表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

247/379

【第235話】新生、第10騎士団(下)


 シャリスからの緊張が伝播したのか、室内には少し張り詰めた沈黙が漂った。


 それはそうだろう。シャリスは第10騎士団としては新参も新参、それも今回の騒動の元凶とも言える第一騎士団につい先日まで所属していた将だ。


 グランツ様と、グランツ隊に所属していたベクラドさん、ハースさんがいないとはいえ、第10騎士団には他にも優秀な部隊長は多数残っている。そんな中での指名。


 或いは表立っての不満を漏らさずとも、内心で不快感を抱える将もいるかもしれない。それは第10騎士団として望ましくない。


 しばらく様子を見て、誰からも苦言がでないことを確認した僕は、丁寧に理由を説明してゆく。


 まず、第一に、シャリスの実力。


 これに関しては誰も異論はないと思う。第一騎士団の将の中でも飛び抜けて若いシャリスが、それでもルシファルの側近に取り立てられたのは、単に家柄によるものではない。このことは、この場にいる全員が理解している。


 加えて、僕が帝国に出かけていた期間、シャリスとグリーズさんも第10騎士団の訓練に参加していたため、「できる」という認識は兵士の間にも広く浸透しているようだ。


 そして次に、元第九騎士団の兵の扱い。


 これにはまずグリーズさんにも確認しなければならない。シャリス中隊が誕生した場合、グリーズさんにはシャリス隊に入ってもらいたい。


「無論、かまいません。こちらとしても望むところ」


 グリーズさんとしても、道中苦楽を共にしたシャリスの下はやりやすいとのことで、ここはあっさりと決まる。


 その上で、シャリスには、元第九騎士団を吸収した部隊を率いてもらいたいのである。


 僕らの元に辿り着いた時、シャリスやグリーズさんと共に逃げ果せた元第九騎士団は100名ほどだった。


 けれどその後、僕らが第九騎士団を撃破した後に、続々と王都へ投降兵がやってきた。その数は実に1000名を超え、もはや一つの部隊を形成できるほどになっている。


 それらをグリーズさんに預けて、その上にシャリスが指揮をする。


 これを見た相手はどう思うだろうか。


 第一騎士団や第九騎士団でも、末端の兵士たちの中には迷いを感じている者たちは多いだろう。特に第九騎士団の兵士は。


 そこに元第一騎士団、第九騎士団の将兵が取り立てられているのを見れば、戦況次第では投降しやすくなるのではないか。


 そのための策も考えている。


 シャリスやグリーズさんには敢えて、従来のそれぞれの旗印と一緒に第一騎士団の旗印と第九騎士団の旗印を掲げてもらう。


 親の顔より見た旗印が敵軍でたなびくのを見れば、相手に対して「王の認めた騎士団はお前たちではない」という強烈なメッセージになるのではないか。



 そして最後に、この配属であれば現行の第10騎士団の編成を大きく動かすことがない。これから起こるであろう第一騎士団やリフレアとの戦いを前に、つまらない伝達ミスが起こる原因などは極力排除しておきたい。


「、、、、といった理由からなのだけど、何か意見はあるかな?」


 僕が説明を終えて皆んなを見渡す。


「ロア」声を上げたのはヴィオラさんだ。


「はい。なんでしょう?」


「お前は一つ誤解をしている」


「何をです?」


「こうして皆の意見を集めるのは悪いことではない。だが、こういった隊全体の決断を迫る時は、まずはお前が通達という形にするといい。レイズ様はそのようになされていただろう、お前もよく知っているはずだ。何せ、お前を第10騎士団に入れた時とよく似ている。反対意見があれば、個々に聞いて、説得しろ。この場にいる者たちは、不満を腹に抱えてそのままにはせん。レイズ様であっても言いたいことは、ちゃんと言う」


「しかし、、、」僕はまだ正式に第10騎士団を預かったわけでもない。今はあくまで王の指示で取りまとめ役を担っているだけだ。


 なおも躊躇する僕へ、今度はジュノ隊長が絞り出すように口にする。


「、、、、レイズ様は、、、、もう、おらぬのだろう、、、、」


 まだ、レイズ様の死は公表されていない。第10騎士団の中でも知っているのはごく僅かな人間だけだ。


 けれど、彼らは分かっているのだろう。


 道中でも薄々感じていたのだろう。


 そしてこの、第一騎士団との決戦を待つ時間に、気持ちに整理をつけた。


 レイズ=シュタインは、もう、いないと。


「、、、、はい。近々、公表を」


「そして、ロア、お前が王から第10騎士団を任せられる、違うか?」


「まだ正式に聞いてはいませんが、おそらく」


「なら、やはり、お前が決めれば良い。新生第10騎士団を引っ張ってゆくのは、貴殿だ」


 ジュノ隊長の言葉に、みんな穏やかに僕を見ながら頷いてくれる。


「エレンの村、ハクシャの戦い、ゼッタ平原の戦い、ゴルベル遠征、それらでお前がどれだけの結果を示してきたか、みな、見てきているのだ。今更ロアの実力を疑うものはここにはおらぬ。お前に命を預けることに異論はない。だから、ロアが決めよ」


「、、、、ありがとうございます」気を抜いたら涙が出そうだ。


 最終的に決定した編成を、ネルフィアが書類に書き記してゆく。




第10騎士団指揮官(副騎士団長):ロア


本隊直属参謀:蒼弓、ウィックハルト=ホグベック


参謀兼ラピリア中隊隊長:戦姫、ラピリア=ゾディアック

ラピリア隊:サーグ部隊長

ラピリア隊:ジュノ部隊長


フレイン中隊隊長:フレイン=デルタ(騎兵部隊)

フレイン隊:リュゼル部隊長(騎兵部隊)

フレイン隊:ラスター部隊長(騎兵部隊)


シャリス中隊隊長:シャリス=イグラド

シャリス隊:グリーズ部隊長

シャリス隊:デトマーズ部隊長


本隊直属、特別遊軍隊隊長:ユイゼスト・メイゼスト(重装騎兵隊)

特別遊軍隊補佐官:ディック

本隊直属部隊:ヴィオラ部隊長

本隊直属部隊:カプリア部隊長


従軍軍医:ジュド

戦巫女兼軍医見習い:ルファ


 こうして、新しい第10騎士団はここに産声を上げることとなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 第174話でヴィオラ隊長はレイズ様の死を知っていたはずだけど、あえてその死を再確認するような発言をしたのは、他のみんなを代表してってことでしょうか。
[良い点] ヴィオラさん……、そして他の人たちも。 現状を理解し、悔しさを飲み込んで、これからはロア君を支えるのですね(´;ω;`) [一言] レイズ様亡き後の第10騎士団。ついに再始動するのですね。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ