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【第115話】帝国騒動② 渡りに船


 帝国内で反乱を企てた第二皇子フィレマス。レイズ様とダスさんの予測の通りなら、フィレマスは両国間の引き渡しの道中、”事故”で命を落とす筈だった。


 帝国に含むところがあっても、フィレマスを引き取るのは面倒が先に立つため、それが一番の解決策。


「事情が変わったとは?」


「どうもそれまで引き渡しに関して足繁く訪れていた担当官が、突然やってこなくなったそうです。そして何が起きたのか探ってみれば、、、、」


「ゼッタ平原の戦い、か」


「はい。ゼッタ平原の話を聞いて、皇帝はゴルベルにどうなったかと密使を放った、と」


 そこでまたレイズ様は少し苦い顔をする。フィレマスといい、ルデク領内を敵方の人間が自由に動いているのは良い気分ではないのだろう。


 ただ、フィレマスは逃げ遅れた者がいることからも一団で移動しているので、見落としたのは問題だけど、密使や密偵は、一般人に紛れて移動するので見咎めるのが難しい。


 実際に僕らの国にも、逆に僕らの国から他国にも、密偵は暗躍しているのである。


 それから口には出さないけれど、フィレマスが乗った船が見咎められなかった理由、もしかしたらそれはルファの誘拐が少なからず影響しているかもしれない。


 ルファの誘拐の時、ザックハート様はゲードランドの裏町を一掃するために動いた。結果的に裏町は蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。


 聞くところによれば裏町から海へと逃げ出す者も多数おり、しかも小舟で大海原へ出港するような無茶な人間が後を絶たなかったらしい。


 そうなれば遭難者も出るし、そもそも海に逃げ出さなければならないほどの事情を持った者を野放しにしておくのは危険だ。


 海軍がそういった者たちの対処に追われるのは想像に難くない。そんな時に通過してゆく、他国の商船に擬態した船があったとしたら、、、、


 僕らの国の海軍を信用するのであれば、フィレマスがルデクの警戒の網をくぐり抜けるチャンスはこの時をおいて他にない様に思う。であれば、やはりフィレマスは運が良かったのだろうか。


 いや、どうだろう。ルデクの警戒に引っかかって、南の大陸にでも逃げたほうが、まだ生き残る可能性があった気がする。


 ともあれ、ゼッタ平原の大戦以降のゴルベルの対応は大きく変わった。今まで対応していた担当官は姿を見せず、皇子の引き渡しに関しても、引き渡すのは構わないがそちらで手配を頼みたいと言ってきた。


 以前の担当官は全てゴルベルの方で手配すると言っていたのに、真逆の返答である。これはつまり、ゴルベル側に引き渡し中の”事故”を起こすつもりがないということだ。そうなると帝国としては面倒でも自国まで連行する必要が出てくる。


 事故が起きないのであれば、反乱の首謀者を皇帝として放置は許されない。


 けれどここで問題が出てくる。それが僕らの国、ルデクだ。


 現在は小康状態を保っているとはいえ、ルデクと帝国は戦争中である。


 さらに過日の漂流船騒動とは事情が違う。あの時はルルリアという第三国の人物の扱いを巡って見い出した妥協点だ。けれど今回は完全に帝国の問題。


「反逆者を連行するからちょっと国を横断させろ」と言ったところで、ルデクも簡単に首を縦には振らないし、振れない。舐めるな、となる。


 けれど皇帝としても戦争中の相手に、必要以上にへり下るわけにも行かないだろう。リフレア神聖国も同様だ。ルデクと同盟して対帝国を宣言している。


 ただしルデクと帝国の間に、交渉の余地が全くない訳ではない。


 両国の現状を見れば、正直言ってこんなことで揉めたくないのだ。


 帝国はツァナデフォルとの戦いが泥沼化しつつある。


 実際に僕の知る未来でも、帝国はツァナデフォルの地域に版図を広げることは叶わず、また、ルデクを呑み込んで大国化したリフレアにも阻まれて、40年経っても今の領土のままだった。


 そして僕らルデクはゴルベルとの戦いに勝利を収めたとはいえ、第六騎士団および第四騎士団が再建中。第二騎士団や第10騎士団も少なからず被害があるため、戦力が疲弊した状態で帝国を刺激したくない。

 

 なので必要なのは落とし所、そういうことになる。



 これでようやく話が見えてきた。



 つまり、実子、第四皇子ツェツェドラを使者に立てて交渉することで、帝国としてはルデク王の顔を立てようというのだ。



 帝国側としては、第二皇子の反乱を未然に防いだ第四皇子が前面に出てルデクと交渉まで行い、反逆者を連れ帰るというシナリオは悪くない。


 ルデクにしても、皇帝の実子である第四皇子が使者として頭を下げに来るというのであれば、面目は十分に立つだろう。


 そしてそんな状況下で帝国を訪れたダスさん。

 、、、、、その手には僕からの手紙。


 ツェツェドラ皇子やルルリアからすれば渡りに船だったわけだ。僕からすればとんでもないタイミングで手紙を送ったことになるけど。ま、今の話でルルリアが元気に、、、少し元気過ぎるくらい伸び伸びとやっているのは分かったからいいけどさ。



「、、、、なるほどな。話は全て理解した。では、ゼウラシア王に面会許可を取り付けよう。ダス殿、繰り返しになってしまいすまないが、王の前で再度説明を願えるか?」


「もちろんです」


 レイズ様とダスさんの間で話がまとまったので、僕はやれやれと少し肩の荷を下ろす。そんな僕の様子を見たレイズ様が何を勝手に気を抜いている? という顔で僕を見た。


「当然ロアもついて来い。お前が指名されたのだろう?」



 、、、、、まぁ、そんなことになるだろうなとは、思っていたけどさ。




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― 新着の感想 ―
[一言] ですよね~(笑)
[良い点] 厄介ではあるがロアがまいた種なんだよなあ。 可能ならしばらくの停戦協定あたりを結ぶことで穏便にはいくが、そう簡単にはいかんしなあ
[一言] これはまた大変なことに……。 ロア君絡みですから、やっぱりロア君も行かなくちゃですよね。 さて、どうなることか!楽しみです!
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