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100.砂漠の街 エルコト


 エルコトの街は、人間の他にネズミやトカゲの亜人間が2割ほど住んでいた。

 砂漠や岩石高地を縦断すれば街道を通って行くより早く港町に行けるので、その連絡や少ない物資の流通用に重宝されているそうだ。

 プレダールは何でも知っていて助かる。

 聞いた他のメンバーも感心していた。

 


 まず道具屋から覗いてみる。

 バジリスクがいるなら石化治療薬も売っているはずである。

 予想通り売っていたが、1つ金貨2枚もした。

 100万円で命が助かるなら安いものかもしれないが、簡単に手が出せる代物でもない。

 しかも気候の変化で劣化し易く、遠くまで持ち運ぶのはオススメしないと言われた。

 高品質な物の取り扱いは無く、そもそも他の領地まで持って行く事を想定していない。

 通常版を10コ作るくらいの手間や材料をかけて、ようやく高品質な物が1つできるらしい、と道具屋の主人は呆れて教えてくれた。


 時折街の近くまでバジリスクが来る事もあるので、怖がった一般人もお守り代わりに買っていくそうだ。

 みんな結構お金持ちなのではなかろうか。



 次に冒険者ギルドに顔を出す。

 バジリスク討伐で報酬が貰えるなら一石二鳥というものだ。

 Bランク掲示板に簡易な絵がついたバジリスクの討伐依頼があった。

 常時貼られているのか少し色あせているが参考になるので助かる。

 風貌ふうぼうはありがちなトカゲ形だ。


 『体長が3~5mの成獣のみ、討伐の証拠として頭に生えている長いトサカを取ってくるように』


 と注意書きがある。1匹討伐につき金貨4枚。

 一見破格に見えるが、石化治療薬が金貨2枚な事を考えると2名以上石化したら赤字だ。



 目玉や鱗は好きにして良いのか受付に行って確認する。

 数を減らす事が目的なので持ち帰った素材は好きに売却して良いそうである。

 昔は尻尾を持って行ったらしいが、尻尾を切って逃げて来るだけの者が後を絶たず、切り替えたと受付嬢は苦笑いしていた。

 ずる賢い人間の考えそうな事だ、とプレダールもメリアも頷いている。

 ひどい言われようだが、楽な方に流れるものなので言い返せない。


 Bランクのタグを見せると少し驚いた様子で受注させてくれた。

 リスクが高く素材の持ち帰りも面倒なので、大概は稼ぎ目的のCランクが大人数で受注すると言う。

 普通の馬車では砂に埋まるので、砂船をレンタルした方が良いとアドバイスもくれた。

 そっけない態度のどこかのギルド職員とは雲泥の差である。


 

 砂船のレンタル代金は1日銀貨4枚で、保証金として金貨4枚を預ける決まりだった。

 出かけたまま石化して帰ってこない冒険者もいるらしく、砂船を探して持って帰る労力や破壊されてしまった時のお金だそうだ。

 無事に返却すれば金貨4枚は返ってくると言うので、そこは安心だ。



 宿を取って馬車を預け、部屋で作戦会議をする。


 「砂船という物に乗った事がある人はいますか?」


 想定通りではあるが誰も手を挙げない。

 となると船頭せんどうのような人も雇わなければ。

 素人が動かして自由自在に操作できるとは思えない。


 「では今日の情報を聞いた中で、不安や不備があるなら教えて欲しい」


 プレダールがサッと手を上げる。


 「甘々な服部さんの事ですから、石化した前衛の事を考えて治療薬を多めに持っていくのだとは思っています。

  下手したらその辺にいる石化した人を助けるかも、くらいまでは想定しています。

  ですが、全員は助けられませんからね?

  それだけは先に言わせてください」


 冷静な意見で何も言い返せない。

 そこまで考えていなかったので、さらに多めに持って行こうと決心した。

 それでも砂船に乗る人数も考えたら、知らない人を助ける場合はリーダーのような人を厳選して行うべきだろう。

 持ち帰るバシリスクの素材の事を考えれば、そこまで大勢乗せる事はできない。


 プレダールが先に全部言ってしまったようで、メリアは少し不満そうにしていた。

 バーレンも似たような境遇だけに、なるべく助けたいのだろう。

 発言内容を聞いて少し安心した様子だった。


 少し間を置いて全員に意見が無い事を確認し、プレダールの発言は続いた。


 「いつ出発と言わない様子なので、朝食後の出発予定なのでしょうか?

  バジリスクは変温動物です。

  太陽が上がる前の夜中から早朝にかけての時間が最も活動が穏やかで相手にしやすい、と本に書かれていました。

  その分ブレスの範囲は広くなるそうですが、足場の悪い土地で機敏に動き回る相手より仕留めやすいのではないかと」


 さすが上級文官殿だ。

 生態や地形を想定して勝率を上げる策を出してくれた。

 反対する者は誰もいなかった。


 今日はもう遅いので、普通に寝る。

 明日の日中に砂船の手配と砂よけのゴーグルなどの雑貨の準備。

 早めに寝て明後日の夜中に出発すると伝えた。



 石化治療薬を買いに行くと、歳を取った白髪の店主がニヤけながら選ばせてくれると言う。

 注意深く6x6マスに整理された箱を見ると、いくつか劣化と表示されている物もある。

 その代わりなのか良品質と表示されている物もあるので、良品質5本と通常の物を合わせて20本購入した。


 「良いのばっかり選ぶじゃねーか。

  本当は素人じゃねーなニーチャン?」


 少し残念そうに言っているが、劣化品を買わされたらたまったものではない。

 実際に使う時になって劣化していたでは生死に関わるのだが、人間というのは浅ましいものだとガッカリした。


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