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82.バジェスティー寺院 攻略


  寺院の入り口は周囲の雑魚モンスターが近寄らない、という事だったので安心して眠る事ができた。

 心配性のルティスがバーレンと交代で眠ったそうだが、何も出なかったと言っていた。


 朝食を済ませ、寺院の中に入って行く。

 所々から陽が差し込んでいるが、明かりがないので薄暗い。

 メリアが3mほど前方にライトの魔法を漂わせ、道を確認しながら進む。

 光が近くにあると遠くが見え辛いし、敵に狙われやすいという事だった。


 そんな心配をよそに、遠距離攻撃のモンスターは出てこなかった。

 ヴァリエンが何度か来た時にほとんどのモンスターを殲滅して回ったそうで、少し拍子抜けである。

 倒しそこねたのか補充されたのかわからないが、5匹ほど個別に150cm程度の小さなゴーレムが出てきた程度だった。

 鈍器を使ってルティスとバーレンが2人で壊している。


 「プレダールさんに比べたら止まってるような物ですからね。

  動かない人形を壊して回ってる気分になります」


 バーレンも頷いていたが、止まっていると言うほどではない。

 少し鈍い人間くらいには動いて攻撃してくるし、不慣れなはずの鈍器で的確に壊している。

 こんな程度なら中身が鉄でも簡単かもしれません、と前衛2人の士気は高揚している。

 楽に済めば良いのだが。



 ゆっくりと確認しながら進んだが、最奥に到着したのは2時間もかからなかった。

 広い中庭に出たと思ったら、奥に5m程度の登り階段があり神殿の様になっている。

 その前に3mはあろうかという、大きなゴーレムが1体うずくまっていた。

 恐らく立てば4~5mはあるだろう。

 所々土色が剥げて黒い鉄の部分が見えている。


 動くと想定して、メリアが前衛3名に筋力強化と俊敏強化をかける。

 その後は各自の被弾を見て回復を担当してもらう予定だ。

 ヴァリエンは遠くから見守ると言って寺院の中からこちらを伺っている。


 ボクは自分でバフをかけていく。

 他のメンバーにも水鎧をかけられれば良いのだが”維持や回復をするのに、かけられた側のMPを消費しているので無理だ”と指摘された。

 精霊に化け物バケツと呼ばれたボクだから使ってられるらしい。

 不便だ。

 他のバフについても同様で、他メンバーにしてあげられる事と言えば過剰気味の回復くらいである。

 なるべく控えめ控えめを心がけているが、いつもメリアに怒られている。



 もしかしたらゴーレムが起きないかもしれないので、まずは鎧の音がしないプレダールから奥に進む。

 そろり、そろりと歩いて行くが特に反応しない。

 ゴーレムの左腕を通りすぎ、神殿の階段前までたどり着いた。

 背伸びして両手で手を振っている。かわいい。


 次いでバーレンがゆっくりと移動するが、どうしても鎧の音がガチャガチャする。

 ゴーレムの左腕近くまで行くと、ズズズズッと音を立てて左腕を地面についてゴーレムは立ち上がった!

 聞いていた通り大きい!

 3階建てくらいの高さの5~6mの巨大なゴーレムだ。


 頭が小さいドーム状で胴体は広く長い。

 そして両腕は長いが足は短めだ。

 移動する事をあまり考えられていないのだろう。



 馬車でここまで来る時に、どのような行動をするのかヴァリエンに聞いてあった。

 移動は早くないが、両腕がすこぶる速く動いて攻撃が届かないと高をくくると押しつぶされてしまう。

 また、頭も体も360度回転するので背中側が安全とは言えない。

 無視して奥の神殿に入ろうと階段を駆け上がった者もいたが、ゴーレムに入り口を塞がれてしまい押し潰されたと言う。



 プレダールなら素早いので、どうにか突破できるかもしれない。

 だが、万が一にも押し潰されては回復が届かず死んでしまう。

 そんな危険な賭けはできないのでゴーレムを破壊する方を選択した。


 スピード型のインチキ火力のプレダールに足を破壊してもらい、崩れた所をルティスとバーレンに腕を一本ずつ破壊するよう指示してある。

 ボクも前に出て戦闘に慣れたいのだが、私達を信じてリーダーは待っててください! と凄まれたので様子見だ。

 果たしてどうなるのか……



 指示通り、プレダールが足に向かって走り鈍器を振り下ろす!


 「固ったーーー!

  この鉄、思ってた以上にかったいですよ!!」


 3回ほど叩いた所に、ゴーレムの右腕が排除しようと掴みかかってきたので距離を取る。

 第1作戦は失敗に終わってしまった。

 あまり予想していなかっただけに、これは痛い。


 第2作戦は、とにかく安全に表層の岩肌を剥ぎ取る事である。

 内部の鉄の姿が現れれば、魔法陣など何かしら攻略の手立てが見えるかもしれない。

 希望的観測な攻め方だが、できる事から潰していくしかない。


 慣れない大きさ、慣れないスピードの両腕だが、動きは単調なので次第に被弾しなくなり岩肌を削ぎ落としていく。


 

 胴体の半分から下、前腕、の岩の部分が剥がれ落ちた。

 岩の部分は、鉄の本体部分に2~30cmほど蓄積していた岩石部分で中身は意外とスマートだ。

 ずんぐりした最初の印象から比べると変な気分になる。

 下半身だけスマートになっているから余計だ。


 しかし、このままでは背が高すぎて頭や胸まで攻撃が届かない。

 ボクの持っているミスリル製カタールなら、恐らく鉄は切れるはずだ。

 何度か鎧や武器を切っている実績もある。

 周囲にボクが前に出る合図をし、3人で注意をそらしてもらう。


 毎日磨いた薄紫にゆらめく刀身を見て、大丈夫だと自分に言い聞かせ飛び出した。

 ゴーレムは3人に注意を引きつけられているので、素早く後ろ側に回り込み右膝の裏側部分から前に力いっぱい横に一文字斬りした。


 ルティスに何度も教えられ、少しはマシな動きになった斬撃はゴーレムの右膝から下を切り離した。


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