、再び背後から切り裂きつつ戻ってきたレゾール隊から、ロアの元へも伝令が届く。


「リフレアの北より、軍影を確認!!」



「「来たか、、、、」」



 サクリとロアは、期せずして同じ言葉を、呟いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] フレーフレー、ロア‼️ フレーフレー、ザックハート様‼️ フレーフレー、ニーズホック様‼️ フレーフレー、レゾール、フレイン、リュゼル‼️‼️‼️ 作者さん、どうぞご自愛ください。
[良い点] ともに、 来たか… カッコいい!
[一言] ツァナデフォル、様子見していて勝ち馬に乗りたくて出てきた???
2023/05/02 04:50 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ