第3話「自己紹介を始めましょうか」
それぞれの親子が向かい合うようにリビングのテーブルに並んで椅子に座った。それぞれの前には先ほど女性が入れてきた熱いお茶が置いてある。
座って向かい合っている僕らはどこかむずむずするような、うまいこと言語化することができない、そんな雰囲気を漂わせ、沈黙がほんの少し続いた。
その沈黙を破ったのは、父である親父だった。
親父は椅子から立ち上がり自己紹介を始める。
「じゃあまずは俺から・・・・・・俺は鈴さんの夫、君たちの父になる、河口喜彦だ。これからよろしく」
そう言って親父は頭を下げる。
パチパチパチ、とぎこちなく、まばらながら拍手が起こる。
なんだか入学式の次の日の自己紹介の時間みたいだ、とそんなことを思った。
「じゃあ次は僕かな?」
僕は親父と同じように椅子から立ち上がる。
「・・・・・・僕は親父、今さっきの喜彦の息子、河口勝です。これから、よろしくお願いします」
僕は親父にならい頭を下げると、先ほどよりかは少しまとまりができたような、そんな拍手がリビングに響いた。
僕が座ったのを見ると、僕らを案内してくれた女性は立ち上がり僕に目を合わせるようにして話始める。
「それじゃ今度は私が・・・・・・わたしは金城鈴、勝くんの母になるの。よろしくね」
そいうと僕に対して頭を下げる。
「あ、その、こちらこそよろしくお願いします。というか、苗字は揃えないんですか?」
「それはな、勝。婚姻届けを今日提出しに行くからだ」
僕の質問に、親父が答える。
「お前は何もかも今日という日に回しすぎなんだよ少しは段取りをちゃんとして行動しろ大人だろ!?」
「・・・・・・ごめん」
おいそこで割とガチ目に悪いみたいな反応するのかよ。
僕と親父の話が終わったタイミングを見計らい、3姉妹の中の、長女と思しき長い黒髪の女性が立ち上がる。
僕と親父に向けられたであろう顔は、どこか嫌悪感を帯びている、と感じた。
「そろそろいい?私の名前は金城軽音。この一家の長女に当たるわ。よろしく」
そうたんぱくな感じに言い放つとさっと椅子に座る。
「こら、もう少し柔らかくできないの?」
その様子を鈴さんは優しく咎める。
「・・・・・・ごめんなさい。でも仕方ないでしょう?」
「仕方ないことは分かるわ。・・・・・・それと、謝る相手が違うでしょう?」
そう言われると軽音は僕らのほうに向き直り、「ごめんなさい」と頭を下げた。
それから、
「19歳で大学1年生。改めてよろしく」
と付け加えた。
「じゃあじゃあ、次はアタシ!!」
元気いっぱいの様子で立ち上がったのは、先ほど軽音と楽しそうに話をしていたボーイッシュなショートカットで茶髪の少女だった。
「アタシの名前は金城響佳!高校1年生!!16さーい!!」
大きく身振り手振りをしながら自己紹介を終える。
その様子は16歳なんかには見えず、なんならその小さな身長も相まって、天真爛漫な小学生、といった印象を与えた。かわいい。
「あっ、おにいちゃん!!おとーさん!!これからよろしくね!!」
思い出したかのように付け加えて僕と親父に対して両手を差し出す。
僕は差し出された右手を、親父は左手をとり、握手をした。
「「こちらこそよろしく」」
親父と僕の声が重なった。
誤字脱字、文法の誤りなどどんどん指摘していただけるとありがたいです!!