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【第281話】ゾディアック家の人々① 蠢く貴族


 ある日、サザビーが緊張の面持ちで僕の部屋にやってくると「監視対象が動き始めました」と言った。


 この監視対象とは、先日はっきりした要警戒貴族のことだ。即ち、貴族が何か良からぬ事を始めたという意味。


「それじゃあ、人払いをしたほうがいいかな?」


「ええ、ですが、ラピリア殿は一緒が良いですね。少ししたらネルフィアも来ますので」


 サザビーの言葉に従ってラピリアだけが残り、ウィックハルトとディックには通路で警戒に当たってもらう。


 サザビーの言葉通り、さして待たずにネルフィアがやってきた。ネルフィアとゆっくり顔を合わせるのは、少し久しぶりとなる。


「早速ですみませんが、本題に入りましょう」早々に切り出すネルフィア。


「貴族関係で、私が残されたと言うことは、私の実家が絡んでいるのかしら?」


「ラピリアの言う通りです。情報の出元や仕掛け人は彼ららしく上手く隠していますが、ほぼ、監視対象の者達が蠢いているのは間違いないかと」


「それで、どんな事を?」身構える僕に、「見合いです」というネルフィア。


「ん?」今なんて?


「監視対象の有力貴族の一つから、ゾディアック家に見合いの話が来ています」


 ポカンとする僕とラピリアを前にして、ネルフィアが事の次第を話し始めた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 ここ最近、貴族の間で密かにおかしな噂が出回り始めました。曰く、「ゾディアック家がリフレアと通じている」と言うものです。


 その根拠となっているのが、ラピリアの存在だと言うのです。


 噂では、リフレアが勝利した暁には、ラピリアはリフレア教皇の親族との婚姻が決まっており、それゆえに今まで全ての縁談を断っているのだと。


 ええ、突然降って湧いたおかしな話、馬鹿馬鹿しいことは間違いありません。が、ここで噂を声高に否定する貴族が現れます。バーミトン家の当主、ブルク=バーミトンです。


 ご存知の通り、北部でも格式のある貴族で、ブルクは貴族院に名を置いたこともある人物ですね。


 そのブルクが「そのような噂は、リフレアが流した虚報である。だが、このまま名家ゾディアック家が疑われるのは良くない。幸い当家には立派な息子がいるので、ラピリア殿と見合わせてはいかがであろうか?」とゾディアック家に提案してきたのです。


 ゾディアック家が断ると「リフレアに通じているわけではないのなら、ラピリア殿がそろそろ身を固めるのもおかしな年ではない」と迫り、強引に見合いの話を進めているようです。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「馬鹿馬鹿しい、そんなの、私が断れば終わりじゃない」


 ラピリアが憤慨するが、ネルフィアは首を振る。


「ラピリアはそうでしょうが、おそらく狙いは別にあるかと。断られたあとに年下の妹君や弟君と婚約を迫ってくるでしょうね。身の潔白を証明するためとなれば、ゾディアック家も一方的に無下にはし難い。平時なれば、家格も申しぶんないですし。ご兄弟はまだ年若いとはいえ、婚約成立に至れば、なんらかの理由をつけて、バーミトン家に迎え入れる可能性もあります」


「そんな!」


「十分にあり得る話です。そして縁続きとなれば色々とラピリアがやりづらくなる。場合によっては第10騎士団を追われるようなことにもなりかねない」


「どうしてラピリアが第10騎士団を?」僕も思わず口を挟む。


「色々と立場を悪くする方法が取れる、と言うことです」ネルフィアの言葉に、貴族の不気味さを感じる。


 確かにラピリアの動きを封じれば第10騎士団にとって大打撃だ。兵士たち、特にラピリア隊にも大きな動揺も誘えるだろう。それに、ラピリアとしては兄弟を人質に取られる事となる。


「それじゃあ、バーミトン家を内通の嫌疑で吊し上げればいいんじゃ?」


 僕の言葉にネルフィアの口は重い。


「難しいですね。内通しているのは分かっていても、今はまだ、証拠が不足しています。ダーシャ様になんらかの指示が届いていないか確認しましたが、残念ながらなにも。ヒューメットとは別の人間が動いているのかもしれません。おそらく、この件でバーミトン家を調べても、今は何も出ない可能性が高い」


「それじゃあ、どうすれば、、、」


「それを相談するために来たのですよ」


「既に何か策があるの?」ラピリアが少し前のめりになって聞く。


 年若いという妹や弟を巻き込むようなことは避けたいのだろう。全く許せない、いやらしいやり方だ。僕だって協力できることはなんでもしよう。


 僕も憤慨しながらネルフィアに伝える。


 僕の言葉を聞いたネルフィアは、「その言葉を聞いて安心しました」と少し微笑む。


 それからこほんとひとつ、咳払い。


「要はですね、ラピリアにリフレアとのおかしな噂が介在する余地がなければ良いのです」


「うん」


 ネルフィアの言葉に揃って頷く僕とラピリア。


「つまり、ラピリアに既に心に決めた殿方がいることがはっきりすれば、彼らの話は根底から覆されることになります」


「うん?」


 ネルフィアの言葉に揃って首を傾げる僕とラピリア。


「と言うことで、ロア殿、ラピリアと婚約してもらえません?」



「「ええ!?」」



 僕とラピリアは思わず顔を見合わせた。



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― 新着の感想 ―
ホントこの国の貴族って…… 王様の不興を買って財産半分没収された癖に直属の騎士団にちょっかい掛けるとかどんだけだ。 そもそもそれを判断するのは王様であって、馬鹿が幾ら騒いだ所で馬鹿か? とでも返してや…
[良い点] よくないけどやったー
[一言] そうなるよね てめえら結婚してしまえってな
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