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黄金のドラグレイド  作者: 雨蛙
第2章 帝都ヴァルタール編
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第4話 いざ帝都へ

 あのデネブとかいう不愉快な商人が来てから一週間ほどが過ぎた頃、アフタル村に一つの問題が発生していた。


「行商人、来ないな……」


 昼前、アフタル村にある木の門の前で、佑吾は行商人を待っていた。

 アフタル村は、行商人から生活に必要な用具や保存が効く食料などを、定期的に購入していた。また、森で取れた薬草や魔物の素材の売却を行うことでお金を手に入れていた。

 つまり行商人との取引は、アフタル村の暮らしに必要不可欠なものなのだ。

 しかし、肝心の行商人が、いつもの決まった日取りになってもアフタル村に来なかった。天候の影響で、多少遅れる事はたびたびあったが、それを考慮してもここまで来ないというのは今までに無いことだった。

 魔物に襲われた可能性も考えて、街道に沿って探してもみたが特にそういった痕跡も見つからなかった。


「そうねー結構待ってみたけど、ここまで来ないんじゃあ、あまり期待しない方がいいかもね」


 佑吾の呟きに、近くでしゃがみ込んでいたサチが答える。

 サチは指先に小さな火や電気を出して、魔法の訓練がてら暇潰しをしていた。


「はぁ、それならライルさんに報告に行くか」

「行ってらっしゃい、あたしは家でお昼作ってくるわ」


 門から離れ、佑吾はライルの家へと一人で向かった。

 ライルの家でテーブルに座って向き合い、佑吾はライルに報告した。


「そうか、行商人は今日も来なかったか……」

「どうしますか? ライルさん」

「ふぅむ…………仕方ない、帝都に直接売りに行くか」

「帝都ですか?」


 帝都ヴァルタールは、アフタル村があるヴァルトラ帝国の政治と商業の中心地であり、皇帝が御座す帝城が存在する都市だ。

 しかし、ライルの言葉に佑吾は素朴な疑問を持つ。


「そう言えば、行商人が来なくなった時に何ですぐに帝都に売りに行こうとしなかったんですか?」

「それはだな……」


 ライルが、簡単に理由を説明してくれた。

 まず、この村には馬車が無い。

 なので帝都まで行く時は、お金を払って行商人の馬車に乗せてもらうのが普通だった。

 しかし、今回はその行商人が来ない。

 だから、今回の場合は帝都まで徒歩で行かざるを得ないのだ。

 帝都までは徒歩だと二日ほどかかる上に、その道中では当然魔物も出没するため、武装や道具の準備が必要になる。加えて、食料や野営の準備等も必要になるため、手間賃がかかってしまうのだ。

 それなのに、徒歩だと運べる商品の数が少なくなってしまうので、あまり利益が出ない。

 つまりは、必要な労力の割には得られる利益が少ないということらしい。

 故にライルは、この方法はあまり取りたくなかったとの事だ。


「それで帝都に売りに行く人選なんだが……佑吾、お前さんたちについてきて欲しい」

「えっ、俺たちですか?」

「ああ、お前さんたち四人だ」

「四人……? エルミナも連れて行くんですか!?」


 ライルの言葉に、佑吾は驚いた。

 サチやコハルを連れて行くのは分かる。

 二人とは、何度も一緒に魔物と戦ったから、戦闘面で頼りになることは知っている。それに村の仕事を手伝ったりもしているから、移動の体力面でも大丈夫だろう。

 だが、エルミナは二人のように戦闘に慣れていないし、それに体力面でも不安があった。


「エルミナはまだ子どもです! 二日もかかる遠出、しかも魔物が出るところなんんて危険ですよ!」

「お前さんの不安は分かる。だが、街道の魔物は弱いし数も少ない。さらに街道は見通しが良いから、周囲の警戒を怠らなければ不意打ちを食らう事もない。だから、森に入るのに比べればだいぶ安全だ」

「いや、でも……」

「それにエルミナは、年齢の割には精神的に幼い。家族が二日間もいないのはきついだろう。それなら一緒に連れて行って、一種の旅行のようなものにすれば良い思い出になるだろう。移動はきついだろうが、なるべく多めに休憩を挟むようにするさ」

「……俺たち以外の人が、行くことはできないんですか?」

「村のみんなよりも、お前さんたちの方が戦い慣れている。さらに個人で戦う狩人の中でも、連携ができるという点でお前さんたちの方が強い。それにお前さんたちに一度帝都を見ておいてもらいたいし、野営の経験も積んでおいて欲しいんだ」


 ライルは、右手の指を一つずつ立てながら理由を挙げていった。

 しかし、それを聞いても不安が拭えていない佑吾を見て、ライルはフッと優しく微笑んだ。


「まあ色々言ったが、単純に俺個人として、お前さんたちに帝都を一度見てもらいたいというのが素直な気持ちだ。それでもやっぱり無理だと思うなら、断ってくれても問題ない」


 ライルの言葉を受けて、佑吾はじっと考え込んだ。

 これは、自分一人で判断していい問題ではない。

 慎重に、家族みんなで話し合うべき事柄だ。


「……すみません、みんなで話し合ってもいいですか?」

「ああ、もちろんいいぞ」

「いつまでに、返事をすればいいですか?」

「そうだな、出来れば明日には出発したいんだが……。そう言えば、お前さん昼飯は?」

「まだ取ってませんけど……それがどうしたんですか?」

「なら今からお前さんの家で、みんなで食うんだろう? その時にこの事を話し合って、その後に返事を聞かせてくれないか? 俺はしばらく家にいるから」 「分かりました。それじゃあ、俺は戻りますね」

「ああ、また後でな」


 話が一段落すると、佑吾はライルの家を後にして自分の家へと戻った。


  ◇


「帝都? へぇーいいんじゃない? 面白そうだし」

「わぁー! おいしい物あるかなぁ?」

「私、村の外に行くの初めて! 楽しみだなぁ……!」


 その後、昼食を食べながら三人にライルとの話の内容を伝えた結果、全員乗り気でライルの頼みを快諾した。

 佑吾の不安を伝えはしたものの、三人は初めて行く帝都に興味津々のようで、佑吾も諦めて受け入れることにした。

 昼食の後、ライルに帝都に一緒に行くことを伝えて、佑吾たちはライルの助言を参考に旅支度をして一日を終えた。

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