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出会い

俺は優善一宅ゆうぜんいったくに住むために、荷物をまとめる。


世永は自分の家に住めばいいと言っていたけど、また俺の思いの歯止めが効かなくなるから辞めておいた。

しばらく自分の心が波立てないようになってから、そっちに住めばいい。


しばらくぶりの自分の家。

懐かしい匂いが俺の心を締め付ける。


家の家具は世永の家に運んでくれるそう。

だから、俺はベッドと服と本、凛翔の手帳とアクセサリーケース。

重いものは引越し業者に任せて、俺は他の思い出の品は全て世永の家の一室に閉じ込める事にした。


もう俺は泣いている暇はない。

これからやらなければいけない事がたくさんある。

だから、しばらくは思い出を振り返る余裕は無い。


俺は1人電車に乗って優善一宅に向かう。


団地の門に着くとトラックが2つ。

俺のトラックともう1人分の荷物が運び込まれている。

あっちは、少ない荷物で新品の物が多い印象だった。

きっと全て無くなってしまったんだろう。


俺は優善一宅を経営しているおばさんに会いに行った。


[コンコン…]


「どうぞー。」


おばさんの声が聞こえて、俺は中に入る。


樂「これからよろしくお願いします。」


おば「うん、よろしくね。これ、ここに住む時のルールが書いてあるから目を通したら下に名前書いといてね。」


と、おばさんにプリントとペンを渡された。

俺は近くのソファとテーブルを貸してもらい、そのプリントに目を通す。


1人で住む訳じゃ無いのか…。

あんまり関わりたく無い。


[コンコン…ズズッ…]


と、扉をノックする音と鼻水をすする音がする。


おば「はい、どうぞー。」


「…失礼します。」


涙目をした、俺と同じくらいの歳の男が入ってきた。

きっとまだ気持ちが追いついてないんだろう。

俺も全てを受け入れるのに時間はかかった、お前もその日が来る。

…今を耐えろ。


おば「はい、ハンカチと…、ここに住む時のルールが書いてあるプリント読んだら下に名前書いてね。」


と、俺と同じ事を繰り返すおばさん。


男はハンカチで自分の目を覆い、俺の事が見えてないのか目の前のソファに腰をかけた。


…長居したら、話しかけられそうだからさっさと読もう。


俺はその男から目を離して、目が合わないように顔をプリントで隠しながら読む。


鼻水をすする音と壁時計の針の音、おばさんが何か書き物する音が聞こえる。

なんだか集中できなくて一向に読み進められない。


もういいかと思い、俺は名前を書こうとプリントをテーブルに置こうとした時、バチっと男と目が合う。


佐伽羅さがら 虎雅たいが、中学3年です。よろしく。」


まぶたが真っ赤に腫れて、ハンカチを鼻水まみれにしても自己紹介をし始めたこの男にあいつと既視感を覚える。


樂「…梵唄ぼんばい がく。」


俺は名前だけを言って、プリントに記名する。


樂「はい、では。」


おば「みんなと仲良くね。」


樂「…出来ることはします。」


俺はそのまま外に出ようとすると、ズボンを掴まれる。


樂「…?」


みると、さっきの男が俺のズボンを掴んでいた。


樂「なんだ?」


虎雅「学校どこ行ってるの?」


樂「…。」


おば「同じ中学3年で、今は地元の学校に行ってるよ。」


ババアが勝手に答える。

俺は無視して、掴んでいた手を勢い良く振り切り部屋を出て行った。


そんなに人のことを知ったってみんな死ぬんだ。

俺に関わるな。お前が死ぬだけだ。


俺は部屋に入れられた荷物を片付け、世永と約束した団地近くの河原に向かった。

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