21.閑話 プレダールの決意
私はプレダール=イル。
大鬼人は成人してからは歳を数えない風習なので、実際の年齢を正確には覚えていない。
上級文官として毎日裏方仕事をし、上官である副将軍達に無理やり呼び出されては雑用を押し付けられている。
このランデルバール城塞ができて5年。
建設前から共に過ごしてきたデリンさんが死んだと報告された。
しかも殺害した本人からだ。
ワタシの頭を何かにつけてはポンポン叩くし、殺しても死なないような生粋の大鬼人が簡単に死ぬものか。
しかも、何の鍛錬もなさそうな隙だらけの人間に殺されるわけがない。
死んだと聞かされた時、ワタシは迫真の演技でつまらない冗談を吐く人間だ、と反射的に思った。
思った次の瞬間、この世界にいるつまらない薄っぺらい人間とは違う、異世界からの人間だったのだと思い直す。
この服部という人間は、初対面の時は立場の上の者に媚びへつらうような、ありきたりの人間という印象だった。
だが、何度か顔を合わせ会話する内に他の人間とは違う、狂気のようなものを感じていく。
自分達の世界には、この世界に無いものが沢山あると。
特権階級というのでもなく、肉を食べるのに自分の手を下さずとも良いと言うのだ。
しかも、血を見る戦場にも生涯行かない者が圧倒的に多いと言う。
話しを聞いている時の彼の目は、欺瞞、狡猾、怠惰の感情などない真っ直ぐで正直な目だった。
異世界と若干常識の差異はあるだろう、と思っていたが想定以上だった。
このような詳細な話をした人間は今まで誰もいなかったし、ガチャ召喚の注意事項と思いデリンさんに報告しに行った。
その時彼女は笑って言った。
「そりゃおめー、ハンドル回してガチャガチャ音立てたと思ったら布団の簀巻きにされた特殊能力持ちの人間を吐き出す古代の遺物産だぜ?
その程度の違いはあるだろうさ、会話ができるだけ御の字だ。
戦力になれば尚、いいんだがな」
ただの脳筋かと思っていたが、時折ハッとするような事を言う。
七光だけで副将軍になったわけでもないのだと痛感する。
隠していた酒樽を煽りながら続けた。
「今回のあいつが考えた作戦だって、どうよ?
親父殿もプレダールもソラルも他の副将軍も、ほぼ改変することなくスッと通す代物だ。
目を白黒させてやがったぜ、ざまぁ見ろ!
しかも、アタシ達の鬱憤を大いに晴らす時間まで付いてる最高の内容だ!」
デリルさんが機嫌良いの最後のとこだけじゃないですかね……?
そこまで計算して付けたんだとしたら逸材ですよ。
「これで、もやし共が好きと言わなければ大当たりなんだがなー。
でもな、そのくらいは許してやれないようじゃーあいつは他の人間と同じように逃げ出すだろうさ。
だからな、プレダールも少しくらいは目をつむってやれ。
あいつは出会って2日の元々無関係のアタシ達の話を、真面目に聞いて全力で助けてくれてるんだからな。
2日だぞ?2日!
アタシがそんな異世界に呼ばれたら、まだ暴れてる頃だろうさ!ガハハハ!」
でもね、デリンさんを殺すような人間嫌ですよ。
それは全然少しじゃないじゃないですか……
背が伸びない理由を押し付ける相手もいなくなって、ワタシどうすればいいんですか……
「アタシだって男の大鬼人に比べたらチビさ。同じだよ。
だからって中身まで劣ってちゃ悔しいじゃないか。
一緒に見返してやろうぜ!」
先に死んじゃったら一緒じゃないじゃないですか……
「おめーに付き合って歩いてたら昼飯が夕飯になっちまう。
しょうがねぇ、抱えてやるよ」
また抱えて走ってくださいよ。
角に頭ぶつけてもいいですから……
「いいか、今回の作戦で誰が死んだとしても、死んだならそいつが悪い。
作戦を立てたあいつを批難しちゃダメだ。
何ヶ月も拮抗し、誰一人として立てられなかった作戦を立て、誰よりも自分が危険な目に合う内容だ。
そうだろう?
なぁソラルもプレダールもそう思うよな?」
そうですけども!!
「仮に失敗して全滅しても運の尽きだ。
文句があるヤツは、作戦実行前に代案の1つも立てれなきゃダメだ。」
ワタシだって代案思いつきませんでしたけども!!
なにデリンさんの癖にまともな事言ってんですか!
酒飲んでる方がまともって変ですよアナタ!
変でいいから、また扉壊す勢いで開けて朝起こしに来てくださいよ……
音もなく扉が急に現れて、開いた。
「おいおい、死んじまったんだ無茶言うなよ。
戦場で気を抜いたアタシが悪かったんだ、ごめんなプレダール。
もやし好きのあいつのこと、頼んだぜ……」
「待って!デリンさんっ!!!」
起きた時、そこには誰もいませんでした……
あんな脳筋の夢を湿っぽく見るなんて、最悪の寝覚めですよ。
死んでからも無茶な仕事振ってくるなんて迷惑千万です。
ですが、わかりました。頼まれてやりますよ。
こんな脳筋共の巣窟で、どこまでできるかわかりませんが、やってみますよ!
デリンさん……




