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青春空手道部物語 ~悠久の拳~ 第1部  作者: 糸東 甚九郎 (しとう じんくろう)
第6章 台風の目
45/80

45、激戦&混戦の個人組手

   ぱーーーーーーーーー♪  ぷーーーーーーーーーー♪


 地元のお豆腐屋さんの移動販売車だろうか。

 小さな軽貨物車が、県北体育館の外を独特の可愛らしい音を鳴らして走っている。殺気と火花が散る館内の声援とは、うってかわって非常に対象的。


   ワアアアアアアアアアア  オオオオオオオオオオッ


 二回戦も順当に試合が進んでゆく。


「今のところ、だいたい予想した通りの選手が上がってきているねぇー」


 田村は自分のコートの試合をあまり気にせず、別なコートを見渡していた。

 Aコートでは日新学院の二斗と白井、しあわせの哲学学園の大山、国学園栃木の権田原がそれぞれ勝ち上がっていた。二斗は前回の春季大会にも増して、仁王像のような迫力が増し、王者の風格がさらに強い。


「すああああーぃっ!」


   バシシイイィンッ!


 Bコートでは、中村が県立宇河の古河と対戦。

 県内有数の進学校対決は、中村が冴えに冴えた受け技と中段突きカウンターをもって、6対2で勝利。市立望木の高木、日新学院の清水も難なく勝ち上がっている。

 前原は県立牛頭高校の鈴木と激突。団体戦で井上に逆転され敗退した鈴木は、個人戦でも精度の高いカウンター技を使って、プレッシャーをかけてくる組手を展開。


「とああああああーっ!」


   シュバッバシン!  バババァン!  ズパアアァン!


「つおぇありゃあああっ!」


   ギュンッ!  ズバシィィンッ!  バシイイイッ!


 前原 対 鈴木の試合は、終始、狙う狙われる、誘う誘い返すの重なる緊迫の攻防戦となった。

 だが、前原はフェイントを織り交ぜた動きで何とか3対2で辛くも勝利することができた。


「(牛頭の選手は本当に侮れない。危ない試合だったー)」


 試合を終えた前原は、相手の鈴木と握手をしてから、ほっと一息ついた。

 AとBの両コートで進む男子個人組手Aブロックの二回戦は、これでベスト16の選手が出揃った。


   ワアアアアアアアア  がやがやがやがや


 そんな中、井上は観客席で後輩を連れ、柏沼陣営とは違う場所で応援をし続けていた。

 

「陽二も悠樹も、無事に三回戦進出だ! ちょっと目を離すとどこかで誰かが戦ってるから、なかなか目が離せねぇなーっ!」

「あれ? 井上先輩、わたしたちの陣地にいるあの人、誰ですかね? 部員の誰かの保護者でしょうか?」

「ん? ほんとだ。誰だろうなぁ。よし、男子Aブロの二回戦もいったん終わったし、ここにいてもしゃーないから、席に戻るか。敬太と充も、いったん席に戻ろうぜ」

「井上先輩。みつるは、飲み物買ってから戻るそうです」

「そうか。じゃ、先行くか。Bブロなら、俺らの陣地から応援できるしな!」


 井上達が柏沼陣営の席に戻っている途中、男子個人組手Bブロック二回戦は、CコートとDコートで気を吐く拳士たちがまた熱い戦いを繰り広げていた。


「ああああああーいっ!」


   ドパパパパァン! ズバァン! バババババァン! ダダダァンッ! パパァン!


「すりゃぁぁーっいっ!」


   パパパァン!  パパパパパァン!  バシィン!  バババッ!


「「「「「 伊藤ファイトファイト! 勝てるぞぉ! 」」」」」


 Cコートでは田村と県立宇河商業の伊藤が対戦。

 4対2でリードしていた田村に、伊藤が中段蹴りを決めて4対4まで追いつく。しばらく互角の攻防が繰り広げられたが、均衡を崩した田村が足払いで豪快に伊藤を転がし、突きを決めて一本。

 試合時間終了ギリギリのところで、田村は7対4で勝利した。


「ふいぃー、やばかったぁ。伊藤のやつ、粘りに粘りやがったなぁ」


 田村は少し汗をかき、笑顔で三回戦へと進出した。そして他は、県立柏沼農商の宇賀神、県立東照宮の星野、日新学院の田中が勝ち上がった。

 田村の三回戦は宇賀神が相手。柏沼 対 柏沼農商という隣校対決となる。

 ちなみに、県立東照宮の星野は双子選手らしい。形の星野と組手の星野、どちらも顔がほとんど一緒。団体組手で影武者と言われてもわからないくらいだ。どっちが兄でどっちが弟なのだろうか。柏沼メンバーにはその差がわからない。


   ワアアアアアアアア  ワアアアアアアアア


 続いてDコート。ここでは、日新学院の一角である佐藤が県立宇河の榎本に6対2で敗れる波乱が起きた。他は同じく日新学院の東畑が勝ち上がる。

 そして今行われているのは、個人形で準優勝をした県立鶉山の堀庭 対 神長の試合だ。


「「「「「 うずらやまー! ほりばーっ! ファイトー! 」」」」」

「ちええぇぇぃりゃぁ!」


   シュパァン! パパパァン! パパァン! パパァン!


「どあああああああっ!」


   バババッバシィン!  ドドドドッ! ガガッ! ドパパァン!


   ・・・・・・ピーッ! ピッ!


 神長の試合は取っては取り返すシーソーゲームのような展開となり、判定は引き分け。

 ここからは、気の抜けない延長戦先取り勝負に突入。


「ちぇりゃああ!」


   ダダダッ! ヒュンヒュンヒュババッ


「どあああーっ!」


    シュウッ  ヒュンッ  バシィィッ!


「止め! 青、上段打ち、有効! 青の、勝ち!!」


 速攻で連突きを仕掛けてきた堀庭に、神長は待ってましたと言わんばかりの背刀打ちをカウンターで決め、延長を制した。

 神長も無事に三回戦へと駒を進めた。前回の春季大会では、同じような場面となって日新の白井と延長になって敗れたが、今回は勝利したのだ。

 しかし神長は「俺、先取りは本当に苦手で嫌いだ」と言って、苦笑いで一礼してからコートを出ていった。

 日新の畝松は、二斗と同等に近いレベルに進化。県立那須野の岡田に開始からわずか三十秒足らずで8対0の完勝。その勢いで、とんでもない存在感を見せつけた。


「かぁー。日新学院も、気合い入りすぎだねぇー。二斗だけじゃないってことなんだねぇー」


 田村は、そんな畝松を見ても、余裕で笑っているが・・・・・・。

 これで、Bブロックもベスト16の選手が出揃い、三回戦を待つことに。

 同時に今、女子の二回戦はどういう展開になっているのだろうか。


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