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あの本

あれから3ヶ月。


必死にリハビリをして、ある程度自分だけで動けるようになった。

声も出るようになったが、まだがらつきが取れない。


あと数日すれば退院。

俺は、もうあの実家にいられない。

親戚もいない。


葬儀は世永がしてくれた。

家はそのままにしておく事は可能だったが、あの広い部屋に1人で住むのは俺の心が持たないと思い、孤児のための団地に住むことになった。


その書類を見て、暇を潰す。


優善一宅ゆうぜんいったく…」


俺は声のリハビリがてら、音読しながらその施設の事を書いてあるパンフレットを読み進める。


その孤児院は、この災害時代だから出来た産物。

俺のように親や親戚がいない子供のためにある女性が作った。

その孤児院に俺は行く。


そこではある程度自由に暮らせるようだから一年我慢して、また夢を叶えるための努力を今度は1人でする。

関わる人は最小限にしないと、また俺のせいで死人が出る。


この間、先生にも音楽プロデューサーにも断りの連絡をした。

2人ともすんなりと受け入れてくれた。

こんな事があったんだから、ゆっくり考えてまたやりたくなったら言ってくれと話してくれた。


パンフレットの文字を一通り読み終え、喉のイガイガを取るために自販機に向かう。


自販機があるところには貸し本も置いてあるので、最後に一冊借りる事にした。


自販機でお茶を買って、目についた本を取る。


いつも人気がなく置いてある本。

[自然災害と妖]というタイトル。

喧嘩でも売ってるのかと思うタイトルに手を一度もつけて来なかったが、この本に会うのも最後だろうし読んでやろうと思い、それを持って自分の部屋に行く。


ベッドに着き、座ったまま本を開く。


「はあ…?」


思わず声を出して、イラつく。


なんだこの本は。現代人に読ます気ゼロだろ。

このチリ毛みたいな文字はなんなんだ。

俺は乱暴に本を机に置き、TVをつける。


「やっほー。元気してるー?」


世永はあれから毎日来ている。


樂「今日は何?」


世永「蜂蜜レモンののど飴。」


俺はTVを見たまま、世永に手を出す。


世永「ちゃんとお礼言って…ああ!?」


世永が急に叫ぶ。


樂「なんだよ。ここ病院だぞ。」


「お静かに!」


外にいた看護師が注意して来て、扉を閉める。


世永「ごめんなさーい。…って樂。この本。」


樂「このクソな本がなんだよ。流行ってんのか?」


世永「いや、違う。この本いつから持ってたの?」


樂「は?この本はここの貸し図書だ。」


世永「え?でも、いつも本読んでなかったっけ?」


樂「人気の無い本最後に読んでみようと思ったら、その汚ねぇ文字の本だったんだよ。返しとけ。」


世永「…。」


世永がペラペラと本をめくる音をさせる。


世永「ここ見て。」


世永が見せてきたページを見せる。


華宮はなのみや 世永せいえい・36歳・華宮邸 別邸』


樂「なんだ?この本に出資したのか?」


世永「違う違う。」


と言って、また別のページを見せてくる。


梵唄ぼんばい がく・15才・梵唄勝貴、榮家 居住』


樂「…は?俺こんな本に名前出した事ないんだけど。」


世永「あー…。もう、なんでかなぁ…。」


世永が俺以外の誰かに呆れた様子で顔を歪ませる。


樂「なんだよ。てか個人情報すぎるだろ。」


世永「この本はね、選ばれた人にしか表れなんだよ。」


何言い始めた、またおとぎ話でも始めるのか。


昔っから世永によくわかんない妖怪の話を夏の夜に聞かされていた。

そんな話、誰が聞くかよ。


世永「この話はちゃんと聞いて。樂、お前の人生どう生きるかにも関わってくるからちゃんとこっち向いて。」


世永が俺の持っていたTVのリモコンを奪い、TVを消す。


いつもはふざけた顔をしてるのに、何故か重い話を始めるかのように顔がこわばっている。


世永のいつもの様子と何かが違う気がして、話を耳に入れることにした。



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