5.マグナ暴走
「本来なら、彼女の意志で協力いただき本日を迎えたかったのですが、仕方がありません。」
薄暗い室内には"同志"たちが集まっています。今日の決行に向け、我々は準備を進めてきました。
「邪法に手を染める者たちに、裁きの鉄槌を下す時が来ました。」
モンスターは邪悪な存在。その存在も、そしてそれを利用することもまた邪悪……。
「"魔法"こそが、神の与えたもうた人の力」
そんな"人の力"の担い手を蔑ろにして良いはずがありません。
「我々、"魔法使い"にはそれを成す使命があるのです。さぁ、始めましょう、世界を正しい姿に導くという使命を!!」
私は杖を手に、高々と掲げます。
「正しき世界のために!」
「「「「正しき世界のために!」」」」
私の声に応え全員が唱和し、それぞれの作戦に赴きます。明日からは新しい世界になるのです……。
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ガタンッ!
「痛っ」
寝ぼけて操作パネルに頭をぶつけたらしい……。あれ? なんで僕はマグナのコックピットで居眠りをしていたんだ?
「あっ、そうか」
昼間に見たルクト君の操縦とマグナの機動。アレに触発され、解散後も格納庫でマグナの調整をしているうちに、どうやら寝てしまったらしい。
半分寝ぼけた状態では、能率も上がらないな。今日のところは宿泊棟で休もう。そして明日改めて一から設定の見直しをしよう。
ガタガタッ
「物音?」
先ほどは、僕が操作パネルに頭をぶつけた音かと思っていたが、マグナの外から物音がする。
操作パネルの電源を入れ、外の景色をコックピット内に表示する。周りの壁には、薄暗い格納庫内部の様子が映し出される。景色が分かるのは、窓から差し込む月明かりがあるおかげだ。
「あれは……、侵入者か?」
そんな薄暗い格納庫内に人影が数名。
『どういうことだ、予定より多いぞ。』
『どうせモンスターは2体しか居ないんだ、奥の2体でいいだろう。』
マグナの優れた集音機能が、小声で話す男たちの声を拾ってくれる。何かをしようとしている?
僕のマグナからみて反対側。格納庫の奥には、ベネの町常駐部隊のマグナと、街道警備訓練で後方から追ってきていた正規部隊のマグナの2機が並んでいる。
男たちは何かを担ぎながら、2機のマグナへと近づいていく。担がれた荷物はたまに動いている。まさかモンスターなのか?
こんな場所へモンスターを持ち込むなど、良からぬ企みがあるとしか考えられない。僕は座席の下に手をいれ、手探りでそこにある荷物を取り出す。非常用の近接装備。僕が以前使用していた剣と盾だ。それを両手に持ち、静かにマグナのコックピットから抜け出す。
男たちは、マグナ横のタラップを上り、コックピットへと向かっている。
僕は格納庫に詰まれた木箱の1つから砲弾を取り出す。装備として大砲を搭載しているマグナも存在するため、備品としておいてあるものだ。
「そこまでだ侵入者ども! 思念動力!!」
物陰から飛び出した僕は、男たちに警告するのと同時に天井に向けて念動力で砲弾を打ち上げた。僕の狙い通りに、砲弾は天井に接触し爆発。屋根を一部破壊しつつ盛大な破壊音を撒き散らした。これで格納庫での異常に誰かが気づくはず。
「一人だ! 俺が足止めする!! お前たちは続けろ!!」
二人の男がタラップから飛び降り、僕の方へ向かってくる。残り二人はそのままコックピットで何かをしている。
「たった一人で何ができる! 火炎放射」
男の持つ杖から、幻想の炎が吐き出される。この魔力! マグダイム君の魔法とも引けを取らない! 僕は転がるように受身をとりながら炎を回避した。
「衝撃波動!」
「ぐぅっ!」
もう一人の男が放った衝撃波を、僕は盾で受け止めた。しかし、思った以上の威力に、僕はわずかに後退させられた。二人ともかなりの使い手だ。
その時、格納庫内に衝突音が響いた。大きな金属が何か衝突したような……。良く見れば、マグナが仰け反り背後の壁に頭をぶつけていた。勢い良く頭を戻したマグナは、全身から怪しい赤黒い光を発している。
『ヴァアアアアァァァァァァァァァ!!!』
マグナが吼える。発声器官など無いはずのマグナが奇声を上げている。そしてマグナはあたり構わず攻撃を始めた。続けて、2機目のマグナも暴れ始めた。
「な、なにが……、」
「ここは完了だ、本隊へ合流するぞ!」
マグナの暴走を目にした僕が呆気にとられている間に、男たちは逃げていった。本来なら追うべきところだが、今は暴走マグナが優先だ。
僕は急いで自身のマグナに搭乗し即起動。コックピット内壁に外の様子が映ったと同時に、暴走マグナが切りかかってきた。
「う、うわぁぁぁぁ!!!」
咄嗟に盾で受け止めるが、そのまま押し込まれ、格納庫の壁にぶち当たる。凄まじい衝撃。
「ぐっ!」
無軌道に振り回される両手に打ち据えられ、僕のマグナよりも先に背後の壁が限界を超えた。背後の壁が崩落し、僕のマグナは外へと転がり出た。視界の隅でかすかに捉えた景色には、もう1機の暴走マグナがルクト君のマグナを解体する様が見えた……。
急いでマグナを起き上がらせる。格納庫の屋根からは火の手が上がりつつある。壁の穴から、暴走マグナが飛び出し、その勢いで僕のマグナへと飛び掛ってきた。
「こぉのおぉぉ!」
落下に併せて剣を突き出す。剣は胴体に突き刺さり、そのまま貫く。しかし敵は止まらない。そのまま腕を振り下ろし、僕のマグナに激しい衝撃が走る。二度、三度、四度、めちゃくちゃに振り下ろされる腕は、僕のマグナの頭部を打ち据える。
「くっそっ!!」
盾に力を集め、剣を引き抜きながらシールドバッシュを放つ。暴走マグナが仰け反った状態で後ずさる、が、そのままバク転して手足を地面につけた後、再び突進してきた。
二本の腕をむちゃくちゃに振り回し、こちらを攻撃してくる。理性があるとは思えない、あまりにもがむしゃらな攻撃だ。まるでモンスターと戦っているような──
「モンスター!?」
先ほどの男たちはモンスターを連れていた……。
「モンスターがマグナを操作している!?」
そんなことが起こりうるのか。だが、今はその謎を追う余裕は無いようだ。敵の攻撃は激しさを増している。だんだんと腕のリーチが広がっているように感じる。
「間接部が伸びてきているのか!」
あまりに激しく振り回したために、間接部の魔核が延伸してしまったようだ。
盾と剣で鞭のような腕の嵐を受け止めている最中、格納庫内から暴走マグナがもう1機現れた。今でも精一杯なのに、2機の相手は──
『ウボアァァァァァァァァ──ごばっ』
格納庫から出た暴走マグナが吼えた瞬間、横合いから多数の閃光が集まり、その頭部を吹き飛ばした。いつのまにか、全身が黒い外殻に覆われた人物が、中空に浮かんでいた。
「あ、あなたは!!──」
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格納庫から火の手が上がっている。さらに格納庫の外で戦闘が行われているようだ。
望遠で確認すると、レイヴのマグナがマグナサイズの怪物と戦闘中だ。
「というか、あれは敵もマグナっぽいなぁ。」
だいぶ姿が変わっているけど。
さらに格納庫内から怪物が1体出てくる。あれもマグナか……。
「おれのマグナは無事だろうなああ!!」
視界に映るメニューから、機能を選択。
「攻勢手甲! 無幻残影!」
両手に光の拳が宿り、それを模写したように、光の拳が周囲に数十も出現する。
狙うは頭部!
おれの攻撃に併せ、周囲の拳もインパクトの瞬間に向けて収束していく。
「攻勢手甲・重撃ィィ!!」
『ウボアァァァァァァァァ──ごばっ』
おれの右手が捉えたマグナ頭部がはじけ飛ぶ。明らかに状態のおかしいマグナ。頭部を飛ばしたが、まだ赤黒い光は消えていない。つまりまだ生きている。ならば連続でいくぜ!!
「あ、あなたは!!──」
「制限解放」
レイヴの声が残響を残しながら緩やかに変化する。周囲の景色も音も、全てがスローになる。
「攻勢手甲 無幻残影」
再び両手に光を灯し、今度は全身の分身を3体生成する。そのまま4人のおれでマグナを乱れ打つ!
一撃ごとにボディが拉げ、一撃ごとに装甲が剥がれ、一撃ごとに魔核の接続が破断していく。
分身体のエネルギーが消えたころ、マグナはただの金属と魔核の山に変わっていた。
「怪人ソルドレッドさん!!」
「いや怪人じゃねぇし!!」
「ちくしょう」
おれは小声で呟いた。おれのマグナが……。せっかくコースケさんが造ってくれたのに……。おれは自分のマグナがバラバラに解体されているのを目の当たりにし、絶望に膝を着かないようにするので精一杯だった。なにもここまで徹底的に解体しなくてもいいじゃないか。恨みでもあるのか? これが元マグナといわれても信じられないレベルだ……。
格納庫屋根の火事は貯水槽から水をぶちまけて消火したが、すでに破壊されてしまったおれのマグナは、火事を消したって戻ってこない……。
「あの、ソルドレッドさん……、」
「あぁ?」
背後から急に声を掛けられ、思いのほかガラの悪い感じで答えてしまった。振り返り視界に入ったレイヴの顔は少々怯えて見えた。いかんいかん。冷静になれ。
その時、遠くから響く重低音。これは……、
「爆発……?」
おれは格納庫から飛び出し、周囲の空を見上げる。街の中心部方面からも火の手が上がっているようだ。
「あれは……。」
「おそらく、領主館が攻撃されているかと……、マグナを暴走させた男たち、別働部隊が居るような口ぶりだったので……。」
「それを早く言ってくれ!」
レイヴの「言おうと思っていたのに……」という呟きを後目に、おれは両足のフィールド発生器を一気に吹かして浮上、空中を滑空するように町の中心部へと向けて飛翔した。
スペックシート:ルクト・コープ
氏名:ルクト・コープ(ソルドレッド)
性別:男
年齢:17
タイプ:中近距離戦
装備:
・PEバッテリー
高性能なエネルギー蓄積装置。装置内部に陽電子化した状態でエネルギーを保持するため、小型で超高容量。
無線給電によりエネルギー量は自然回復する。
・義手義足
チタン合金による骨格、人工筋繊維による作動、強化繊維ベースの強靭な人工皮膚によって構築されている。
【思念力】という名の新物理力を発生させる装置が搭載されており、それにより飛行や衝撃波の発生が可能。
・パワードアーマー4
チタン合金外骨格、内部に人工筋繊維によるパワーアシストシステムを搭載した全身鎧。
頭部もフルフェイスでカバーするため、外からは顔が見えない(中からは各種センサで外の様子がわかる)
全身の各部位に簡易式フィールド発生器を搭載し、そこから放出したウィラクトにより残像のような現象を発生させる。
艶消し黒でカラーリングされている。
・拘束環×8
思念力拡散効果のある輪っか。通常は折りたたまれており、使用時は展開し、対象の身体に輪っか
を取り付ける。取り付け部位から思念力が流出し、魔力袋から力を捻出できなくなる。
一般人の場合、どこかに1つ取り付けられるだけで魔法もしくは戦技兵器の使用は不可能になる。効果は高いがそれ
ほどの強度は無いため、破損には注意。
6本はアーマーの腰部に取り付けられているが、2本は両腕義手内に格納されている。義手内の2本は、手のひら
からの射出展開に対応しており、対象の身体に手で触れた状態から装着を実施できる。
・麻の上下
住民がよく着ている一般的な服装。
諸元:
・PEバッテリー
容量:3000kWh、最大出力:500kW、最大蓄積能力:300kW
・フィールド発生器×4(両手両足の義手)
最大出力:72kW(推力:1600N)(4基合計)
技能:
・飛行
・迫撃掌
ウィラクトによる衝撃波。近距離用であるため、射程は数十cm。
・束撃弾
ウィラクトによる衝撃波。高収束による遠距離用。射程は数m。
スラストタイプは距離で威力が減衰するため、攻撃力は迫撃掌の方が高い。
・速射束撃
連射式の束撃弾。義手内部のフィールド発生器を改造し、圧縮器を並列2層としたことで可能となった。
・攻勢手甲
ウィラクトで手足のアーマーを強化し、攻撃力を上げる。射程は手足の届く範囲。
威力は迫撃掌や束撃弾に及ばないが、一旦起動すると数分間は効果が持続する。
・自壊迫撃
フィールド発生器の圧縮器内圧を限界まで引き上げ、威力を増した迫撃掌。
収束することができないため、接近して放つ必要がある。粒子圧縮器が過重に耐えられず
1回で破損する。威力は迫撃掌の数十倍。
・思考攪乱
ディール粒子かく乱により思考混乱。一時的な全身麻痺を起こす
相手の頭部付近に直接触れる必要がある。
・思考攪乱改
思考領域の一部に自立稼働プログラムを埋め込む。そのプログラムは継続的に思考攪乱を発生させ、全身麻痺を誘発する。
従来の思考攪乱では効果の薄い相手への対策として考案したシステム。
使用には相手の頭部付近に直接触れる必要がある。
・拒絶障壁
思念波を球状に展開し、防御用の障壁を生成する。物理的攻撃や思念力攻撃を防ぐことができる。
・制限解放
各種リミッターの解除(飛行機能、パワーアシスト機能など)と、思考加速を用いることで、稼働速度域を数段上げることができる。
使用時間はシステム上の制限は存在しないが、PEバッテリーの消耗や生体部分への負担を考えると3分程度が最適。
・無幻残影
全身の簡易式フィールド発生器から放出されるウィラクトで、自身の残像体を発生させる。
体の一部だけ、もしくは全身の残像を発生させることができる。
残像体はウィラクトの塊であるため、攻撃として使用することが可能。ただし攻撃すると消滅する。
・攻勢手甲・重撃
攻勢手甲による攻撃に無幻残影の分身体による攻撃を積層し、
お互いの効果を増幅させた攻撃。それぞれ単発で行った場合の攻撃に比べ数倍の威力がある。
・自壊迫撃・重撃
自壊迫撃による攻撃に無幻残影の分身体による攻撃を積層し、
お互いの効果を増幅させた攻撃。それぞれ単発で行った場合の攻撃に比べ数倍の威力がある。




