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159.Aランカー審査


 「お主のマナ量はどうなっておるのじゃ!」

 「貴殿のマナ量はどうなっているんだ!」

 

 宿を取って部屋に入るなり、メリアとレイネスの2名から罵声が飛んだ。

 どうもへったくれもない。

 マナの寵愛のイカレたブーストとマナ貯蔵庫の3倍係数がおかしいだけだ。

 そういう意味では、ボクはかなり恵まれていたんだな。


 「メリアは何となく知ってたじゃないですか。

  前にも色々教えましたし……

  あれ以上話せる事はほとんど無いですよ?」


 「ほとんど、と言う事はまだ残っている証拠じゃ!

  儂は納得するまでお主と行動を全部共にするからな!」


 ありがたいような、邪魔くさいような……

 ボク自身が納得しきれてないのに、他人を納得させられる材料など無い。

 レイネスはもっと納得できない様子で声を荒げた。


 「私とて同じ気持ちだ!

  他人よりかなり多いと言われてきた私でさえ、マナ計測は600前後だった。

  その100倍とは納得できん!!!」


 「いや、ほら……あの……

  計測器が間違っているかもしれないし……」


 「いや、ガンサ殿の魔石の見立ては正しいと見ている。

  だからあの怪しげな計測器の結果も正しいに決まっている!!

  なにより、貴殿が納得していたではないか!!」


 さすがAランカー……観察力鋭いな。

 完全に状況証拠を揃えて問い詰められると何も言い返せない。

 なんだか犯罪者になったような気分だ。


 「レイネスさん、今メリアが言った通りの事です。

  2番目に長い付き合いのメリアですら分からない事を、新参のアナタに教えたら順序が変ですよ。

  伝えられる時が来たら、教えます。

  まだボクはBランカーだし権威も何もありませんからね、保身の為です」


 鬼の首を取ったかのようにレイネスはニヤリと笑った。


 「そう、そこだ!!

  さっさとAランカーになってしまえば良いのだ。

  そうすれば貴殿は私と対等になる。

  私が共に居ても、周囲はおかしく感じなくなるはずだ」


 なんという自分勝手な理論……

 でも、Aランクからはタグがミスリル製なのか薄紫色だ。

 それは少し欲しい。


 「そうは言ってもですね?

  達成した依頼がそんなに多くないんですよ。

  そんな簡単にAランカーって成れるんですか?」


 「ランクアップ審査すら知らんのか……」


 急に冷静になったレイネスが、やれやれと言わんばかりに額に手を当てて首を振っている。

 何かと忙しかったから調べる暇が無かったんだけど……

 少し怒り顔で、まくしたてる様に早口で喋りだした。


 「まず、審査料として金貨400枚。

  合格した際はギルドタグ発行料として金貨100枚の合計500枚かかる。

  これは貴殿は満たしているので障害にはならない。

 

  それから面接審査だ。

  Aランカーに挑戦しようと思った動機や持っているスキルについて聞かれる。

  気に入らないヤツを落とす為の口実みたいなものだが、問題ないだろう。

  貴殿は即日Bランカーに成れる程の精霊と契約しているのだ。


  次が素質審査だ。

  最初の審査でしたようなモノから少し実技的になる。

  Aランカーとの1対1で戦う模擬戦が追加されるのだ。

  プレダール殿100人いても勝てると言う技を使えば楽々突破できよう。


  最後が実戦審査だ。

  特定の依頼を達成する必要がある。

  正直、これが1番簡単なんだ。

  Aランカーからの推薦状があれば免除される。

  そう、私が付けてしまえば問題ないのだ!ニャハハハハ!


  さあ、明日にでも冒険者ギルドでAランカーの仲間入りだ!!」


 簡単に受験できないように大金を積ませる方式なのか。

 実技は若干心配だが、海淵の爺さんを呼べばその場で終わりそうな気もする。

 ……こんな簡単でいいのかAランカーは?

 いや、みんなのおかげでお金もあって、みんなのおかげで得たスキルなんだ。

 ボク1人では絶対に成れなかった。


 「Aランカー審査の日とかって決まってないんですか?」


 「そんなものは私がねじ込むから問題ない!!

  それに、シェイナー伯のお墨付きを持っているらしいじゃないか。

  この2つがあれば確実に実施されるだろう。

  各街のギルド長は基本的に長年のAランカー以上しか成れない役職だからな。

  担当不在などと言い訳はさせんよ」


 なんだこの全部お膳立てされたランクアップは……

 まぁ、成った方がレイネスに大きな顔されなくて済みそうだし利益の方が大きそうだ。

 詳しい事は合格した時に聞こう……


 大将が丸め込まれるなんて珍しい、とバーレンは笑っていた。

 なんだか納得しきれないまま夕食を食べて眠った。



 次の日、言われていた通りの手順で実施されたAランク試験はすんなり終わった。

 意外だったのが、新しく得たスキルの欄に海淵の帝王と書いた事を面接で聞かれ、出そうとしたら大声で止められた。


 『もう合格で良い、頼むから呼び出さないで欲しい』


 丁重に断られ、そのまま合格手続きになった。

 深海の姫君の一件が報告に上がっていて出せとは言えないのだろう。

 こんな楽ならさっさとなれば良かったかもしれないが、お金にゆとりが出たのもつい最近だ。

 丁度良い機会だったのだろう。


 そのままAランカーとしての特権の説明をされた。

 正直、この時間の方が長かった。


 ・一部危険な地域への出入り自由

 (蜜の森もこれに該当する)


 ・一部特権階級との面談予約の優先権


 ・ほとんどの国や領土へ自由に入れる権利


 ・瞬間移動装置の8割引

 (ただし本人含む5名まで。馬車は別料金で高額)


 ・殺人罪の基本的な免除

 (ただし大量虐殺などは処罰される。この為の面接らしい)


 ・紛失時の再発行は金貨1000枚するので丁重に扱う事

 (偽造防止に特殊な魔法が付与されている)


 これがあればエルフの国にも行けるじゃないか!

 凄い楽しみになってきた。

 レイネスに乗せられた結果だが、おかげで楽しみが増えた。


 その長い受講時間の間に出来上がった自分のタグを受け取った。

 剣とは少し違った紫色の煌めきが綺麗だ。

 大きくAと刻印され、裏に名前が記されている。



 冒険者ギルドのフロアに戻ると、レイネス以外は心配そうに待っていた。

 タグをチラつかせると自分が受かったかのように嬉しそうに喜んでくれた。

 ドヤ顔のレイネスが忠告しよう、と前置きして話し始めた。


 「これで貴殿もめでたくAランカーだ。

  その輝くミスリルのタグが他者の羨望の眼差しに足る様、一層の研鑽に努めて欲しい。

  言っておくが、かなり目立つからな?

  知らないヤツに声をかけられる回数が日に日に増えて厄介になるぞ」


 それはレイネスが美人だからじゃないかな……

 ボクには頼りになる良い仲間がもう5人もいる。

 これからもよろしく、と癖で頭を下げるとみんな爆笑していた。

 Aランクが似合う立ち振る舞いを気をつけないといけないな。


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