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悩み

春休みの間は、世永の屋敷で過ごす事にした。


最近は心の波も落ち着いていて、ざわつく事が無い。

だからあの日も最後にあの家に会いに行った。


みんなそれぞれ担当された地区の凶妖が暴れ出したら、封印をしに行く中殺す者も一定数いた。

まあ、俺もそういう考えがあったから止められるのも鬱陶しいだろうとそいつらを放っておいた。


俺は今のところ呼ばれる事が無いので、庭で素振りでもするかと思い、竹刀を持って人があまり来ないこの時期でも日陰になって寒い庭に向かう。


すると、1人膝を抱えて下を俯く人がいた。


俺は別の所を探すかと思い背を向け歩こうとすると、その人から鼻をすする音が聞こえた。


なんでこんなとこで1人泣いてんだよ。


俺はその人の隣に座る。


うずくまって顔は見えないが、白づくめの団服でこのショートカットは杏さんだろうと推理する。


樂「どうしたんですか。」


杏「…なんで来たの?」


樂「ここで素振りしようかと思って。」


杏「そう…。」


杏さんが立ち上がり、1人どこか行こうとする。

その雰囲気が何か抱えているようでこのままどこかに行ってしまうのが嫌だと思った俺は杏さんの腕を掴んでしまった。


杏「何ですか…?」


樂「なんかあるなら話聞きますよ。」


しばらく時間を掛け、杏さんは思考を巡らせた結果元いた場所にまた座った。


10分以上無言のままだったが、その時間は杏さんが話すまで必要な時間だったから俺は催促はしなかった。

悩み事は自分のタイミングじゃないと、考えが纏まらなくて上手く伝える事が出来ないから。


杏「…私、何にも出来てないなって思うんです。」


なんでだ?

保護してきた凶妖を元いた場所に返すために懸命に働いて、いつもクマを作ってるじゃ無いか。

自分の仕事以外にも、他の人が投げ出した雑用も全て受けてるのに何が出来ないんだよ。


杏「私と同じ所を噛まれた絢愛はあんなに頑張ってるのに私…」


樂「なんで絢愛が出てくるんだ。」


杏「同じ条件でここにいるのに、やってることは全然違う。絢愛は人を助けて、凶妖も保護して魂を救ってる。私はその保護した子を世話するだけ。」


樂「絢愛と杏さんは違う人間だろ。比べるなよ。」


杏「…でも、絢愛は記憶を失ってまで戦い続けてる。なのに私はぬくぬくとここで戦わずに過ごしてる。それがもう…苦しくて、でも私は戦う能力がみんなより劣ってるから足手まといになる。」


樂「自分の出来る事をやればいい。それが人が個性を持って生まれた理由だって言ってた。」


杏「その自分の出来る事が自分のストレスでもやらないといけないかな。」


樂「…辞めたければ辞めればいい。けど杏さんが居なくなって困る人はたくさんいる。俺もいなくなったら嫌だ。杏さんは自分が思っている以上に人を助けてる。」


俺は母さんに教わった手のつなぎ方をする。


樂「こうしてれば、寂しいのも悲しいのも吸い取れるって言われた。」


杏「…なんで、あの人の知り合いはこう…。」


杏さんはそのまま膝を抱えて涙を流していた。

たくさん泣いて辛い事も嫌な事も流してしまおう。

杏さんは泣かなくていい。悩む事も無い。

みんなを大切に思うがばかり、自分の非力さを恨む事をしなくていい。

それが人として生きる事だから。


杏さんが出来ない事は俺らがやっていくから心配しないでほしい。


俺は杏さんの手をしっかり握る。

その手を杏さんが握り返す。


俺は日陰の庭の咲いてる花を眺め時間を過ごしていると、目の前が突風で襲われる。


「おう!ごめん、逢い引き中か。」


目の前に飛んできた眩が相変わらず団服のズボンだけを着て仕事から帰ってきた。


樂「ち…」


杏「…ちっがぁぁぁう!」


バチンと俺の頬が叩かれ、握った手が離れ、

杏さんは眩に飛び蹴りしそのまま屋敷の中に走っていった。


なんで俺が叩かれないといけないんだ…。


眩「ごめんな。邪魔したな。」


尻餅をついた眩が笑いながら俺に謝る。


樂「違う。」


眩「あれは恋人繋ぎだろ?なんで違うのにするんだよ。」


俺は説明するのが怠くて、そのまま眩を置いて違う庭に移動して素振りを始めた。

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