【第15話】10の騎士団
「さて、改めて話を聞かせてもらおう」
短剣と共に辞令を押し頂いた後、王によって別室へと連れてこられた僕。
慣れた足取りでテーブルに着く王とレイズ様。それにグランツ様とラピリア様。
僕がどうして良いのかオロオロしていると、側仕えの人が椅子を引いてくれる。恐縮しながら座ると、王が話を聞きたいと言った。
「話、、、と言いますと?」
「無論、瓶詰めの話だ。今のところこの話を知っているのは第10騎士団の一部の人間と、私だけだ。念の為聞くが、他の者に話していないだろうね?」
「ああ、それならまだ。あの、レイズ様、、、信用できる文官を集めろというのは、、、」王の話を遮って申し訳ないが、ここまで物々しくなると、話した相手が監視される目に遭うようなら気軽に選べない。
「希望人員を私の方で見て判断するつもりだ」と簡潔に答えが返ってきた。そういうことが聞きたいのではないのだけど、仕方ない。あとで改めて確認しよう。
それで僕は王とお茶をしながら、瓶詰めについて説明する。と言っても、レイズ様に説明したのと同じ話になるだろうから、多分一通り耳に入っていると思うのだけど。
「しかし、そのような古代の技法があるとは、興味深い物だな。なぜ廃れてしまったのであろうか」
「あ、多分ですが、、、、当時は入れ物の技術がまだちゃんとしていなかったのではないかと思います」僕はレイズ様に聞かれた時用に用意しておいた設定を話す。
「、、、、ほう? どういうことかな?」
「これも多分、ということになってしまうのですが、瓶詰めで結構重要なのは最後の空気抜きだと思うのです。瓶詰めを開封したら、その後は日持ちしないということからも、空気に触れると鮮度を保てないようです。そうすると、熱しても大丈夫な密閉できる容れ物を製造するのが難しかったのではないかと」
「一理あるな。レイズ、どうだ?」
「ええ。可能性としては十分にあり得るかと。尤も、そのような技術しかない時代になぜ、瓶詰めのような方法が確立したのかという疑問はありますが」
「うむ。しかし、異国の話と聞いた。ならば、その原因を探るのは難しいだろうな。ロアが見たという書物が見つかれば、また探り様もあるのだが」
「すみません。なにぶん子供の頃のことなので、、、」
「仕方のない事だな。ところで話は変わるが、ロアは古今の戦の話を集めていると聞くが、好きな将などはいるのか。いや、このように聞いた方が面白いか。我が国の10の騎士団を順序づけするとすればどうか?」
、、、、この質問、趣味を聞かれて嬉しい反面、なんとも話しにくい話題だ。
「王よ、お戯れを」レイズ様が苦言を呈するも「そうだ、戯れであるから気軽に答えよ」と、絶対に答えないと話を終わらせない雰囲気を出す。
「、、、、第10騎士団と第一騎士団は別格として良いですか?」
「そうだな。構わぬ」
「では、、、、守備に関して言えば、第四騎士団、第五騎士団、第七騎士団がそれぞれ優れているように思います」
「第四騎士団と第五騎士団は分かるが、第七騎士団は分からんな。なぜだ?」
「第七騎士団の団長は、第三騎士団の経歴が長いのであまり知られていませんが、元第四騎士団の一兵卒から出世してきた叩き上げです。今までの戦闘記録を見ても、目立たないけれど堅実な守り方をしています」
「、、、、レイズ、第七騎士団は現在どのような任務についている?」
「街道の警護や物資の輸送支援ですね」
「ロア、警護や物資の輸送支援に向いているのはどの騎士団だ?」
「、、、個人的には、第三騎士団か、、、後は第九騎士団が向いているような気がします」
「なぜだ? いずれも我が国でも有数の、歴戦の攻め手だが?」
「だからです。この2つの騎士団の団長は経験を積んだ方々です。なので、臨機応変に動けます。支援任務中に近くで戦いの狼煙が上がれば、王都に確認しなくても、最適な行動をしてくれるのではないかと」
「面白いな。あと残っているのは第二騎士団、第六、第八か。その辺りはどう思う」
「、、、第八騎士団は、第一騎士団や第10騎士団と同じように、少し特殊ですよね?」
表立っては普通の騎士団だけど、主だった功績などはほとんどない。基本は後方支援活動部隊となっている。そして団長さえよく分からない。
多分、第八騎士団は騎士団と言っているけれど、諜報部隊とか、暗部のような存在なのではないだろうかと思う。
「、、、、では、残りの第二と第六は?」ゼウラシア王は第八騎士団について否定も肯定もしなかった。これ以上は聞くな。そういう事だろう。
元々この国に騎士団は8つしかなかった。国庫に余裕ができたことと、帝国の脅威に対抗するために2つの騎士団が追加されたから埋没したけれど、最後の番号の騎士団だったのが第八騎士団だ。
「残りの2つは攻め手で良いと思います。第二騎士団は自慢の騎兵があり、機動力も申し分ないです。第六騎士団もゴルベルとの戦闘で多くの栄誉を賜っています。それに、第六騎士団の団長は団長の中では一番若く、騎士団自体に勢いがありますので」
、、、、とりあえず無難な感じに説明してみたけれど、どうだろう。窺うようにゼウラシア王を見れば、少し考えるような仕草をしてから「面白い考察だな。レイズ、君の保証がなければどこぞの間者かもしれないと疑うほどだった」という。
しまった、調子に乗りすぎたかな?
「寝食を惜しんで戦闘記録の書物を漁っているとは聞いておりましたが、これは確かに大した物ですな」とレイズ様が少し呆れたように僕を見る。
「うむ。しかし有意義な時間であった。ロアよ、レイズの補佐をすると聞いている。私がレイズをお茶に誘うときは、お前も同行するといい」
「え? あ、はい」僕の返事を聞くと「では本日はここまでだ」とお茶会は終わる。
僕らが立ち上り退出する頃合いを見て、
「そういえば、瓶詰めのために信頼できる文官を探しているんだったな」と声が飛んでくる。
「はい」
「その人選だがな、、、私に心当たりがある。任せてもらえるか? 必要な人数は何人だ?」
一応問いかけの体を成しているけれど、これはもう決定事項なのだろう。僕としてはデリクとヨルドにお願いするつもりだったけれど、それによって監視がついたり2人の生活が窮屈になるくらいなら丸投げの方が楽だ。
「当面は2人もいれば十分かなと思っています」
「分かった。では近々向かわせる。それでは」
その言葉で今度こそ本当に、僕たちは部屋を後にした。




