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【第139話】王からの呼び出し

 王家の儀式が大成功のうちに終わり、王都に戻って程なくした頃。


 僕は王様から呼び出された。


 完全に怒られるつもりで謁見室にやってきた僕。


「さて、まずはご苦労だった」と労うゼウラシア王に対して、「王子を色々連れ回してすみません」と先手を打って謝っておく。


 王は少し虚をつかれた顔をしてから、何がだ? と聞いてくる。


「その、王子に演説させたり、戦場に引っ張り出したりしたので、、、」と僕が答えると破顔した。


「なんだ、そのようなことを気にしていたのか。いや、そういえばその件に関して話していなかったな。ゼランドには素晴らしい初陣になったようだ。そして、良い儀式の彩りになった。王として、そして父として感謝しよう」


 そのように言われたので、僕はほっと息を吐く。よかった。怒られるわけではなさそうだ。


「まぁ、呼び出したのはその一件が大いに関係はしているが。ついでに此度の事の顛末を話しておこうと思ってな」


「事の顛末ですか?」ん、今なんか気になる言い回しをしたな? ついで? なんの?


「うむ。べローザ家の者達についてだが。賊どもを扇動したのはセンブリア=べローザであると確定したゆえ、つい先日、べローザ家の縁者全てを捕らえた。センブリア=べローザ、デンタクルス=べローザ親子以外はな」


「センブリア=べローザ達は?」


「向かった時には自害しておった。故に、それ以外の全てを捕らえた」


 微笑んだままのゼウラシア王だけど、当事者が死んでいるのに、一族を全て捕らえたという言葉が意味するものは重い。


「、、、、取り潰し、、、という事ですか?」


「少し足りんな。禍根は残せぬ、、、、ということだ」


 一族皆殺しか。苛烈だけど、やったことを考えれば仕方がない。王子の命を狙うような真似をして王が許せば、他の貴族が増長しかねない。


 王にとってはタイミングも良かった。ゴルベルが弱体化し帝国は沈黙している。騎士団の視線を国内に向ける余裕がある今なら、多少の不満を漏らそうと、大きな火の手を挙げる貴族はいないはずだ。


 ただ、、、


「、、、、何か言いたげだな?」


 王が聞く通り、少しスッキリしない。


「色々なことが杜撰だったな、と」


「話してみよ」


「確かにセンブリア=べローザは厳しい立場にあったでしょうけれど、ゼランド王子を襲撃するような真似をしなければ、ここまでの結果にはならなかったと思いますが、違いますか?」


「そうかもしれんな」


「にも関わらず、見たところ完全に準備不足の見切り発車で襲撃を計画した。なぜでしょうか?」


「ロアはなぜだと思うか?」


「唆した者がいるのでは? 何か、成功を確信できるような約束があった」


「ならなぜ失敗した?」


「最初から唆した方は約束を守るつもりがなかったのではないかなと思います。正直に言ってあの程度の烏合の衆がいくら集まっても、襲撃が成功したとは思えないです」


 僕の言葉をそこまで聞いたところで、ゼウラシア王が「くく」と少し笑う。


「何か変でした?」


「いや、すまん。レイズと全く同じことを言うのだなと思ってな、つい笑ってしまった。ロアの考察、見事である。私もレイズから話を聞きその可能性は十分にあると考えている」


「では、調査が進んでいると」


「うむ。ただ、べローザ家の者達は何も知らぬようだった。そして肝心のべローザ親子は自害している。いや、殺されたのかもしれんが。どこまで迫れるかは分からぬが、調べは進めている」


 王の苦い顔を見るに、後手後手に回っている。特定するのは難しそうだな。僕が何となくそう思っていると「話題を変えよう」と王が表情を改める。


 ここからが本題のようだ。


「ロアよ、ゼランド王子の臣下になってくれぬか」


 王は唐突に口にする。


「王子の臣下、ですか? それは第10騎士団を離れろと?」それは少し困る。けれど、どう言って断ればいいのか悩みどころだ。


「いや、立場は今のままだ。ハクシャでもゼッタでも活躍した将を後方で遊ばせるつもりはない。今のロアの立場は私の臣下として、第10騎士団に所属しているのだ。これはロアに限らず、レイズや、ほとんどの兵士がそうなっている」


「それをゼランド王子配下で、第10騎士団所属に変えると?」


「うむ。ゼランドは王家の儀式を終えた。これからは王族として色々仕事が増えてゆく。今後は直臣を増やしていかねばならん。ロア、ゼランドは貴公に信頼を置いておる。先日の儀式から帰ってきても、自分の儀式の話より、ロア隊の活躍の話の方が多かったほどだ。貴公さえ良ければ、ゼランドの最初の直臣として、私は適任ではないかと思っている。無論、レイズにもこのことは相談済みだ。願わくば、将来的には私とレイズのような関係を築いてもらいたいと思っているのだ」


「それは、、、過分な申し出ですが、貴族ではない僕が最初の直臣で大丈夫なんですか? それにウラル王子の反応も気になるのですが?」


「ウラルについては問題ない。ロアとの模擬戦以降、随分と落ち着いている。それにウラルはゼランドより5つも年下なのだ。まだまだ幼い。ゆっくりと理解してゆけば良い」


 、、、、ウラル王子、ゼランド王子よりもずっと良い体格していたのに、5つ年下? 今日一番驚いた。成長したらとんでもない偉丈夫に成長するんじゃないか?


「平民の出である、という点においてはロアの懸念の通りではある。レイズもそれで随分と苦労した」


「え? レイズ様って平民だったんですか?」


「うむ。帝国との功績を以て貴族に任じたのだ」


 そうだったのか。


「ロアをすぐに貴族に上げるわけにはいかぬ。故にすまんが表向きはゼランドの軍事面での教育係という立ち位置にさせてほしい。不満はあるであろうが、、」


「いや、不満は全くないですよ。下手に貴族に目をつけられるよりも断然いいです。むしろ、教育係の方がいいくらいです」これは本心。本当に余計な軋轢に関わっている暇はない。


 ただ、所属が変わらないのであればゼランド王子の直臣というのは悪くない。何かあった時に王族とのパイプは確保しておくに越したことはないのだ。それに、ゼランド王子とは普通に仲良しだし。


「そうか、では、受けてくれるか」


「はい。僕で良ければ」



 こうして僕は、ゼランド王子の一番最初の直臣となったのである。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 弟は兄が嘗められてるのが我慢ならなかったようだから兄を助けるためとか言えばあっさり落ち着きそう
[一言] おお……! ロア君がゼランド王子の最初の臣下に! やっぱり信頼が置ける人間がいた方が良いのですよね。
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