第11話「遠い昔の夢を見た。」 side・勝
子供のころ、どんどん仲たがいしていく両親に対して何もできず、家族がバラバラになっていく様をただただ、指をくわえてみているだけだった。
当時7歳、小学2年生になる僕なんかそっちのけで会えば喧嘩する毎日。
原因はわかりきっていた。
僕の成績が悪いからだ。
悪いといっても、単元テストではだいたい80点で、母さんが申し込んですることになった通ってもない塾のテストでは60点。
だからまあ別に特段悪いというわけではないと自分では思う。
けれど母さんはそれを許さなかった。
単元テストでは100点を求められ、塾のテストでは80点を求められた。
それに対する親父の、
「別に中学受験をする予定もないんだからいいんじゃないか」
という意見に母さんは納得せず、
「今のうちから頑張っておかないと中学生、ひいては高校生になってから苦労する」
と言っていた。
もちろん、自分の成績をあげようと努力をしなかったわけじゃない。
でも僕は正直なところ、勉強するのは嫌で友達たちと遊んでいたいなと思っていたので、親父になついた。
それがまたよくなかったのかもしれない。
母さんはより勉強に対して口うるさくなり、それを擁護する親父への当たり方も強くなって行った。
子供の教育方針で揉める。これは割とどんな家庭にでもありそうな話ではある。
けれど、話はこれで終わることはなかった。
母さんは徐々に親父から距離をとって生活をするようになっていき、終いには親父が仕事が終わって帰ってくる車の音がしたら、すぐに自分の部屋に入っていくようになった。
さらに、親父は親父で仕事が忙しくなるにつれ家に帰る時間が遅くなり、母さんと話をできる時間が無いに等しくなった。
そしてそれが二人の不仲を加速させ――ついには離婚という、行き着くところまで行ってしまった。
ここでまたちょっと揉めた。それは僕の引き取り手だ。
母さんが「この子は私が責任をもって育てていずれは東大に通わせます!」と言って譲らなかった。
だけどそれは僕が嫌がったこと、親父が僕に賛同してくれたこともあり、どうにか親父が引き取ってくれることになった。
この一件は僕にとってかなりのトラウマになった。
家族崩壊の中心にいるにもかかわらず、僕は何もできない。
ただ親父につらい顔をさせて。
ただ母さんに厳しい顔をさせて。
何もできない。
ごめんなさい。
僕は激しい無力感に襲われながら、目を覚ました――。




