4.四魔王
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上空を旋回していた巨鳥は、僅かに首を回しこちらを視線に捉える。
【>> Hrasvelgr】
|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》にマーカーと共に名称らしき文字列が表示される。
一瞬俺の思考にノイズのように情報が走る。
「フレースヴェルグ……?」
フレースヴェルグが角度を変え、俺に向けて急降下してくる。
──さぁ、抗ってみせよ
「制限解放!!」
視界が白黒濃淡に変化し、世界はスローになる。
だが、その中に在っても、その猛禽の速度は異常だった。
レインを抱き寄せ、体を捩じるように回避。
奴の直撃は避けても、その後に襲い来る暴風に煽られる。
開けた空の上では完全に奴の独壇場だ。少しでも障害物がある地上へ……、
俺とレインは路地裏を選んで降下する。
「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」
「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」
「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」「みつけた」
先ほどまで誰も居なかった路地裏のあちこちから人々があふれ出す。
「まて」「つかまえろ」「足をもて」「にがすな」「手をもて」「飛ばせるな」
我先を競い合うように住民たちが俺たちに殺到してくる。
「コースケ、やはり地上は……っ!」
「だ、だめだっ」
俺とレインは再び浮上する。
「っ!」
待っていたかのようにフレースヴェルグが突っ込んでくる。衝撃と暴風で吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた先、衝突直前にその屋根を蹴り、空中で体勢を直す。
「やるしかないかっ!」
俺は攻勢手甲を起動、同時に無幻残影で多数の拳を生成、周囲に無数の攻勢手甲を生み出す。
レインも遠隔駆動多薬室砲4基を展開する。
「迎え撃つ!!」
突っ込んでくるフレースヴェルグに向け、攻勢手甲の分体を飛ばす。それを追いかけるように遠隔駆動多薬室砲4基も飛翔する。
キルェェェェェェ!!
俺たちの攻撃に呼応するかのように、フレースヴェルグの翼から羽が射出される。
多数の攻勢手甲と多数の羽が衝突し、対消滅のように消えていく。
そのぶつかり合いの中を強引に突破し、フレースヴェルグは尚も突撃してくる。
「ごめん!」
俺はレインを突き飛ばし、奴の突撃を正面から迎え撃つ。
衝突の激しい衝撃!
「ぐぁぁぁぁっ!!」
俺は後方へと盛大に吹き飛ばされる。と同時に|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》に損傷警告が並ぶ。
右肩のアーマーがもげ、肩が抉れている。
キィルゥゥゥゥェェェェェ!!!
通過したフレースヴェルグは上昇し、緩やかに方向転換している。その翼には僅かだが損傷が見える。俺の攻勢手甲も多少は効果があったらしい。
再び奴はこちらを真正面に捉え、落下による加速を用いつつ急速接近してくる。
「コースケ!!」
レインが再び遠隔駆動多薬室砲を展開し、一斉に射撃する。
直後、奴は急激に軌道を変え、その全てを回避する。
やはり、ヨルムンガルドに比べるとかなり防御力は低そうだ。普通の攻勢手甲でも損傷を与えられたくらいだしな……。
だが、速すぎる。まさしく、『当たらなければ、どうということはない。』を体現しているな。
奴は旋回しつつ、俺たちに向けて羽を発射してくる。
大量の羽が殺到する。
速射束撃でそれらを撃ち落す。レインも巨大破砕槌を振り回して叩き落としている。
そこへフレースヴェルグが一瞬の隙を突き、突撃してくる。
「うぐあぁぁっ!!!」
「あぐぅっ!!」
俺とレインは奴の体当たりで打ち上げられ、その後に襲う暴風で吹き飛ばされる。
「くっ、まだか……!」
脚のフィールド発生器を一瞬吹かし、空中で制動をかける。レインも体勢を立て直している。
奴はまた、空高くへと上昇している。
俺は奴の移動先へと速射束撃を掃射する。
キィィルゥゥゥゥ!!
奴は苛立つような声を上げながら、速射束撃を避けていく。
俺は執拗に奴の移動先へと先置きするように速射束撃を撃ちこんでいく。
クルゥィィイィィィィ!!!
怒り心頭といった様子で、速射束撃をものともせず突っ込んでくる。
「オラァァァッ!」
再び交錯する。そして俺は盛大に吹き飛ぶ。
「コースケ!!」
「だ、大丈夫だ!」
だいぶダメージは累積しているが、まだ何とか耐えられる……、そろそろ効果が出てくるはずだが……。
再度フレースヴェルグの体当たりに、俺はまた吹き飛ぶ。
「ぐぁっ!」
俺はついに背の高い尖塔らしき建物の屋根に衝突した。
「コースケ大丈夫ですか!!」
レインもそこへと着地する。
「あ、ああ、大丈夫だ……、やっと効果が見えてきたな。」
「え?」
レインは焦って奴を確認する。
キィ、キィルゥウゥ……、
奴の動きは明らかに鈍っている。上手く飛べないことに戸惑っているようだ。
俺は腰のアタッチメントから手のひらサイズの装置を取り外し、手のひらで広げて見せる。
それは円環状に広がり、わずかに青い光を放っている。
「拘束環、思念力を流出させる拘束具だ。まさか5つも着けないと効果が出ないとは思わなかったけどね……。」
俺は立ち上がり、無幻残影で多数の分身体を発生させる。
「さて、散々滅多打ちにしてくれたからな。」
俺は残影たちを引き連れ、浮上、少々ふらついているフレースヴェルグに向けて飛翔する。
キィルゥゥゥゥ!!
俺の接近に対し、奴が羽を飛ばして牽制してくる。だが、こと、ここに及んでそれは悪手だ。羽根の数が減りすぎだ。更に機動性を落す結果になっている。
俺は分身体を使わず、接近する羽を回避行動さけでやり過ごす。一部が装甲を削り、多少内部へとダメージが入るが気にしない。
「堕ちろ!!」
右手のフィールド発生器が甲高い駆動音を立て、強力な思念力の波動を迸らせる。
それに呼応し、俺に随伴してきた分身体たちが収束していく。
「自壊迫撃・重撃!!!」
フレースヴェルグの胴体部に殺到するエネルギーの塊。それは奴の脆い外殻を容易に突破し、内部構造を大いに破壊した。
ゴプァァァァッ!!
これまでの鳴き声とは明らかに異なる奇妙な音を立てながら、フレースヴェルグが王都外壁の外へと墜落していく。
戦いながら、いつの間にか王都の外れまで来てしまったらしい……。
──まだ終わらぬよ
「あ、あれは……!」
奴が落下していく先。丘陵地の先に白い巨人が立っていた。
以前、廃墟や緩衝地帯で遭遇したモンスターだ。だが、大きく違う点がある。
「なんて数だ……。」
丘の向こうからぞろぞろと白い巨人が姿を現す。見渡す限り、全ての方向に巨人が居る。その姿は、まるで王都を包囲するかのようだ……。
アォォォォォォォン……、
彼方から遠吠えが響く。
巨人たちの合間を縫い、一頭の白い狼が駆けてくる。だが、縮尺がおかしい……。
あの巨人どもは40m近くあったはずだ。その狼は白い巨人の腰ほどの高さがある。つまり体高が20mはある!?
【>> Fenrir】
再び|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》にマーカーが現れる。
「フェンリル……。」
ゴガォォォォォォ!!!
さらに空から更に空を揺るがすような咆哮が響く。
「あ、あれは!!」
レインが驚嘆の声を出す。
真紅の鱗に覆われた大きなトカゲ、いや、あれはドラゴンか……。
フレースヴェルグ以上の巨体が、ゆったりと羽ばたきながら降下してくる。
【>> Lindwurm】
「リンドヴルムか……。」
以前、歴史の授業で聞いた四魔王。
ヨルムンガルド
フェンリル
フレースヴェルグ
リンドヴルム
「魔王三体か、大盤振る舞いだな……。」




