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家族になりますっ!  作者: 桜城カズマ
第一章「僕はお前のおにーさんだから」
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第28話「姉さん」

「だってワタシ・・・・・・学校あんまり行ってなくて、どんな風に進めたらいいのかまったくもって想像できないので」


あっけらかんとした様子で、奏音は伝えてきた。


「行ったとしても生活態度がひどかったので授業中ずっと寝てましたね」


と奏音は付け加えた。

確かに夏休みの間友達と遊びに行くことなかったな。軽音姉さんとか響佳とはたまに友達と遊びに出かけていた気がするけど…・・・僕と奏音はこの夏家から出ること自体が少なかった。別に友達がいないとか、そういうのでは決してない。


「え・・・・・・奏音って不登校だったんだ」


「はい。まあ、いろいろあったので」


そういって笑う奏音の笑顔にはどこか諦めすら感じられた。


「けど、それじゃあ奏音は夏休み明けから学校に通うつもりってこと?」


「はい。学校に通ってみるからこそ見えるものって絶対ありますし。それとさすがにこのまま中学校に行かないという選択を選べるほどメンタル強くないです」


奏音は同じように笑って見せるが、不登校気味だった人がいきなり毎日登校してきたら周りの反応ってどうなるんだろうか。

幸か不幸か僕の周りには不登校の人はいなかったのでそこら辺はよくわからない。

ただ、よくない反応もあるのかもしれないとは思う。

それに、奏音が不登校になったのにはその原因を解決することができなかったからこそ、不登校になったわけで。

要するに奏音が心配なのだ。


「それって大丈夫なの?」


「え? 何でですか?」


「それは、その・・・・・・いろいろ?」


僕は直接不安に思っていることを聞くことができず、笑ってごまかしてしまう。


「まあまあ! いいじゃないですか、ワタシは大丈夫ですよ」


パチン、と両手を叩いて奏音はこの話を終わらせようとする。

僕はこれ以上言葉を尽くすことができず、奏音に従った。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「・・・・・・姉さん、奏音って不登校だったんだね」


夜、ご飯を食べ終わり洗い物を手伝いながらつぶやくように小さな声で尋ねた。


「・・・・・・聞いたのね」


「うん。まあ友達と遊んでる姿を見なかったり、そもそも出会った時からそんな感じはしてたけど・・・・・・」


「あら、友達と遊んでるところを見ないのはあなたもおんなじじゃないかしら」


「いや、僕は別に友達がいないとかそういうのでは決して」


「そう?ならいいけど」


軽音姉さんは洗い物から目をそらさず、けれどくすくす、と笑う。

案外冗談を言うんだなと思った。

軽音姉さんは初めて会ったときに母さんから『軽度の男性恐怖症で、男性不信』だと聞かされて、仲良くするのは難しいかもしれないと思っていたし、夏休みの途中まではほとんど話すことなどはなかった。

ただ、家族なのに全く話さないというのもどうかと思い、ある日から洗い物を手伝うようにしている。まあ、手伝うのだって最初は若干嫌がられていた節はあったし、洗い物をするだけで会話なんて全くと言っていいほどしてこなかったが。

ということで、軽音姉さんが笑いながら僕と話してくれることが正直ちょっと嬉しかったりもする。


「・・・・・・あの子ね、趣味が趣味だからそもそも学校に友達があまりいなかったの」


会話が途切れ黙々と洗い物をしていると軽音姉さんが話し始めてくれた。

「それだけなら、まあ、別段奏音が気にしている様子がなかったからよかったのだけれど・・・・・・ある日言われたらしいのよ、『そんなエロ本を学校に持ってくるな』って。同じクラスの男子だったらしいわ」

エロ本。話の流れから察するにライトノベルのことを指しているのだろうが・・・・・・なかなかひどい言われようだ。

確かにエッチなシーンはいくつかあるが、ラノベの大半が別にそれがメインという訳ではない。・・・・・・エッチシーン極振りみたいなやつもないわけではないが。


「それに便乗したクラスの子たちから、ライトノベルのことを馬鹿にされたみたいで・・・・・・耐えきれなくって、ふさぎ込んでしまったの。今でこそああやって一緒にご飯を食べてくれるけれど、最初は本当に部屋から出てこなかったのよ? 出てきたとしても本を読んでるばっかりで、一言私たちと話したらいい方だった」


軽音姉さんはちょっと懐かしむように話す。

割と、どこにでもありそうな話ではある、と思った。

ライトノベルは最近こそ読む人は増えてきたけれど、それでもまだ偏見だったりそういったものを忌み嫌う人がいなくなったわけじゃない。多分一生なくならないような気さえする。

特に中高生だと、そういうのが多かったりする。本当、オタクは生きづらい。


「けど、変わったわ。あなたのおかげで。だから、そこら辺はあなたのことを信用しているのよ」


軽音姉さんは依然洗い物から目をそらさずに本当に嬉しそうに笑う。


「そう、だったんだ」


奏音と仲良くすることが軽音姉さんから評価されているとは思ってもみなかった。

「ええ。・・・・・・それで、私の話は以上だけれど、あなたはどうする気なのかしら」

最後の洗い物が終わり、手を洗ってから僕の方に向き直り目を見つめられる。こうしてちゃんと見るとやっぱり軽音姉さんはかなり美人だ。・・・・・・じゃなくて。


「どうするって・・・・・・」


「奏音は学校に行くつもりみたいだけれど、正直言えば私はかなり不安よ。また心を閉ざしてしまわないか、とか」


「その気持ちは、わかります。けど奏音は昔とは大きく違うところが、一つだけあります」


「へえ?」


「僕が――『兄』が、いることです」


「そう・・・・・・そうね」


軽音姉さんは目線を外したと思うと、急に「あはは」っと笑い出した。


「な、なんですか」


「いや、だってそんなキザなセリフを吐くもんかねー普通、と思ってしまって。ああいやごめん、馬鹿にしたわけじゃないわ」


なおも笑いをこらえきれない様子で、僕は恥ずかしさで頬が赤くなっているのが分かった。


「ほんと、ごめんね。――信じているのは本当よ、『おにーさん』?」


「・・・・・・絶対馬鹿にしてますよね」


姉さんは笑ったものの、「信じている」と言ってくれた。

姉さんからの信頼を裏切らないためにも、どうにか奏音の抱えている問題を解決してあげたいとあのやり取りの後考えてみたものの、一向にいい案は浮かばずとりあえずはいつも通り奏音と接して、助けを求められたときにいつでも対応できるようにしておくことに決めた。

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