表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/310

66.尾行


 「これからメリアさんに毒を打ち込んで貰ったりした後に縄をほどいて貰います。

 ありえないですが、万が一にもこの3人の内誰かをバーレンさんが殺したなら、どうやってもアナタも子爵も、そして石化したアナタの仲間も家族も殺します。

 生きている事を後悔し続けるくらい残虐な方法で。

 それだけは、覚えておいてください」


 できるだけ凄んで見せたつもりだが、ボクは殺気が溢れるような猛者ではない。

空気が震えるくらいの殺気を出した、ランデルバール城塞のソラルさんの様にできれば良かったんだけど。

格好良くキメられなかったのは残念だが、本当にやるつもりでいる。

プレダールもメリアも少し安心した様子に見える。


 「じゃ、先に次の街に行ってますんで。

 この道に沿って行けばいいんですよね?」


 御者台のルティスに道を確認し、服装を新品の物に着替える。

軽く準備運動してからできるだけマナを込める気持ちで俊敏強化のウィンド・ステップを詠唱する。

予想より自分の動きが物凄く速い。

途中の小川で水鎧を詠唱して防御も固めておく。


 テスラヌという街に着いたのは、それから1時間程だった。

堀がめぐらされていて大きな跳ね橋がある、石壁の外壁がある街だ。

途中で休憩したりしたが、走るというより風に押され続ける感じなのであまり疲れなかった。

帽子を深くかぶって街に入る。

門番に身分証を求められたが、Bランクタグを見せたら驚いた様に開けてくれた。

これは便利である。深海の姫に感謝した。


 街は推定1万人以上はいる大きな街並みだ。

十字型に道と門があるので交易で栄えているのかもしれない。

1本の道の行き止まりに大きな屋敷が見える。領主の家かな?


 まだ夕方まで多少時間がある。

少し手狭な道具屋に入ると、黒いマントを着た人物に暗殺術(中)が付いているのが見える。

いくつかのアイテムを購入し出ていった。

今夜の相手になるかもしれないし、違う人かもしれないが。

マナポは意外と安く売っていて、マナ回復効果(中)1本で大銅貨4枚だった。

2000円じゃん!

船旅医務室のルーコナさんに物凄くボられたのだと気付かされた。

5本買って店を出る。


 これだけ広い街とは思っていなかったので、裏道に入って屋根まで飛び移る。

大きくジャンプしようとするとマナを少量消費したが5mほどジャンプして驚いた。

魔法は実際に使わないと分からない事が多いと実感する。

3階建ての多い屋根が平坦な街並みなので、屋根の移動は楽だが落ちた時を想像すると怖い。

 こんな時に飛翔と透明化があれば楽なんだけど。


 道の遠くに自分達の馬車が見えた。

他と違って2頭馬車だから見分け易くて良い。

いつまでも慣れない屋根の上だと尾行が失敗すると思い、急いで降りて服屋に入って適当に買って着替える。

ハンチング帽があったので帽子も変え、布製の肩がけカバンを買って着替えを放り込む。

これで多少は変装できたと思いたい。


 街の入り口が見える場所で待つと、全員揃って馬車に乗っているのが見える。

とりあえず安心した。

バーレンは街の入口で別れ、1人で歩いていく。

行き交う馬車が多いので見失わないように気をつけないと……

銀色の鎧が目立つので大丈夫だとは思うが。


 宿に入らず、そのまま真っ直ぐ歩いていく。

考えてみれば跳ね橋がある街なのだから、夜間は閉まるはずである。

みんなと合流するの面倒だな……いやこれ、もしかして騙されてる?

不安が頭からこびりついて離れない。

バーレンはそのまま街を出て街道を歩いている。

いくつかの馬車を間に挟んで自分も街を出た。


 前方にいる銀色の鎧の人影が森に入った。

他には見当たらないのでゆっくりと付いていく。

細い獣道に沿って歩いているようだが、後ろをついていっては怪しすぎる。

消音と透明化が激しく欲しい。

城塞から逃げた彼らは生きているのだろうか。

歩くのに邪魔になりそうな小高い草木は少ないので、木に隠れながら尾行する。


 少し開けた場所で木を組んで焚き火をし始めた。

周囲は日が落ちて暗くなっていく。

真っ暗になるかどうかという所で視界が暗視スコープのようにクッキリ見える様になり、何事かと驚いた。

もしかしたらメリアがこっそりとかけてくれたのかもしれない。

今度教えて貰おう。


 ゆっくりと10mほどの距離まで近づく。

周囲に動く人影のような物は見えないが、慎重に、慎重に……


 奥から人影が出てきて焚き火に照らされる。

黒いローブの男2名と中央に偉そうな服装の人が見える。

ゆっくりと近づくと暗殺術(中)が付いているのが1名、もう1名は格闘術(中)である。

貴族らしき男には、地獣の加護、というスキルがある。

その獣は見当たらないが、これは少々不利だ……

3人に楽に勝てる程強いスキルは精霊を呼ぶくらいしか思い付かない。

……どうしよう?


 1.バフを全力で掛けて不測要素である暗殺術から不意打ちして仕留めていく。

 2.来てくれるかどうか、どうにかしてくれるかわからない音が出るかもしれない精霊を呼ぶ。

 3.バーレンを信じて待つ


 個人的には1を選びたい。

暗殺依頼なんて基本的に口封じまで込みだと思っているからだ。

わざわざ実力行使ではなく、気付かれないように手間のかかった毒殺を選んでいるだけに可能性が高い。


 放置しておくと2人がかり、もしくは裏に追加で人がいてバーレンが殺されかねない。

彼が殺されるのは百歩譲っても良いが、後々ボクが生きているのがバレた時の事を考えると今相手を殺すか確保するのがベストである。

味方になるかもしれない人を見殺しにするのも後味が悪い。



 小さな声で落ち着いて筋力強化、俊敏強化を掛ける。

心臓の鼓動がやかましいくらい大きくなっていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ