表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/310

40.勝ち目が見えない


 「「なんて事をしてくれたんですかっ!」」


 部屋に帰るなり、女性2名がハモって詰め寄ってきた。

 未だに顔が真っ青だ。


 「だからフロア内の全員に大声で承諾を求めたじゃないですか、

  誰が悪いって船員も悪いですよ止めないんですから。

  あんなババアに金貨10枚でドロをかけられるなら安いもんじゃないですか。

  スッキリしなかったんですか!」


 「まぁ、そりゃあね、良くやった!!

  って気持ちも少しはありますよ……

  でも相手は伯爵婦人なんですよ! もうお終いです……」


 「我らを娼婦呼ばわりした事に怒ってくれたのであろう、それは嬉しい。

  だがな、伯爵婦人を怒らせる事になってまで、して欲しいとは思わんよ。

  下船と同時に伯爵お付きの軍に連行されるかもしれんし、素早く逃げる準備でもしておくか……」


 2人がそそくさと荷物をまとめ始めると、急にドアが開いて4人の貴族らしき男性が入ってきた。


 「君かー! あの伯爵ババアに金貨10枚叩きつけたって言う強者は!

  我々も日頃から嫌がらせをされていてね、酒を奢りたくて持ってきたんだ。

  さあ飲んでくれ!」


 「私は見ていたが、実に気持ちの良いものだった。

  ありがとう胸がスッとしたよ!」


 「実に勇ましい!

  その細腕で、あの聖騎士ボレアスとやり合うってんだからな!」

 

 「前祝いだ、良い酒を持ってきたぞ!」


 いつの間にかやり合う事になっているが、アルコールが入って気分の良いボクは気にせず過ごした。

 貴族4名は持ってきたワインボトルを5本開けると機嫌良く帰って行った。

 よくわからんが良い事をしたものだ。



 翌日、若干二日酔いのような頭痛と喉の乾きで早めに起床した。

 メリアとプレダールはうなされているようだ、かわいそうに。

 部屋の出入り口の下に封筒のような物が挟まっている。



 『決闘状


  汚された伯爵婦人の名誉を取り戻す為、

  貴殿に賭け試合会場で1対1の決闘を申し込む。

  今夜の八点鐘までに会場に来られたし。

  船上に逃げ場は無く、今更許しを懇願しても遅い。

  潔く我が拳技の露と消えよ!



        聖騎士ボレアス』



 タイマンならワンチャンどうにかなると思っている自分がいる。

 無論、ボクは動けない。

 ……マズイな。

 まだ朝食の八点鐘は鳴っていないはずだから、作戦を考えなければ。

 まずは会場の下見と、会場のルール等の確認だ。


 少しフリルの付いた買わされた服を着て外に出……ると、起きた2名が脱走したとパニックになりかねない。

 まだ悪夢を見てうなっている2名を起こして相談することにした。


 『ほらやっぱり! どうするんですか!』


 プレダールは起こして早々に何かあったんだと察したのか怒っている。

 どうやら夢の件だったようで、落ち着かせる為に水を飲ませる。

 メリアは寝起きが悪いのでプレダールに起こして貰った。

 決闘状を見せると、二人して悩んでいる。


 「で、どうするんですか、逃げます?

  あ、船の上でしたね……」


 「ふむー……我の付与魔法をかけても良いが、賭け試合会場となると試合前にキャンセルマジックを使われるかもしれんな。

  お主、平然としておるが勝ち目があるのか?」


 「いや、無いですけど。

  焦って勝ち目が出るなら焦りますよ!

  冷静に勝ち目を探すしかないんです。

  とりあえず試合会場の下見やルール確認、相手の噂くらいは聞きたいですね」



 会場まで出かけて行くと、既に軽く準備をしている船員がいる。

 昨日黙認した船員もいる。

 ……不条理だ。

 声をかけると少し申し訳なさそうな顔をしているので、ルールの確認をさせて貰った。



 賭け試合ルール


 1R 5分マッチで、どちらか死ぬまでエンドレスで行われる。

 5分毎に1分のインターバルがあり、マナの補給が一定量認められている。

 戦闘中の反則行為の規定は無し。

 試合前にキャンセルマジックを付与、試合中にも外部から魔法が付与されたり攻撃されないよう、キューブ状にマジックキャンセラーが維持される。

(以前はドーム状だったが階下からバフをかけた反則があった為、改定されたらしい)

 両者入場後、試合開始まで10秒のカウントダウンを行う。

(魔法使いがバフを使う時間なのだそうだ。少し短くない?)

 賭け金のオッズは船舶ギルドが行い、精算は試合の翌日の夜までにすみやかに支払われる。

 


 戦う会場らしきフロアの中央は、キューブ状に金網がされていて地面は土だ。

 砂が敷き詰められていて歯が入っているような地下会場ではないようだ。

 相手の聖騎士ボレアスは、戦場では長い槍を使うが会場が狭く相手が格下なので拳技を使うらしい、との事。

 先日見た人だったらギフトは無かったので少しは安心なのだが。

 スキルに槍術(大)格闘術(中)って付いてたから、たぶんそうだろうとは思う。

 大の上は無いのだろうか、特大とか極とか。


 闘技場の広さは縦横10m x 10mくらいで、高さは5mくらいあるだろうか。

 狭くないけど広くない。




 うーん、ある程度情報が集まったけど……どう攻略したものか。

 ボクが勝つには魔法に頼る以外にない。

 一切使ってない風、多少遊んだ水、暴走以来使ってない回復、太い蛇が出る付与。

 ……魔法練習したい!!!!

 部屋に戻ってメリアに相談しよう。


 「一朝一夕に上手くなったら苦労しない」


 身も蓋もない言葉が出た。

 だが、コピーの能力はある程度の練度が身につくはずである。

 初めての回復魔法が暴走したくらいだから、少なくとも出力はある。


 「すいません、強いマナポってありますか?

  何本かあれば分けて頂きたいのですが」


 「それは良いが……

  お主、そもそもインターバルまで生きていられるのか?

  そこの方が疑問なのじゃが」


 確かに。

 戦場で名を馳せた筋肉ゴリラと同じ檻に入れられて、5分生きていられるのだろうか。

 汚名を晴らすと言うくらいだ、瞬殺はしてこないと思いたい。


 「この剣があります。

  切れ味だけは凄いですが鞘が貧相ですからね。

  多少の油断に足の一本でも取れれば勝機はあります!」


 「剣の持ち方が素人同然なのじゃが、それで勝機とな?」


 ……確かに。

 今まで3人殺しているが、加速+がついてたり、不意打ちと動かないエルフだった。

 背中に汗が流れた感触がある。

 勝てる見込み薄い。

 

 ボクは一縷いちるの望みを賭けて、まず医務室に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ