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家族になりますっ!  作者: 桜城カズマ
プロローグ「これから仲良くなっていきたいな」
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第6話「ククク・・・・・・来たか愚かな人間め。我が魔法の前に倒れるがいい!!」

それからしばらく、新しい家族と語り合った。


・・・・・・途中で奏音は「自分の部屋に戻る」と2階へ行ってしまったが。


とにかく、本当にいろんなことを話した。

今まであったことを。もちろん、触れてほしくないことや思い出したくないことは話さなかった。


「ねえ勝くん、料理ができたし奏音を呼んでくれるかしら」


エプロンをした母さんが台所から出てきて言った。

傍には料理を手伝っていた軽音もいる。


「わかった」


どの部屋が奏音の部屋かわからなかったので母さんに聞くと、奏音の部屋は僕の部屋の隣らしい。

僕は階段を上り、奏音の部屋の前まで行き、ドアノブを捻ろうとしたところで思い直し、ドアを3回ノックをする。


「奏音?晩ご飯できたから食べるぞー」


言ってから、少し待つ。

だが、部屋の中から反応はない。

寝ているのだろうか。そう思ってドアをゆっくりと開く。

ドアを開けてまず入ってきた情報は、


「ククク・・・・・・来たか愚かな人間め。我が魔法の前に倒れるがいい!!」


という声だった。

その声の主は、当然と言えば当然だが、奏音のものであった。

さらに驚くのが、先ほど自己紹介の時来ていた服とは全く異なる、ファンタジーな世界の住民のような恰好、いわゆるコスプレをしていたことだ。


「・・・・・・えーっと、奏音?」


「ひゃっ?!」


僕が話しかけると奏音は目を丸くし、素っ頓狂な声を出してこちらを向く。

そして顔がみるみるうちに赤くなっていく。


「おにぃ……さん……い、いつからみて……?!」


「えっと……『ククク……』あたりかな……その、何をしてたの?」


僕がそういうと奏音は黙り込み、何かを考えるように右手を顎に当てて「うーん……」と唸る。

なんとなく気まずい感じになる。


「おにーさんはノックはしたんですよね?」


「あ、ああ」


「でも、ワタシの返事がないのに入ってきた。合ってますか?」


「……合ってる」


「ギルティ」


即答。


「ひどい!?」


「罰としておにーさんにはワタシの小説作りを手伝ってもらいます。もちろん拒否権はありません」


「え?小説書いてるの?」


「はい。まあ、ネットのサイトで上げてるので、稼ぎとかにはならない、本当に趣味程度ですけど」


「……というか、普通に喋れるんだ、君」


「むっ、失礼ですね……まあ、確かに普段はあんな感じですけど、ここは違います。特別なんです」


そう言われてから、僕は部屋を見渡す。


入った時はコスプレ姿が衝撃的すぎて気づかなかったけれど、この部屋は数え切れないほどの本が、部屋を囲うように設置された本棚に収められていた。

……ただし背表紙を見る限り、ほぼ全て一般文芸では無いようだったが。


「好きなの?ライトノベル」


「っ!?知ってるんですか!?ラノベ!!」


僕が聞くと、凄まじい勢いで詰め寄ってくる。


「あ、ああ、まあ。ほんとうに、少し……有名なタイトルとかは。例えばそうだな、『あの青空の太陽のように。』とか……」


「『あのよう』っっっっっ!!!!!いい趣味してますね!!!!!最高ですよね!主人公とかヒロインたちの生き様とか、葛藤とか、あそこまで心理描写に力を注いですラノベはなかなかないですし!!!ワタシは特に3巻が好きで、『きぃねえ』が主人公の呼び方がみんなと違う理由とか、あらすじにあった、『あなたに、さようならを』の『あなた』って言う部分が――!!!」


急に暑く語り始める奏音。


その瞳はとても輝いていた。


その瞳が僕に奏音が本当にラノベが好きなんだと伝えてきてくれている。


もっと聴いていたいと思ったが、ここにきた当初の目的を思い出した。


「わ、わかった。わかったから一旦落ち着いてくれ。ここにきた理由は、ご飯ができたから呼んでくれって母さんに頼まれたんだ」


「あ、そうなんですね。すみません……熱くなってしまって……気持ち悪かった、です、よね……」


言いながら先ほどとは打って変わり、表情はどんどん沈み、うつむく。


「い、いや、そんなことないから。本当にラノベが好きなんだなってことが伝わってきたし、もっと聞きたいって思ったよ」


「そうですかっ!?な、なら、お話ししますよ!おすすめのラノベも貸しますし!」


奏音はパッと顔をあげて明るい表情に戻る。


「え、いいの?」


「いいです!あでも、ワタシの反応があるまでノックしてくださいね?あれ見られるの恥ずかしいので……」


と、今度は顔を赤らめてうつむく。


本当に表情がころころ変わる子だな。


奏音の新たな一面を知れてなんだか嬉しい気持ちになっていることに、部屋を出て階段を下りながらそんなことを思った。

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