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【第162話】レイズ=シュタインの一手④ 枠にはまらない彼女たち


「つまり今回の話を聞きつけて、勝手に来たってこと?」



「勝手にではない」

「それは軍令違反だろう」



 双子から軍令を諭されるのはなんだか腑に落ちない。けれど、ちゃんと許可をもらってここにいるのか。僕はレイズ様に視線を移す。レイズ様は苦笑しながら僕に手紙を手渡した。



 差出人は第四騎士団の団長、ボルドラス様だ。


 要約すると、うちの双子がすみません。戦力になるとは思いますので、よければ使ってやってください。邪魔だと思ったらすぐに突っ返していただいて構いません。すみません。という内容。


 繰り返される謝罪の言葉が涙を誘う。


「ユイメイはどこで今回のことを聞いたの?」手紙から目を離して、双子に聞くと



「おいおいロア、それはらしくない質問だぞ」

「私たちは第四騎士団の要だぞ」


 などと言う。第四騎士団の要はボルドラス様であって、君達ではない。それは断言できる。


 ただ、確かに僕もうっかりしていた。今回の件、少なからず影響のある騎士団の上層部には話が伝わっている。なら、第二騎士団と同じ砦を守る第四騎士団における、双子の立場からすれば、当然耳に入るか。



「それでだ。ロア。ユイゼスト、メイゼストの希望もあり、2人をロア隊へ預けたいと思うが、どうだ?」


 こちらとしても大きな戦力の加入だし、預かるとすればある程度交流のある、僕のところかラピリア様のところのほぼ二択だ。二人が騎兵であることを考慮すれば、ロア隊の方が活かせる場面は多いだろう。


 僕が了承したところでレイズ様の話は次へ。


「さて、集まってもらったのは出撃順の確認だ。まずはロア隊、次にラピリア隊、到着次第だが、第二騎士団を順次。そしてグランツ隊、本隊の順で問題ないな?」


 誰からも異論はない。これは事前に打ち合わせ済みの確認事項だ。


 いっぺんに万の部隊がリフレア領内へ入ってゆけば、周辺の民草が何事かと思うだろう。そのため部隊を分割して、順次北上し、リフレアとゴルベルの国境付近で再度合流するのである。


「さて、もう一人だが、、、、」


 本題はこちらだろう。今回の遠征、フランクルト将軍、、、、今はもう将軍ではないのでフランクルトが同行し、ゴルベル領内の案内を担う予定。


 こう言った時のために、第10騎士団では様々な国の人を採用しているけれど、砦の内部事情などを知るフランクルトの情報の価値は、頭ひとつ抜ける。


 フランクルトは僕らがホッケハルンの砦に到着するのに合わせてやってきた。王都まで同行して以降は会っていなかったけれど、元気そうではある。


 先導を担うということは、なるべく先発隊に組み込んでおきたい。つまり僕ら、ロア隊が適任ではある。


 だけどロア隊にはウィックハルトがいる。第10騎士団内ではこれ以上ないほどの因縁の組み合わせである。他国の領土を抜けるという、ただでさえ不確定要素の多い道程だ。要らぬ混乱をもたらす必要はない。


 けれど、一番最初に「ロア隊と同行するのが良いかと思います」と言ったのはウィックハルトだった。


 そしてウィックハルトはさらに続ける。


「既に我が国が亡命を受け入れた方にこのような物言いが失礼にあたるのは重々承知の上で、申し上げてもよろしいですか」と。


 視線を走らせたのはレイズ様とフランクルトの両名だ。


「私と貴殿の関係を考えれば、なんということはありません。何を言われても、それに私が激昂することはないとお約束しよう」


 フランクルトが了承したので、レイズ様が言葉を続けるようウィックハルトに促す。


「、、では。本当に失礼にあたるが、はっきり言ってしまえば、私はまだ貴方を信用してはいない。もしかしたらゴルベルの放った密偵、あるいは刺客ではないかと疑っている」


 それは流石に言い過ぎじゃないかと思うけれど、ウィックハルトの言い分も分かる。


 けれど、フランクルトは先日漸くゴルベルから先に逃していた家族と合流できたと聞いた。この状況下で裏切る必要性があるのだろうか?


 レイズ様は黙ってやりとりを見守っている。ならば僕もここは口を出すべきではないだろう。


「、、、なるほど、言いたいことは分かりました。つまり私の従軍に対して、貴殿という監視を付けたい。そのように申されるのだな」


「ええ。不快とお思いなら断っていただいて構わない」


「いや、ならば私も望むところだ。私に二心無きところを、自らの目で見聞していただきたい。レイズ様、私のロア隊への同行をお許しいただきたい」


 フランクルトの返事を聞いたレイズ様は、ウィックハルトに厳しい目を向ける。


「ウィックハルトは私情でフランクルトを害することはないと約束できるか?」


「この弓にかけて」


「ならばいい。こちらとしては元よりロア隊に組み込むのが理想だったからな」


 少々緊迫のやりとりを経て、フランクルトの同道も決まる。


 空気が緩んだところで双子が腕を組んでやれやれと言った様子で口を開いた。




「おいおい、ウィックハルト、いきなり喧嘩を売るな」

「少しは協調性っていうのも覚えた方がいい」




 、、、、、、他の誰に言われても、双子にだけは言われたくないセリフだった。








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― 新着の感想 ―
初出が書類上遊撃バーサーカー♂の中身が秘書系美人姉妹だったのに、今では立派な脳筋双子(二人がかりで準団長クラス)。基本タイマンしないのに、団長クラスを挑発すると云うモニョる点は気になるけど、仮に人気投…
繰り返し読ませていただいて、その度に感動を覚えております。初感想ですが、ボルドラス様が好きで好きでたまりません。その気持ちを残したく書かせていただきました。いつも投稿ありがとうございます。
[一言] キレのある落ちが最高です(白目
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