表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

261/379

【第249話】ホッケハルンの決戦11 剣


 退却の銅鑼に気を取られた僅かな時間、銅鑼の音に示し合わせたように、第一騎士団に襲いかかった部隊があった。


「どこを見ている裏切り者ども!」

「生き様に恥じてそのまま死ね!」


 騒がしい一団が突入すると、不意を突かれた第一騎士団の兵達は、その姿を確認するより前に人生を終える。或いは状況がわからぬままに、気がつけば吹き飛ばされていた。


「今度は何だ!」


 苛立つルシファルは騒ぎの方向に視線を向けて、再び目を疑う。


「なぜ、あの旗印がここにあるのだ!?」


 それは第四騎士団の二頭の山猫。暴虐の双子、ユイゼストとメイゼストのものだ。なぜ、第四騎士団が? まさか、第四騎士団も参加しているのか!? ロアは第四騎士団の参戦を隠すために、兵を分けたと!?


 ルシファルは自分でも気づいていないほど動揺している。


 なぜだ、なぜ、これほどまで私の思う通りに進まぬのだ!?


 どこで間違えた!? どこで主導権が私の手からこぼれ落ちた!?


 叫び出したい気持ちを抑えるルシファルだったが、彼は一つ勘違いしている。


 この戦い、主導権は最初からルシファルの手の中には無かった。だが本人は気づいてはいない。知る由もない。最初から全てにおいて、ルシファルの思惑を潰すためだけに動いていた人物がいたことを。


 双子の強襲により一時混乱した第一騎士団であるが、流石に精強を誇る兵たちである。すぐに立て直すと混戦となる。


 金属の擦れあう音と立ち上る砂煙の中、決着の時はすぐそこまで迫っていた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 双子の突撃を少し離れた場所で見守っていた僕ら。本当は僕らもすぐに突撃したいけれど、「本隊を動かすなら、勝利を確認した時になされよ」とヴィオラさんから窘められる。


 言われてみればその通りだ。僕は今、第10騎士団の指揮官なのである。本隊が早々に突入して、その後の状況判断を誰がするのだ。


 ぎゅっと拳を握って、僕らは固唾を飲んで戦況を見つめる時間が続く。


 そんな本隊の方にも一部の部隊が攻め寄せてきたけれど、ウィックハルトが指揮官と思しき騎兵を一撃の元に射抜くと、早々に退いていった。


「おお! 抜けたぞ!」


 興奮しながら叫んだのは、僕の隣で戦況を見守っていたリヴォーテ。


 僕らが注視しているのは、双子の部隊とは別の隊旗。



 僕は心のなかでレイズ様に語りかける。



ーレイズ様。僕たちの剣が、ルシファルに届きますー




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 第一騎士団と第10騎士団が一進一退で激闘を繰り広げる中で、するするとルシファルへ近づいてくる部隊があった。


 それを見たルシファルはギリと歯軋りする。


 ルシファルも良く知る旗印だ。


 その部隊は戦場の中をまるで舞うように、ルシファルの目前に迫って来ていた。"あれ"はここまで辿り着くだろう。



 ルシファルは自らの剣を抜く。



 そしてついに、ルシファルの前に、一人の騎士が躍り出た。



「会いたかったわ! ルシファル!」



「貴様らはどこまで私の邪魔をすれば気が済むのだ!!!!!」



 これ以上の会話は無用。両者が馬の腹を軽く蹴り、一気に距離を詰める!



「ここで決着をつける!!! ルシファル! 覚悟しろ!!!!」



「黙れえええええええええ!!! ラピリアああああああああああああ!!!!」



 小柄なラピリアよりも先に、ルシファルの剣の鋒がその顔に突き出された。



「もらった! 死ねぇ!! ラピリア!!」



 ルシファルの渾身の突きはラピリアの兜を弾き飛ばし、髪の毛を散らす。




 そして、




 紙一重でルシファルの突きを避け、ラピリアの放った剣は正確にその喉を貫いていた。




「な、、、ぜ、、、、」



 口から血を滴らせながら、ルシファルは心底分からないという顔で、ラピリアを見る。



 ラピリアは目を細め、静かに、諭すように言った。



「そうね、、、もしかしたら貴方は、未来から嫌われたのかもしれないわね」



 その言葉がルシファルに届いたかは、ラピリアには知る由もない。そして、どうでも良いことだ。



 ルシファルは馬上からゆっくりと崩れ落ち、音を立てて地面に突っ伏した。




 かつて、ルデクに滅亡を招き入れた梟雄、ルシファル=ベラス。何も得ることなく、何も残すことなく、ただ、戦場に散る。




 ルシファルが完全に動きを止めたのを確認したラピリアは、すっと剣を天に掲げたのであった。



 



明日は250話到達記念で、お昼にSSも更新いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いやぁ、ルシファル、思った以上に無能…とは違うか、ロア達が何枚も上手だったからかな?
ラピリアの気持ちを考えるとマジで泣きそう… ロア!戦いはこれからだから頑張れ!
良かったただ無様に死んでくれて、こいつに全く有能ってイメージ無いから、下手に足掻かれても不快なだけよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ