【第100話】ゼッタの大戦15 4日目 反撃
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夜半から降り始めた雪は、朝にはうっすらと砦に雪化粧をするほど、淡々と降り続いた。
「ロア殿、貴殿のいう通り、降りましたな」僕の横にやってきた第四騎士団長、ボルドラス様が静かに語りかけてくる。
「、、、そうですね。当たってよかったです。それに、まだ終わってはいません」
「ええ。まだ終わってはいない。今日を乗り越えた時、あなたの智謀を讃えるといたしましょう」
この雪によって、今日がこの地最後の戦いになることはゴルベル側も分かっているはずだ。今日は総力戦になる。
「ロア、準備できたぞ」リュゼルとフレインがやってくる。今日ばかりはホックさんより部隊を返してもらった。今、ロア隊の1800は闘気を内に秘めながらその時を待ち構えている。
やれることは全てやった。
西の城門近くに集まっているのはロア隊と、第四騎士団の面々。双子もいる。砦の守備はギリギリにしてかき集めた、僕らも含めて総勢4000の兵達だ。
東門ではラピリア様が開門を待っている頃合いだ。今日はホックさんも東門方面を請け負ってくれた。
「敵、動き始めました! 全軍向かってきます。ローデライトは迂回の動き! 東へ回る模様!」
見張りの言葉に少しだけざわつく。
「予定通りですね」ウィックハルトが呟き、「そりゃあ俺たちが頑張りましたからね」と隣にいたサザビーがおどけて見せる。
「ロア、気をつけてね」そのように言うルファの元には、多くの兵士が「ワルドワート様の加護を」と言って跪いてゆく。
ルファの神託は当たり、雪が降った。これは籠る兵士たちの信望を一身に集めるのに充分な結果だった。
ルファは少し戸惑いつつも、これが自分の役割と割り切り「皆様に運命の女神の幸運を」と一人一人に祈りを捧げている。
その姿を見ながら、僕もなるべく多くの人が生き残れるようにと、ワルドワート様に願う。なにせ、元々の作戦では、ほぼ全軍で打って出る予定ではなかったのだ。
本来は東門でラピリア様にローデライトを引きつけてもらい、ロア隊のみで一撃必殺の突撃をかけ、そのまま離脱の予定だったのだ。
ところが昨晩の軍議で計画を伝えたところで、第四騎士団より待ったがかかる。
「、、、、おそらくロア殿の読み通り、ローデライトはラピリア殿という餌に喰いつくでしょう。そして計略がうまく行ってローデライトが孤立しているのであれば、東に陣取るのがローデライトの部隊のみと言うのも、理解できる。いや、計略云々抜きでローデライトは単独で行動するだろうから、東に一人陣取るでしょうな」
ボルドラス様の言葉に誰からも異論はない。
ローデライト、これだけ敵将からも性格を把握されているのはある意味で大したものだと思う。知名度だけなら大陸で五指に数えられるんじゃないかな?
「しかし、そうなると、西門に集まるのは1万以上の兵力の残り3部隊ということになりますな」
「そうですね。なので失敗したらそのまま離脱して、東門のラピリア様に合流し、状況を見て砦に戻るつもりです」
「そう上手くいきますかな?」ボルドラス様の言葉に、僕が返す言葉はない。こればかりはわからない。
過日、レイズ様に「自分を大切にしろ」と言われたばかりだけど、ここは多少無茶でもやるしかない。やらねば全滅だ。それに、今までと違って、僕の周りには多くの仲間がいる。出陣して無理だと判断したら撤収するつもりだ。
ここで命を懸けるつもりはない。
「、、、、上手くいくかはわかりません」
「しかし、勝負を掛けねばおそらく負ける。そう、お考えなのでしょう?」
「、、、、はい」
「ならば我々第四騎士団も覚悟を決めるべきではありませんかな?」
その言葉に僕は息を呑む。
「いや、それは流石に! 僕の策が失敗しても、砦に篭って積雪を待てば、、、」
「仮にここでロア殿とラピリア様を砦の中に止めれば、遮二無二攻めてくる大軍を丸一日凌がねばなりません。すでに攻防も4日目。兵士の気力や体力を考えれば、長丁場になればなるほど、我々に不利になる。では、お二方に出陣を任せた場合はどうか? 残った第四騎士団で、戦えるのは2500ほど、なんとか怪我人を無理させても3000には届きますまい。仮にロア殿の策が失敗して、一時的に離脱した場合は1万以上の攻撃を3000弱の兵で守らねばならない。おそらく守りきれませんな。どうあれ、打って出て戦わねば道はないのです」
「けれど、打って出ると言うことはほぼ、砦を空けることになりますよ?」
「愚問ですな」ボルドラス様の話を聞いて、僕は他の将官も見渡す。みんな、腹を決めた顔をしている。
「おい、ロア」
「美味しいところだけ持っていくつもりか?」
双子は不敵に笑いながら茶化してきた。
「ここまで、ロア殿の策と読みは上手くいっている。ならば貴殿の知恵に乗ること、我ら第四騎士団に異存はありません」
そこまで言ったボルドラス様が頭を下げると、その場にいる第四騎士団の将官全てが倣う。
僕がどうして良いかわからずにオロオロしていると、ラピリア様が僕の肩に手を置いた。
「ロア、教えてあげる。こう言う時は素直に甘えておけば良いの」
ラピリア様の言葉に背中を押された僕は「よろしくお願いします」とだけ絞り出した。
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そして時は満ちた。
既に瓦礫は撤去されている西門。
ボルドラス様の「開門!!」の声に、ゆっくりと扉が開く。
まだ誰も踏み荒らしていない、白くなった大地の向こうに、ゴルベルの大軍が待ち構えていた。
せっかく100話なので合戦を書くつもりだったのですがたどり着けなんだ、、、ひろしたらしい計画性のなさでございます。ともあれゼッタ平原の戦いはいよいよ終盤へ!!