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鈴木さんち  作者: 夜乃桜
8/10

チート

 泉が杏奈に話しかける。

「杏奈様、どんな問題解いてるの?」

「泉、うるさか!勉強中に話しかけるな!」

 杏奈は、嫌そうな目で泉を見た。


 泉は杏奈に近寄り、身体を傾け杏奈の問題を覗き込んだ。

「これ?大学入試?」

 泉は、不思議そうに杏奈に聞いた。


「知らんったい。父ちゃんが作った問題やりよるだけやけん。」

 杏奈は、ぶっきらぼうに答える。

「そう言えば勘八くんが、杏奈はIQが高いから、小1〜大学受験問題まで全部やるぞって言ってたっけ。」

 杏がフォローを入れる。


「杏奈様ー!凄ーい!チートじゃないの!!」

 泉が杏奈を褒めちぎる。


「杏ー、やっぱり杏奈様は勘八くん似ね。小2でここまで解けるなんて将来有望じゃないの。私も大学受験の時頑張っちゃったから、ギリギリ分かるけど。でも、杏奈様のペースでは解けないわ。」

 泉が感心して、目をキラキラさせながら杏に話す。

「うん。杏奈の頭の良さは勘八くんの遺伝だと思う。私は、高校辞めてモンモン産んだ後に大検取ったんだけど、さっぱりわからないのよ。たまに簡単そうな問題があっても引っ掛け問題だったり。あはは。」

 杏は、少し寂しそうに笑う。


「ごめん…。」

 泉は、心配そうに杏を見た。

「そういうつもりじゃないの。」

 杏は、慌てる。


「杏は、高校の同級生とは会うことある?」

 寂しそうな顔の正体が気になって、泉はちょっと突っ込んで聞いてみた。

「高校どころか、中学の頃の友達も小学校の頃の友達とも滅多に会わないわ。

 あれだけ仲良くして、公園を走り回ったり、プリクラ撮ったり、ドラッグストアで化粧品買ってみんなでお化粧してみたり、毎日のように遊んでたんだけどね。

 結婚して、子供まで産んじゃうと途端に誰も話してくれなくなった。

 友情なんて、あっけないものよ。」

 杏は、泉に気を使わせないようにニコニコしながら話す。

 その姿が痛々しくて、泉は泣き出してしまった。


「うわーん。

 ごめんね。杏ー。

 私が変なこと言ったばかりに。」

「いいのよ。泉。

 気にしないで。」

 また寂しそうな顔をして杏が返事をする。


「ううん。私が悪いの。

 土下座するわ!」

「え?な…、泉!」

「私、デブだけど、デブの土下座を受け入れて!!」

「ちょ…、待って!」

 泉が勢いよく立ち上がると椅子がガガーっと凄い音を立てて倒れた。


「泉!いっきまーす!」

 杏が静止するのもつかの間、泉が床に額を付け土下座した。

 杏奈まで一緒になって必死に止めたのに。


 デブにとって、杏と杏奈の力など造作もなかった。


 泉は、土下座の体制のまま顔だけ上げ杏の目ををしっかり見て言った。

「私!!杏と一生友達でいる!

 杏が私を嫌いになっても私は勝手に友達だと思ってる!

 この気持ちずっと変わらないから!」

「泉…。」

 杏はあっけにとられた。


 泉は、必死に続ける。

「私、杏のこと好きよ。

 杏を初めて見た時、乙女ゲームの主人公そっくりで、ここはゲームの中の世界かとぽーっとなって声掛けた。

 杏は、そんなヲタクのデブにも優しくしてくれた。

 この子。マジ天使!

 憧れの乙女ゲームの主人公と話せるなんて、この奇跡!一生忘れないって思ったわ。

 最初はただそれだけだったけど、私みたいな巨体のデブと友達になってくれて、杏のこと知るたびに乙女ゲームの主人公そっくりってだけじゃない。

 それ以外の杏の魅力がわかったの。


 私、裏切らないから!

 血判状でもなんでも書くから!!

 子供産んだとか今までの生活が変わっただけで裏切る奴ら、女として大嫌い!!

 私をこれからも杏の友達でいさせてください!」


「…。」

 ポロポロと杏の頰を熱いものが伝った。


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