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188.選んだメイド紹介


 自室に戻るなり、ロロが大きな執務机の椅子に座るように促した。

 言われた通りにすると3人のメイドが横一列に並んだ。

 リリが真面目な表情で口を開く。


 「では、エルフから自己紹介をしなさい。

  副皇帝様に失礼の無いように」


 ジュリカが嫌々そうに溜め息を露骨についた。

 リリがビシッと太ももを叩くと、さらに眉間にシワを寄せ腕組みしながら口を開いた。


 「儂はジュリカ=アルビーズじゃ。

  元・エルフ公国の第7王女である。

  先に言っておくが儂は人間が大嫌いじゃ。

  悪い事は言わん、他のエルフを選べ」


 透明感のある長い金髪の三編みをゆらしながら顔をそらす。

 アルビーズ……思った通りだ。

 すかさずリリが先程より強く太ももをはたく。


 「このような凡夫が、なぜ副皇帝なのじゃ。

  皇帝なら膨大な狂気のマナを纏うゆえ、まだ分かるがな……

  こんなのと夜を過ごすなら耳を落とした方がマシじゃ」


 かなり嫌われたものだが、マナの寵愛の無いボクは完全に凡人だ。

 リリは諦めた様子で次の人間に自己紹介を促した。

 おっとりした雰囲気のある垂れ目をパチパチさせ、唾を飲み込んでから口を開いた。


 「ウィス=ルメリテ……です。

  元・ルメリテ子爵の娘です。

  私は24なので他の方より年増です。

  精一杯尽くしますので、どうか末永くお願い致します」


 自分より若い女性が年増と言う事に違和感を感じる。

 編み込んだ黒髪とFカップ位の大きな胸が特徴的だ。

 次の大鬼人に目線を移すと、ロロが意外そうな表情で質問してきた。


 「さっきから聞いてるだけで、何も聞かないんですね?

  処女かどうかとか、胸のサイズとか皇帝様はお聞きになってましたけど」


 「いや、特にそういうのは気にしないよ。

  後で個別に聞きたい事があるから、その時にするさ。

  他の人には言いにくいって話もあるだろう?」


 ふーん……と納得しきれない表情だった。

 リリがボクと目線を合わせると、頷いて大鬼人に自己紹介を促した。

 赤い髪と2m40cm前後ある引き締まった大きな体が特徴的だ。

 片膝をついて目線を合わせず喋り始めた。


 「ガレナ=ドゲです。

  元・ザテカーン王国の第9王女です。

  強い方の子を作れる事を光栄に思う。

  今年18になりますので、たくさんお願いします!」


 喋り終えるとキレ長の目をボクに合わせてニコッと笑う。

 似ているデリンさんと違って可愛く笑うんだな。

 体が大きい分、胸がさらに大きく見えるのが困る。

 たくさんお願いされても何もする気は無いのだが……誘惑に負けそうだ。


 「では、先程も言った通り1人ずつと会話したい。

  ジュリカだけ残って他は隣の部屋で待っていて貰えるかな?」


 リリが片眉を上げて怪訝けげんそうにする。

 お言葉ですが、と置いて口を開いた。


 「この者とはまだ2人きりにさせるな、とセラススより申し付けられております。

  忠誠心がほとんどありませんし。

  どうしてもと仰るのなら、エルフの首輪に魔石を1つ追加します」


 よくわからないので了承した。

 ロロに首輪について聞くと魔法の出力を抑制するモノだと言う。

 魔石を追加すると魔法が使えなくなるらしい。

 ぶっぱなされて殺されては困るので、当然の処置と言えるだろう。

 ジュリカをしゃがませて卵くらいの大きさの魔石を首輪に追加した。


 リリが同席したいと言ってきたが、それでは意味が無い。

 4人を隣の部屋に移動させた。



 ジュリカはまだ不満そうに突っ立っている。

 椅子に座らせて気軽に会話したいのだが、それでも面接っぽい雰囲気になってしまう。

 諦めて質問を始めた。


 「アルビーズ、と言う事はメリアを知っているかな?

  元・第一王女らしいのだけど……」


 「なぜそのような耳折れ者の名を知っているのか疑問だが……

  確かにメリア叔母様とは血縁関係に当たる。

  それがどうかしたのか?」


 「ボクの元仲間なんだ。

  だから今の居場所に心当たりがあるなら教えて欲しい」


 カハハッと高らかに笑ったと思うと不敵な笑みを浮かべた。

 そして少し警戒心を強めた様子である。


 「誰かにそそのかされたと伝え聞いていたが、貴様であったか。

  人間の中でも下等そうなヤツの仲間だったとは。

  血縁関係である事を、さらに恥じたくなってきたわ」


 ボクはとっさに机をバンッと叩いた。

 ジュリカは悪びれる様子もない。


 「次にメリアを悪く言ったら、その耳を半分以下にしてやるぞ!

  彼女は今まで会った、どのエルフより優しい。

  例え王家を追放されたとしても、そんな事は微塵みじんも関係ない!」


 「ふんっ……なんじゃ、既にデキておったのか。

  それならば面倒になるな……

  メリア叔母様はエルフ公国の地下牢に入れられたはず。

  罪状は知らんが、よほどの事をされたのだろう」


 嫌な予感はしていたが、ボクの仲間達は不遇の立場にしかなってないのか?!

 副皇帝という立場があれば救い出せるだろうか?


 「それが知りたいが為に王家の血縁者である君を選んだに過ぎない。

  夜に呼ぶ事も絶対ないから安心してくれ」


 「みさおを立てると言うのか、おかしな人間だ。

  ここでは手当たり次第に孕ませるのが普通のようだったが……

  少しはお主を見直した。

  どうやって儂が王族だと見抜いたのかは知らんが、しばらくは逆らわずにいてやろう」


 他に聞きたい事もないので、他の人に代わるように伝えた。

 隣の部屋の扉を開くと、リリがすっ飛んで入ってきた。


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