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116.仲間の変化


 部屋に戻ると、少し心配そうな表情でみんな待っていた。

 プレダールはお菓子をパクパク食べて気楽そうだったが、メリアは貧乏ゆすりして特に心配そうだった。


 貸してもらった魔砲を見せ、特に何の問題もなかったと伝える。

 ボクの堂々とした態度に安心したのか、いつものような推測による罵倒は無かった。

 今まで弱気すぎたのだと反省する。


 「それで、結局団体戦に出場するのか……

  Aランカーと戦うなど予想すらしてなかったゆえ、心配でな。

  無論、作戦はあるのだろうな?!」


 「そうですよ大将!

  いくらなんでも俺らDランク以下じゃ歯が立たねぇよ!」


 メリアとバーレンは困惑を表に出してくれている。

 安心させる要素が一切ないんだけど、どうしよう……


 「2人共、みっともないですよ。

  船上の海龍だったり、どっかのヘンテコな魔像より強いんですかアイツらは。

  しかも基本的に殺し合うわけでもないのに不安に毒されすぎです」


 「プレダールさんの言う通りだと思います。

  アタシは御主人様について行きます。

  例え大鬼人の中、エルフの中だろうと!」


 プレダールとルティスは逆に腹が座りすぎだ……

 バランスが良いんだか悪いんだかわかんねーな。

 シャリアはよく分かっていない様子なので、頭を撫でてやると安心したようだった。


 ボクは一息ついて声を張って伝える。


 「全員もう少し落ち着け。

  未知の敵に常勝できるような天に愛された幸運の持ち主などいない!

  死ななければ良いだけだ、負けるのは悪い事ではない。

  1回や10回負けたから何だ!


  ルティスもバーレンも、プレダールに一生勝てないままでいいのか?!

  強い人の技を間近で見て盗む絶好のチャンスだぞ。

 

  メリアも他のPTの支援を見る良い機会じゃないか。

 

  プレダールは強いけど、それがあのリーダー達に確実に通用するだけの実力や技術があるのか?


  偉そうな事言ってるボクだって、通用しそうなのは精霊頼みだ。

  回復以外では使うつもりはないし指輪も使わない。

  魔砲を使って後方支援と指示、前線が不安なら前に出るオールラウンドとして戦いに望むつもりだ。


  何か提案や疑問があれば遠慮なく言ってくれ」


 一瞬の静寂の後、シャリアが入ってないよ? と寂しそうに言う。

 頭を撫でながら、しゃがんで目線を合わせる。


 「シャリアはボクらの秘密兵器だ。

  ユニコーンとバレたら角が取られたり削られたりするかもしれない。

  それは嫌だろう?」


 角をサッと両手で隠し、それは嫌! とむくれる。


 「だから今回は1番後ろでボクらを見守っていてくれ。

  それが1番大事な役なんだ。

  頼めるかい?」


 「わかった、シャリア見てる!

  怖くても逃げないよう頑張る!」


 聞き分けが良い子で助かる。

 頭を撫で、みんなに向き直ると複雑そうな顔をしていた。


 「ところで、お主は何かあったのか?

  急に人が変わった様に思えるぞ?

  まぁ、リーダーらしく振る舞えと何度も言っているだけに文句は言えんが……」


 「そうですねー、しれっと全員呼び捨てにしてますし。

  また怨嗟の指輪に操られているのかもしれませんよ?

  ……頭が低くて弱いよりは良いですけどね」


 「ようやく大将らしくなってきたな!」


 「御主人様らしくなってきました!

  アタシは嬉しいです!」


 異人種2名は変化にすぐ馴染めず、人間2名はもう受け止めている。

 この心の柔軟さが人間の良い所なのかもしれない。

 そう考えたらボクはリーダーとしての決心が付くのが遅すぎたな。

 苦笑いしながら、これからもよろしく頼む、と頭を下げた。


 「結局、頭が低いんだよなーウチの大将は!

  ブワッハッハッハ!」


 全員で笑ってしまった。

 笑い合える仲のまま進んでいきたい。



 ベルを慣らしてカービスを呼び、訓練所まで案内させる。

 もうすぐ夕食ですから最後に食堂へ案内致します、と付け加えられた。


 城内を案内されながら隣接した訓練所まで行くと、アンタークとレイネスのPTは個別で訓練していた。

 ボクらを見つけると急に訓練を辞め、今日はこの辺にしておこう、と片付け始めた。

 注意すべき対象として認識されているようだ。

 丁度日が沈んでいたし、偶然かもしれないけど。

 


 食堂は伯爵と同席するわけではなく数千人もいる兵士に混じった場所だった。

 食堂は4ヶ所あるので好きな所で構いませんよ、と全て案内された。

 伯爵と同席させられ緊張して喉を通しにくいご飯になるのでは……? と心配していたので助かった。

 4ヶ所どこも気楽に酒を飲んで騒いでいる兵士もいるし、近日戦う相手と見なして注意深く観察する兵士もいる。

 豪華な鎧の人もいれば、肌着で気楽に過ごす人もいる。

 これほど大勢の人に見られるなら、下手な戦い方はできないな。


 能力解析を付けていると視界が乱雑に動く文字で埋め尽くされて気分が悪い。

 食堂ではオフにしよう……

 


 食後は自由時間とし、気楽に過ごして欲しいと仲間に伝える。

 ボクは魔砲の練習をしたくてウズウズしていたので、射撃練習場に向かう事にした。

 全員落ち着かないと言うので一緒に向かう。


 ゾロゾロと6人で移動するのは目立つ。

 加えて何かの噂が広まっているのか、ボクを見て即座に敬礼する兵士ばかりだ。

 来たばかりの時はスルーされていたと思うんだが……


 

 射撃練習場にはレイネスのPTと思われる女性が2名いた。

 1人がスコープを持って遠くの的を確認しながら指示を出している。

 ピシッと全身が固定されたかのような美しい射撃姿勢。

 専門の人が魔砲を打つのを初めて見るボクは、食い入って見てしまった。


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