第4話「なんで家族全員一緒じゃないんですか!?」
そうして、家族間自己紹介は残すところあと一人となったが、最後の一人になった女の子は響佳が座ってからというもの、ずっとうつむきもじもじしている。ときどき、「あ、えと、その・・・・・・」と何かを言い出そうとするけれど、結局何も言い出せずにいた。
女の子の顔は自己紹介を始めたころはまだ明るい顔をしている気がしたが、今はその真逆で沈んだ顔をしている。
「この子は金城奏音。中学二年生で14歳よ」
そんな女の子を見かねたのか、鈴さんは立ち上がり女の子のそばまで行き、そう紹介した。
そのことに女の子の顔がまた暗くなったのは気のせいだっただろうか。
女の子は座ったままペコリ、と頭を下げた。
「さて、自己紹介も終わったことだし、これからのことについて話そう」
親父が話を始める。
「俺と母さんは東京へ行く。勝たちはここに4人で住む。以上」
「ちょっと待ってください!」
親父が途轍もなく簡単に終わらせたのが気にくわなかったのか、怒気をはらんだ声で軽音がバンッとテーブルを叩いて立ち上がった。
「なんで家族全員一緒じゃないんですか!?」
「それは・・・・・・その、6人で引っ越しをしようとするとお金がかかるからよ・・・・・・」
軽音に対して答える鈴さんの声がだんだんと小さくなっていく。
「お金ならあるでしょう?お母さんはかなり稼いでいるのだし・・・・・・」
軽音の言葉に鈴さんは頬染めてうつむき、「その、ね・・・・・・えっと・・・・・・」と言いづらそうにする。
そんな鈴さんを見かねたのか、親父もまた顔を赤くして恥ずかしそうに口を開いた。
「結婚が決まった後、鈴さんが・・・・・・言ったんだ、『一緒に暮らしたい』って。『転勤という口実もあるしいいでしょう?』って」
鈴さんは耳まで赤くなっていた。
「あ、えと、その、それは、えっと・・・・・・そう、そうなんだ・・・・・・ごめんね、お母さん。お母さんが言い出したなら、仕方ないわ・・・・・・」
さっきまでの勢いはどこへ行ったのか、なんだか申し訳なさそうに軽音は椅子に座る。
「と、ということでさっき言ったようにこれから・・・・・・正確には全員の通う高校が夏休みに入ってからここで4人で暮らしてもらう。いいかい?」
親父はさっき言ったことが余ほど恥ずかしかったのか、まだ顔を赤くしたまま言った。
親父に異論を唱える人は誰もいなかった。
「そうだ!まさるく、勝、自分の部屋見てみたくない?」
「あ、はい。見てみたいです。どこにあるんですか?」
「2階の奥の部屋・・・・・・って伝えるより案内したほうがいいかしら。あ、あとその敬語直してね?」
「はい、じゃなかった、うん。わかったよ。『母さん』。ありがとう。案内して」




