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5.呼ばれた側の心理


 ドアを開けて入ると、日中だというのに薄暗い30畳ほどの部屋にベッドが10、男性2人・女性3人の人間がいた。

 広いような気もするが、6人で使うことになる分にはそれほど広いわけでもなさそうだ。

 何人かパジャマなのは寝起きなんだろうか?


 急にソラルが溜息をこぼした。

 室内の人は全員無言だが、大鬼人オグルはさっさと出て行け、という表情が見て取れる。

 では、のちほど……とソラルはドアを閉めて行ってしまった。

 知らない人が5人いる空間に置いていかれるのは若干心細い。

 だが、午前中のイライラしたデリンと二人っきりにされた時に比べたらどうということはない。


 ……全員沈黙。

 全員からジッと視線を感じるので、自己紹介を先にしろよ空気読め! ということなんだろう。

 察せなくてごめんなさい。


 「服部ハットリ 晴樹ハルキです。

  今日の午前中ここに来ました。

  ギフトのこともよくわかってませんが、色々教えて頂けると嬉しいです。

  仲良くしてください」


 お辞儀をすると、パチ……パチ……という、まばらな拍手。

 やばい、5人に対しての第一印象最悪なんだけど!

 何か間違った作法をしたのだろうか?

 短い自己紹介で地雷を踏んだ可能性は考えたくない。

 そういえばギフトと発言したことにより、能力解析のスキル効果と思われるステータスウィンドウや持っているスキルが各自に見える。

 だが、押してみても他人のスキルの効果内容は見えない。


 「……じゃあ、私も。

  小谷田コヤタ 悠里ユウリよ。

  ここに来て1ヶ月と3日。

  教えられることは少ないと思うけど、よろしくね」


 栗色の髪を頭の真後ろで束ねたポニーテルだ。

 セーラー服を来ているから中学生~高校生だろう。

 やや釣り上がった目付きなので気が強そうな印象を受ける。

 ステータスウィンドウに名前が登録された。

 人の顔と名前を一致させるのが苦手な自分には最高の機能だ!


 握手を求められたので握手をする。

 小谷田さんは何か違和感があったのか、一瞬だけ表情を曇らせた。

 手汗はまだかいてないと思うんですけど?!


 視界の左上にあるギフト欄のコピーの横に5つの空欄が縦に並んでいるものが出現し、上2つにロード中……と表示された。

 ほんの一瞬で小谷田さんの能力・刀剣適正(大)と加速+と表示されているものコピーされた。

 驚いた表情を見せては周囲に何か邪推されてしまう。

 できるだけ冷静を装い、よろしく、と返す。


 「で、では私も。

  時田トキタ 真帆マホです。

  ここに来たのは小谷田さんと同じ日です。

  えっと、その……よろしくです」


 3:7に分けた黒髪のショートボブで、怯えてるような雰囲気をしている。

 20歳前後だろうか。

 パジャマを着ているので胸がデカイのがよくわかる。

 つい目が行ってしまいそうになるが


 (相手からしたら「こいつ、また胸見てる」と分かるよ。良い気はしないから止めろ)


 どこかの会社で先輩に言われた事を思い出す。

 その先輩はぺたんこだったけど。

 時田さんは若干垂れ目なので、ネコ耳とかしたら似合いそうだ。


 握手がコピーの条件なのか確認したい。

 握手を求められていないので、こちらから手を差し出す。

 握手をすると、時田さんもエッ?! というような表情をする。

 残っている空欄にロード中と表示され、マナ貯蔵庫と魔法 風がコピーされた。

 魔法楽しみだな!

 コピーは、やはり握手が発動の鍵なのだろうか?

 それとも体に触るとか……?


 「他の2人は無口だからね、僕が先に自己紹介してあげよう。

  藤原フジワラ スグル

  ここに来たのは1週間前くらいだったかな?

  現実世界なら何を聞かれてもよかったんだけど、この世界のことはよく知らない。

  よろしく頼むよ」


 黒髪のナチュラルショートヘアーで、見た目だけは真面目そうに見える人だ。

 口ぶりや態度は、人を見下し侮っている傲慢ゴウマンさが鼻につく。

 ギフトは縮小化、消音、金運上昇。

 おぉ、スキル3つあるということは星3か。


 手を上から差し出すようなそぶりで出してきた。

 ある意味期待を裏切らない仕草だ。

 握手をしようと手を合わせた瞬間、パッと手を引かれる。

 縮小化はコピーされていた。

 藤原は驚いた表情でボクを指差す。


 「き、君は電気の能力持ちなのかい!?

  握手しようとした瞬間ビリッとするから、咄嗟に手を引いてしまったよ。

  初対面で攻撃するなんて失礼な奴だな!」


 え? そんな能力持ってないんだけど。

 いや、能力コピー上限に引っかかった警告か? なんで相手に?

 すると、小谷田と時田も口々に言い始めた。


 「私もピリっとはしたけど、そんな言うほどでもなかったわ」


 「わ、わたしも……なりました。

 なんだろう……?って程度でしたけど」


 能力コピー時に相手に告知する仕組みでも付いてるのか?

 そんなものは不要だ!

 コピー上限に引っかかると痛みが強くなるのか、それとも能力的な相性なのか、性別なのか。

 分からない事が多すぎるな……

 このままでは電気系能力と思われ、強い能力だから戦闘よろしくね! と言われかねない。

 誤解は早々に解くに限る。


 「いえ、ボクの能力は電気系ではなく……」


 「能力は言わなくていいわ。」


 即座に小谷田が止める。

 お互いの能力がわからないと不安にならないのだろうか?

 戦力になるかどうか、相性はどうか、とか考えたいし。

 小谷田はそのまま言葉を続けた。


 「能力を言われると、他の人も開示する流れになるでしょう?

  私達はアナタが信用できない。

  あの鬼どもにそそのかされて、みんなで戦争に協力しよう! なんて言われても困るのよ」


 えっ?!

 続けて藤原が口を開いた。


 「面倒は押し付けられたくないね、ここは待遇も悪いし。

  なぜ僕達が協力してあげないといけないんだい?

  こんな僻地に無理やり呼び出されて、ほとほと困り果てているんだよ僕達は」


 それは違うよ! と、カットイン付けて論破したい。

 できるほど材料揃ってないけど……

 だが、万が一論破できても、素直に聞いてくれるほど人は柔軟では無い。

 むしろ関係が悪化するだろう。

 残った2名も無言のままだし、室内の戦況は最悪です!

 味方が一人としていません!

 初対面でこんな状況初めてだよ……


 ……そうか、これがデリンの言っていた、あいつらはやる気がない、ということか。

 しかし、敵を欺くにはまず味方から!って誰かの格言にもある。

 エルフ軍と大鬼人軍の停戦仲裁か、どちらか一方の撃破など、やらなければならない目標は高すぎる。

 平和に楽しく異世界冒険! を望む自分の第一歩として、まずここをどうにかしなくては。

 ここは唯一共通の話題を振って様子見しよう。


 「そうですね、ボクも寝てたら水ぶっかけられて起こされるし、目の前には角生えた鬼がいるし、地獄かと思いましたよ。

  逃げられるなら逃げたいです。

  困ってますよ本当」


 「あー!私も水かけられたなー。

  血圧低いからすんごいイライラした。

  思い出してもムカつく!」


 小谷田さんは食いついてくれた。


 「わたしは……足音とかで起きてしまうので、水はかけられませんでしたね。

  急に軍隊みたいな行動を強制されて、パニックになっちゃいましたけど」


 よし、時田さんも食いついてくれた!


 「僕は軽くゆさぶられて起床したよ。

  水をかけられるまで寝ているなんて生活リズムが良くないんじゃないのかい?

  これだから一般家庭のヤツは……」


 藤原くんも食いついてくれたが、一々一言多いな。

 他の2名は黙ったままだ。

 唯一の共通の話題なので、会話に参加して欲しいんだけど……

 小学校低学年くらいの黒髪おかっぱの少女は、部屋の右隅で体育座りをしたまま視線が床に向かっている。

 部屋中央の大きなテーブルの椅子に座った、黒いニット帽を被った中学生くらいの男の子は、目線はこちらにあるけど無言のままだ。


 うーん、これは骨が折れそうだ……


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