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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第1部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第7章 四強激突!!
62/80

62、女子の意地バトル、決着

「ぽひゅぅぅーーーー・・・・・・ へちょ・・・・・・」

「わあぁ! も、森畑せんぱーい! 大変ですーっ! うちやまの魂が抜けました!」

「ニャムニャムハンニャラホンニャラホンニョワチョンニョワ・・・・・・」


 大南は咄嗟に、わけのわからないお経か呪文かを唱え始めた。そうするとすぐに、内山が意識を回復した。試合を緊張して見つめすぎて、息を止めたままだったらしい。


「続けて、始め!」

「せえいやあああああああああっ! しゃああっ!」


   ドオオオンッ!


 崎岡は、どっしりと隙のない構えで腰を落とした。終了まで残り間もない時間、川田が出てくるのを迎え撃つ体勢だ。


「(さぁ、来い! 私は逃げも退がりもしない! 最後まで、お前を迎え撃つ! お前も、単なる競技意識じゃないんだろう? さぁ・・・・・・来い! 武道としての空手で、勝負だ!)」

「(こんっのぉやろぉ・・・・・・アタシの執念深さ舐めないでよね! 諦めてたまるか! 狙うべきか、右脇腹を? でも、それが入ればこの人はどうなる? どうする、アタシ・・・・・・)」

「真波ーーーーっ! 時間、時間ーーーーっ! あと四秒ーーーーーーっ!」

「川田せんぱーーーーーーいっ!」

「うぅっ・・・・・・うううあああああああーーーーいっ!」


   ダダダァッ!  ダダァンッ!   バシュウウウウウンッ!


 川田は森畑と阿部の声を受け、思いっきり助走をつけるように踏み込んで、左の中段回し蹴りを思いっきり迷いなく蹴り込んでいった。


「(弱点を狙ってきたか! 情け無用だ川田真波! それが武道の試合! それでいいんだよ!)」


   シュバアァァァンッ!


 蹴り込んでくる川田の喉元へ、崎岡の強烈な左の突きが襲いかかった。

 崎岡は激痛を堪えたまま、右肘を突き出して脇腹をガードすると同時に川田の蹴り足も破壊する気だ。


   キュウゥン・・・・・・ シュバシャアッ!   よろろっ


「(つぅあっ! ・・・・・・掠っても目がくらむ重さの突き! つ、強い!)」


 崎岡が迎え撃った突きに対して、川田は身体を寝せるようにしてギリギリ躱したがメンホーには大きく側頭部が掠った。

 しかし、それでもその突きは、川田の姿勢をよろめかせるのに十分な威力を備えていた。蹴り込んだ川田は右に体勢がよろめき、左足は中段蹴りを飛ばしたまま。


「まじぃ! 川田ぁーっ! そのまま蹴ったら足首ごと撃ち墜とされる! 下手すりゃ骨折だ! ひっこめろぉぉっ!」


 田村が遠くから大声で叫んだ。しかし、蹴りはもうすさまじいスピードを乗せて崎岡の脇腹直前へ迫る。

 崎岡が楔のように突きだした肘は、川田の蹴り足を破壊するのを待ち構えていた。


「(んんっ・・・・・・! もう、いっ・・・・・・けぇぇぇぇぇっ!)」

「(意地を通して自滅する気か、川田真波! 蹴り足を壊すがいいさ!)」


   ~~~ シュルウンッ ~~~


「え?」

「あっ?」「なぁっ?」


 その時、試合を見ていた井上、神長、中村が同時に声を上げた。


「(な! え、S字?)」


   ヒュルン・・・・・・

   シュアアアアッ パカアアアアアアアアンッ!


 館内に響いた、メンホー由来の乾いた炸裂音。


   バッ   バッ   バッ

   ウオオオオオオオオオオオオオオ ワアアアアアアアアアアアアアアア


「止め! 赤、上段蹴り、一本ーっ!」

「「「「「 うおおおおおおおおおっ! ナーーーーイスいっぽぉぉぉんっ! 」」」」」


 見ていた誰もが、一瞬、狐につままれたかのようであった。

 川田の中段蹴りは、崎岡の右脇腹へ斜め下から蹴り上げるかのような軌道で伸びていったが、鋭く突き出された肘を直前でスルー。そのままS字を描き、避けた突きの肩口を抜けて死角から崎岡の左側頭部へ入った。

 残り時間二秒で、赤旗がきれいに三本天を突いた。それは、まさに起死回生の、左上段裏回し蹴りだった。


「(ふぅ・・・・・・ふぅ・・・・・・。こ、ここにきて、死角からの裏回し蹴りとは・・・・・・っ!)」

「(はぁはぁ・・・・・・。ど、どぉだぁ崎岡有華! アタシだって、執念じゃ負けてないんだぞっ!)」

「「 川田先輩やったぁぁぁぁぁ! 」」


   ワアアアアアアアアアアアアア パチパチパチパチ


 抱き合って喜ぶ内山と大南。森畑の母や川田の父も、早川先生や堀内らと大拍手。


「(まだ二秒ある! 逃げない! 逃げるなんてできない! アタシは、ぶつかるよ!)」

「(ふぅぅ・・・・・・ひゅぅぅ・・・・・・。く、苦しい。だが、私は逃げん! 負けん! 続きだ!)」

「続けて、始め!」

「「「「「 崎岡せんぱああああぃ! 崎岡せんぱぁい! ファイットォーーーーッ! 」」」」」

「「「「「 かわたせんぱーーーーーいっ! ファイトでーーーーすっ! 」」」」」

「(いっけぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ!)」

「とぉあああああああああああああーいぃぃっ!」


   シュバアアアアアッ!


「(ぐぅっ・・・・・・くっ!)」

「馬鹿者ぉぉっ! 崎岡ぁぁぁっ! 等星の主将として、意地を貫き通せえぇぇぇぇいぃっ!」

「せあああああああああああああああ!」


   ・・・・・・ガクンッ! ドサッ・・・・・・


 開始線から一気に川田は前蹴りを蹴り込むように膝をたたみ上げ、思いっきり前へ踏み込んでいく。

 すると崎岡は、右膝からどさっと片膝を床に落とし、腕も落とし、しゃがみこんでしまった。

 左掌で右脇腹を抱えて片膝立ちのように崩れ落ちたが、崎岡の目は燃えたまま。大きく踏み込んで突っ込んでくる川田から逸らすことなく、気を張ったまま見開いている。

 時間は、二秒と一秒の間。


「(さ、崎岡有華! ・・・・・・えぇーいっ! アタシは、あんたに勝つんだぁーーーっ!)」

「(私は負けない! 私は・・・・・・等星の主将なのだ! 私・・・・・・はっ・・・・・・)」


   バシイイィィィィィッ!

   ピーッ! ピピーッ!

   ワアアアアアアアアアアアアアア ザワザワザワザワザワザワ


「止め! 赤、上段蹴り、一本ーっ!」


   どさっ・・・・・・


 糸が切れたように膝から崩れた崎岡。

 既に攻撃フォームに入っていた川田の中段前蹴りは、一瞬の躊躇が入ったものの、そのまま崎岡の顎の高さ真っ正面へ突き刺さるようにして決まった。

 蹴りを決められた崎岡は、コートのマット上にどさりと崩れ落ちた。力なく、どさり、と。


「(さ、崎岡っ!)」


   さささっ  ぐいっ  よろろろ


 慌てた川田がすぐに、自分より一回りも大柄な崎岡を抱きかかえ、なんとか立たせた。

 崎岡は、起こした川田の胸元をポンと左手で触れ、力ない足どりで開始先へ戻り、立つ。


「・・・・・・止め! 8対5で、赤の、勝ち!」


   パチパチパチパチパチ   パチパチパチパチパチ   パチパチパチパチパチ

   ワアアアアアアアアアアアッ   ウワアアアアアアアアアアアアアッ


「やったぁぁぁぁぁ! 川田さん、見ましたか! 娘さん勝ちましたよ!」


 早川先生、新井、松島が大喜びで川田の父と握手をしている。

 森畑の母や堀内も大喜び。湧きに湧く柏沼陣営。二年生や一年生の後輩たちも、ガッツポーズやジャンプをして、優勝したかのような大騒ぎ。井上、神長、中村は、川田に向かって拳を突き出して三人でその場で正拳突きを始めた。


「真波やったねぇーっ! わあああっ! インターハイ、一緒に行けるよぉーーーっ!」


 森畑が両手で顔をおさえ、涙しながら観客席から大声で呼びかける。


「やったな川田! おめでとうっ! すっげぇ試合だったよぉー。それでこそ、川田だねぇー!」


 田村が、足の痛みも一瞬忘れたのか、片足で立ち上がって力強い拍手をしている。


「川田さんっ! やったね! おめでとうーーーーーっ!」


 前原も歓喜の表情で、川田に大きく手を振って声をかけた。


   よろろ  よろろ  ひょこ  ひょこ・・・・・・

   ・・・・・・がしぃっ!


「待ってちょうだいよ!」


 大歓声の中で、コートからひとり力なく去って行く崎岡の肩を、川田がつかんで振り向かせた。


「・・・・・・川田真波・・・・・・。お前の勝ちだね。私は敗れた。等星の主将として、私はもう何もかももう終わったんだ・・・・・・」

「そんなこと、どぉーでもいいのアタシには! あんたは、恐ろしく強かった! また、戦ってよ!」


   パシィッ   よろろ  よろろ    ・・・・・・びっ!


 川田の手を払い、振り向いてそのままコートから出て行く崎岡。

 しかし、最後には左拳をふっと開いて、背を向けたまま小さなピースサインを掲げた。川田は、目尻と頬を光らせながら、その背中を笑顔で見送った。


「やった! やあったぞぉアタシも! やったよーーーっ! あー! 本当に強かったぁぁぁ!」


 天に向かって叫ぶ川田。これで、柏沼メンバーから三人目のインターハイ出場者が決定した。


 【 川田真波  全国高等学校総合体育大会 空手道競技  出場決定! 】


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