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132.魔法も万能ではない


 アンタークは今までの体付きから一回り大きな巨躯となっている。

 筋力強化ポーションでも飲ませたのだろうか?

 ヤバイ薬使った変身レベルの変わり果て様なんだけど……

 一時的に大鬼人になったかのようだ。


 このまま放置しては、せっかくダウンした弓兵を回復されてしまう。


 「ルティスとバーレンには悪いが、そのままどうにかしてくれ!

  ボクはあの変わり果てたアンタークをやる!」


 「おう!」

 「はい!」



 返事ができる程度の苦戦ならどうにかなるだろう。

 バジリスクの時は声をかけても返事がこない場面が何度かあった。

 後ろにメリアもいるし、もう少し無理をしても良い気がする。


 彼らを倒すだけなら、海淵の爺さんでもオヴリーネでも出せば良い。

 しかし、水気の無い砂漠や火山地帯を考えればボクも強くならなければいけない。

 もう2度と大切な仲間を失わない為に……



 アンタークはボクがまだ驚異ではないと見るや、弓兵に回復ポーションを使っている。

 装填済のライフルを走りながら構えて打ったが、見越したようにタイミングを合わせて粉を散布した。

 そよ風では完全に無効化させられないか……

 仲間救助の際にも気を抜かない、熟練の技がそこにはあった。


 それなら、打っても直接当てなければ良い。

 当てようとするフリだけで真っ直ぐに落ちたり逸れる魔弾を打てば、無効化はされないはず!


 ボクは集中する為にも走る速度をゆるめ、2発ずつ属性を変えて4発打った。

 アンタークはその都度、粉を蒔いて防御しようとしたが全て使い果たしたのか苦渋の表情をしている。


 

 アンタークは大きく豪華な盾を背中から取り出し、仲間を守るように立ち止まって構えている。

 カッコイイ!

 仲間を大事に想っている事が見てすぐわかる。

 それでも仲間の回復を信じて待ち、ボクにのみ視線を当てている。

 前衛特化もやってみたいな……なんて頭をかすめている場合じゃない!


 立ち止まっているなら完全に好機だ。

 水のボム弾を2発分しっかりチャージして盾めがけて連射し、銃を投げ捨てた。


 

 アンタークは目を見張ったと同時に覚悟を決めた表情で前へ出た。

 一発目をタイミングよく盾で薙ぎ払ったかと思うと、そのまま盾を投げ捨てる。

 そして大きな右手で二発目を掴んで爆発を耐えた。


 どうなってんだアレは……

 弾丸を掴む方もどうかしてるが、水の爆発耐えられるとか何かチートかよ!

 シビレたようにダラリと力なく下げている所を見るに、ダメージが無いわけではない様だが……


 

 何にしてもすぐさま斬りかからなければならない。

 アンタークはすぐさま左腕でバッグを漁って回復ポーションを取り出そうとしている!


 低い姿勢でダッシュしてアンタークの足に斬りかかる……

 フリをして起き上がりかけた弓兵の腹部にカタールを突き刺した。

 防御姿勢を取っていたアンタークはボクを睨みつつも笑って左手を振り上げた。


 「フハハ!

  さすがに降参するしかあるまい。

  仲間が全員やられてしまったし、さすがに6対1は分が悪すぎる。

  私も右手が辛いしな。

 

  この勝負、服部殿の勝ちだ!」



 大声で叫びながら膝をついてボクに頭を下げてきた。

 よかった……

 人間相手に攻撃するのは何故かスカッ! とするのだが、その気持ちに違和感があるのでなるべくやりたくなかった。

 ボクは殺人鬼の素質まであったのだろうか……嫌だな。

 指輪のせいだと思いたい。


 後ろを見るとルティスとバーレンの相手も両手を上げて降参していた。

 重傷者が出なくて助かった。

 観客から大きな拍手が送られてきた。

 本当に……勝ったようだ……

 まだ鼓動が抑えられないくらいバクバクしていて、なんだか変な気分だ。



 痛がっている目の前の弓兵に謝罪しようと近づくと、審判役の1人が回復魔法をかけていた。

 アンタークが立ちふさがり、左手で握手を求めてきた。


 「まだ右手が使い物にならないのでな、左手で申し訳ないが……

  貴殿にはさらなる策があったのだろう?

  負け惜しみではないが、さすがに戦力が足りない状態ではこの程度が関の山だった。

  もう1人いる完全な状態で戦ってみたかったよ。

  またいつか、再戦をお願いできるかな?」


 爽やかな笑顔で言われても、ボクはあまり対人戦をやりたくない。

 機会があればいずれ……と濁して握手した。

 彼の手は無骨で熱く、尊敬の念が自然と沸く。

 と同時に心のわだかまりのような何かが、フッと解消された清々しい気分になった。



 中央に戻って再度整列して礼をして、控え室まで戻る。

 担当執事のカービスが歓喜の表情で待っていた。


 「まさかフルPTではないと言え、あの聖騎士アンターク様に勝つとは!

  私の今までの非礼を詫びさせてください。

  申し訳ありませんでしたっ!」


 結果を出せば周囲は変わる。

 当たり前の事だけど、評価されるのは嬉しかった。

 脳筋集団に魔法を使って勝つのが何だか違和感あるけど、それもまた力には変わりないのか。

 カービスは頭を上げて言葉を続けた。


 「連戦になってしまうので、しばしの休憩があります。

  ここでお休みください。

  足りない物があれば補充もできますよ」


 さあ、何でも言ってくれ! という表情だが、頼む事がない。

 扉の外で誰かが入ってこないように見張りをお願いした。

 少し残念そうだったが、他に思い当たらない。


 メリアの表情は普段通りに戻っている。

 ルティスもバーレンも力を出し切った様子で満足そうだ。

 ……幼女ペアの不満が今にも爆発しそう。

 次の決勝で活躍してもらう予定だし、さっそく作戦会議を始めた。


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