第14話「ワタシ、おねーちゃん達とお話ししたい、もっと仲良くなりたい」
一階へ降り、リビングに行くと既に料理は並べられており、軽音――姉さんと響佳も自分たちの席についていた。
「おそいよー、おにーちゃーん?早く席着いてね」
「悪かった。次からは早くくるよ」
僕は言いながら自分の席についた。奏音も響佳の隣に座る。
今日の晩ご飯は肉じゃがと白米。どちらも出来立てで湯気を立てており、肉じゃがからはつゆのいい香りが鼻腔をくすぐる。
僕のお腹からぐうーっと音がした。どうやら僕は思っていた以上に空腹だったらしい。
家族みんなで手を合わせ、「いただきます」と言ってそれぞれご飯を食べ始める。
僕はまず肉じゃがのじゃがいもに箸を伸ばす。
少し力を入れるとジャガイモは簡単に二つに割れ、ふわぁっとまた湯気が立つ。
僕は二つに分けたジャガイモを口に運ぶ。
ジャガイモには味がしっかりと染みていて、いくらでも食べられる気さえしてくる。
次は肉だ。僕は肉を取り白米の上に一旦置いてから食べ、そのあと白米を口の中に入れる。
やっぱり肉には米が合う。米は先程肉を置いた時に汁が少し付いていたので肉じゃがの味を殺すことなくおいしさが引き出される。
僕の箸を動かす手はどんどんスピードを増していき、一気に食べ終わった。
「おかわりある?」
「すごい速さで食べるわね……量の少ない奏音より食べ終わるのが早いだなんて……」
僕が聞くと姉さんがそう答えた。
言われてからみると、まだ奏音は食べ終わっていなかった。というより、あまり箸が進んでないように見えた。
「どうした?奏音」
「えとその……ワタシ、おねーちゃん達とお話ししたい、もっと仲良くなりたいなって……」
奏音は照れ臭そうに言う。
僕は思わず「ぷはっ」っと吹き出す。
「ちょっと、ひどくないですか!?おにーさん!!」
奏音は立ち上がって言う。すごく真剣な表情だった。ちょっとばかり申し訳ない気持ちにもなるが、仕方がないだろう。僕はてっきり遠回しな言い方をするのかとばかり思っていたのだから。
「いや、ごめん、そんなど直球で行くのかとびっくりしてね」
音が今まで家族たちと昔みたいに戻れなかったのは、単に関わろうという気持ちはあっても、やり方が分からなかったのかもしれない。
さっきご飯に行くときラノベを取り上げておいてよかったと心底思った。
「なになにー?奏音とおにーちゃん、なんか話したのー?」
響佳は興味津々な様子で身を乗り出し前のめりになって聞いてくる。
「いやさ、奏音が『もっとおねーちゃん達と仲良くしたい』って言ってたんだよね。まさかこんなにもまっすぐに言うなんて思わなかったけど」
僕は笑いながら響佳に返す。
「あはは、なにそれおっかしー!まあ奏音が仲良くしたいって言うならおねーちゃん達はやぶさかではないんだけどねー?」
響佳は笑ってからニヤニヤと姉さんの方を見やる。
「そ、そうね。私ももっと奏音と仲良くしたいなって思ってたし……」
姉さんは少し照れ臭そうに答える。もしかしたらずっと、奏音がそう言い出すのを待っていたのかもしれない、あるいは自分からいって、拒まれるのが怖くて伝えられなかったのかもしれない。
どちらかなんてどうでもいい。大切なのは、嬉しいことは、どちらも互いを拒まず、『仲良くしたい』と思っていたことだ。
「今日は久しぶりに一緒にお風呂入ろっか、奏音?」
響佳はとても嬉しそうにはしゃぎながら奏音に聞く。
「えっ……いいの……?」
響佳の唐突な提案に奏音は戸惑いどこか申し訳なさそうに聞く。
「良いに決まってるじゃーん!なんだってアタシ達は、家族だしそれ以上に姉妹だもんね!あ、もちろんけーねも一緒だかんね!」
「ええ……まあ良いけれど……」
姉さんは困ったように笑いながらもその表情からは嬉しさのようなものを僕は感じた。
よかった。3人の距離は確実に縮まった。そのことが僕は今嬉しい。
「ああ、そうそう。勝くん、おかわりならあるから自分で取ってね」
姉さんは僕に短くそう伝えてから奏音と響佳と3人、姉妹仲良く談笑をしながらご飯を食べ始める。
どうやら弟と姉との距離は縮まらなかったらしい。
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