トンネル
あれから数ヶ月、俺はただ自分の出来ることをやっていった。
父さんと母さんは俺があまり笑顔を見せなくなって心配をかけてしまっているが、
俺が笑顔になったところで、みんなが不幸になるだけなんだ。
だから、俺はやるべき事をやらないといけない。
知識は図書館の本でたくさん手に入れたけれど、
凛翔も悩ませていたお金をどう稼ぐかがまだ決まらない。
小学生、中学生でもお金を稼げる方法ってなんだろう。
[コンコン…]
榮「樂、入って良い?」
樂「いいよ。」
と、母さんと父さんが入ってきた。
樂「どうしたの?」
勝貴「みんなで、ドライブ行かないか。」
樂「えー…。」
榮「紅葉トンネル、毎年行ってるでしょ?今いい時期だってお隣さんが教えてくれたの。」
樂「…わかった。」
2人は俺の返事に嬉しそうにする。
父さんが運転席、母さんと俺が後ろの席。
俺が生まれてからこの席順は変わらない。
あれから母さんはいつも俺と出かける時、指を絡ませた手のつなぎ方をしてくる。今日もそれをしている。
こうしてれば、寂しいのも悲しいのも私が吸い取ってあげれると言っていた。
父さんが俺たちが好きなアーティストの曲をかけて出発する。
相変わらず、新曲より昔の曲をかけて楽しそうにしている。
勝貴「必要なものは全部ここにあるー♪」
父さんってこんなに歌下手だったけか。
榮「君が選んだ道が何より大切さー♪」
あれ?母さんも珍しく音外してる。
樂「2人とも何で音外してるの?」
勝貴「外れてるか?」
榮「わかんないなー(棒)」
歌いながら、俺の質問に答える2人。
勝貴「樂の声が無いとやっぱり歌えないなー(棒)」
榮「だねー。」
2人の演技が下手すぎて俺は思わず吹き出す。
そんな事をしてると、曲が終わってしまった。
樂「…リピート。」
勝貴「リピート頂きました!」
榮「やったね!」
2人が嬉しそうに笑う。
こんな時は笑っていいかな。
俺はリピートしてもらった曲を、3人で熱唱しまた次の曲も歌いながら近所の紅葉が綺麗な道に向かう。
父さんは旅先の景色をしっかり見られるように、4人のりのオープンカーを数年前に購入した。
その車は俺ら3人家族には丁度いい大きさで、余計なものはないシンプルな車。
紅葉トンネルにあと数十メートルというところで父さんが天井を開ける。
榮「涼しくなったね。」
勝貴「もう10月半ばだからな。」
俺は空を見上げ、夜空と紅葉を眺めながら秋の香りを嗅ぐ。
この涼しさと乾燥しかけた葉っぱの匂い、もう少し土が乾燥してくれば冬がくる事を匂いが伝えてくれる。
榮「樂、寒くない?」
母さんが持ってきた膝掛けを渡そうとしてくる。
樂「大丈夫。このぐらいがちょうどいい。」
こうやって、季節の匂いと首に当たる夜風が最高に気持ち良い。
これを感じられなくなってしまう日が来てしまうのかと思うと、少し寂しくなった。
榮「樂、歌ってみない?」
さっきから、歌ってるのに母さんは何言ってんだ?
樂「何で?」
榮「樂、歌上手いもん。プロ目指す?」
樂「…。」
その言葉に凛翔の事を思い出す。
そうだよな。凛翔は俺がバンドマンになるって書いてたもんな。
勝貴「近くに聖歌隊をしてる団体があるんだ。樂なら受かるよ。」
バンドとは離れた存在ではあるけど、たくさんの人の前で歌う練習になるか。
「「樂はどうしたい?」」
2人の声が重なり、聞いてくる。
俺は、凛翔の見たかった景色を自分の目で見て、俺の中にいる凛翔たちに見せるために知識を蓄えた。
後は、行動のみ。
樂「やりたい。」
「「!」」
2人がすごく驚いた顔をして、すぐに喜ぶ。
この2人の笑った顔は見てると落ち着くし俺も自然と笑顔になってしまう。
俺たちはドライブを終えて、
数日後、俺は近所にあった聖歌隊に入隊した。




