苛苛
世永に呼ばれ、部屋に行くなりあの本のとあるページを見せられる。
世永「この子知ってる?」
と、指さされた先に書かれていてたのは、
『佐伽羅 虎雅・16才・優善一宅 居住』
という文字。
樂「…。」
世永「その感じだと知ってるっぽいね。家も一緒みたいだし、明日にでも連れてきてよ。」
樂「なんで俺なんだよ。」
世永「関わりある人の方がこのおとぎ話は信用しやすいでしょ?」
なんであのイラつく奴が仲間になるんだよ。
うるさいのは世永で十分だ。
樂「…嫌だ。」
世永「明日、ちょうど学校の出席日数稼ぎに行くんだからいいんじゃん。ご飯なんでも好きなのにしてあげるからさー。」
お願い、お願い!と無視しても永遠に頼まれてうるさいので仕方が無く承諾した。
次の日、あいつが何時に学校に行くか分からないので音楽を聴きながら適当に坂の下でダラダラ歩いてると、何かが近づいてくる気配がする。
「おはよー。」
俺の隣に見覚えがある自転車が並走する。
樂「…はよ。」
連れて行くだけだから、あんまり関わらない様心がける。
虎雅「最近家に居ないね、ちゃんとご飯食べてる?」
なんだこいつは。
俺のストーカーかなんかなのか?
俺がその会話に無視すると、あいつは先に学校に行こうとしたので、自転車のケツを捕まえてとりあえず俺も乗せてもらうことにした。
虎雅「じゃあ動くよー。」
と言い、立ち漕ぎをして坂を登って行く。
ふわふわと動く髪の毛から、たまに禿げてる所が見える。
こいつも意外と苦労人なのかと勘ぐってしまう。
俺は久し振りに団員以外の人に話しかけるので、何から話を進めればいいか分からなかった。
樂「お前、凶妖って知ってるか。」
虎雅「え?」
とりあえず、凶妖の存在を知ってるか聞いてみる。
樂「聞いたことあるのか。」
虎雅「いや、ないよ。そのキョウノケって何なの?」
と、話しているうちに学校の校門前についた。
周りに人と仲良くしているところを見られたくなかった俺は、動いたままの自転車から飛び降りる。
虎雅「おい!大丈夫か?」
樂「あとで屋上に来い。」
と、俺は周りに聞こえない声で人があまり来ない屋上の踊り場に呼び出した。
俺は職員室に行き、担任に顔を見せて自宅学習用のプリントを貰い、屋上の踊り場に向かう。
まだあいつは来ていない様子。
しばらく待ち、HRのチャイムが鳴る。
まだ来ない。
待っていたらHRが終わったのか教室のある下の階から賑やかになってきた。
良い加減にしろよ。なんで来ないんだよ。
あと1分待って来なかった帰ろうかと考えていた時、あいつはタラタラやってきた。
樂「遅い。」
虎雅「ごめん!HR出てた。」
樂「あっそ。」
なんで呑気にHRに出てんだよ。
屋上来いって言って、HRに出るやつがあるのか。
虎雅「えっと…、さっきの話の続きをするんだよね?」
こいつの動きの鈍さにイライラしていたら、要件を伝える事を忘れていた。
樂「ああ、おみくじの凶に妖怪の妖で凶妖と言う。」
虎雅「え?うん…?」
馬鹿そうだからまず文字から説明し本題に入る。
樂「凶妖が俺らの家族を殺した。」
虎雅「え?」
俺は持ってきた[自然災害と妖]を見せる。
虎雅「これ僕も持ってるよ。」
持ち主だから会いにきたんだ。
持ってるってことを共有しにきたわけじゃない。
この言い草的にまだ中は読んでないんだろう。
樂「知ってる、まだ読んでないんだろ?」
虎雅「うん、今日家帰ったら読もうかと思ってた。」
俺は隣に座ったこいつの名前のページを見せる。
虎雅「なにこれ!こんな本に個人情報出した覚えないよ!」
樂「当たり前だ。これはこの本を手に入れたもの同士、会えるようにこうやって浮き上がってくるんだ。」
虎雅「ちょっと見せて。」
と言って、俺の持っていた本を取りペラペラとめくり他の団員のページも確認する。
樂「ここのページは増えたり消えたりする。」
虎雅「その条件はあるの?」
樂「ああ、増えるときはこの本と出会ったとき、消えるときは持ち主がこの世からいなくなるときだ。」
眩がこの世からいなくなって、改めてこの本のページから眩がいなくなった事を確認した。
眩の死を俺に教えてくれた。
虎雅「なんで、これを教えたんだ?」
樂「お前を仲間に入れるためだ。」
俺はお前に入って欲しくはなかった。
また戦いで俺の知り合いが死ぬのが嫌だったから。
俺はこいつにこの本の出現条件を話し、俺がスカウトしにきた事を伝える。
虎雅「でも…学校の単位とかは?樂はだいぶ危ないでしょ?」
そんな呑気な事言ってる場合じゃねぇぞ。
樂「はぁ?単位なんか2ヶ月で全部とったわ。今日学校にいるのは出席日数のためだ。」
虎雅「え?そんなことできるの?」
学校側は表沙汰にしていないが、世永が教えてくれた裏技を話す。
虎雅「そんなことできるのか…。」
学生生活の話なんかどうだって良い。
樂「お前、仲間になる気あんのか、ないのかどっちだ?なんないにしても噛まれた奴は凶妖にマーキングされてるからまた災害にあった時一番に食われるぞ。」
世永にこれでダメ押しして見ろと言われた。
虎雅「それってやる選択肢しかなくない?」
樂「まあそうだけど、気持ちの問題もあるよな。任務中に死ねる覚悟があって、家族を殺した凶妖をぶっ飛ばしたいって考えがあるなら入るべきだよな。」
俺の本音を言ってみる。
こいつは…、なよっちぃからやらないか。
虎雅「わかった、やるよ。」
意外な返答に俺は内心驚いた。
樂「覚悟はいいのか?」
死ぬかもしれないんだぞ?
今までのほほんと暮らしていた生活とは、おさらばなんだぞ?
虎雅「決めきれないけど、どっちにしろ死ぬなら抗いたいよね。」
死を目前にしてまだ生にしがみつくのかよ。
俺はごめんだな。
樂「そういう考えもあるんだな。
じゃあ、学校の単位の手続きをして拠点に行くぞ。」
虎雅「あ、ごめんそれ明日でもいい?」
樂「はぁ?」
何言ってんだこいつ。
こんだけ俺の時間を無駄に使わせてまた無駄にさせる気なのかよ。
虎雅「今日、晩御飯担当なんだよ。」
樂「なんだそれ、誰でもいいだろそんなもん。」
虎雅「ダメだって当番だから。」
こいつ…。
あぁ、もうダメだイラついてしょうがない。
樂「じゃあ明日の昼、ここに集合。」
俺は自分のイラつきを押させるために、今日のところは屋敷に帰ることにした。




