9.包囲殲滅
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雲一つ無い晴天の丘陵地を、マグナ4機と80名程の歩兵が進む。朝9時にヴァルデ砦を出発し、現在は昼過ぎに差し掛かろうかという時間だ。
今回はヴァルデ砦から徒歩で行軍している。バジスでの移動であれば既に目的地に着いていただろうが、この規模の部隊は載せられないのだから仕方ない。ちなみに、俺とレインはたった2名の飛行ユニットとして上空から索敵しつつ随伴している。
『そろそろ廃墟遺跡に差し掛かるはずよ。索敵を厳に、お願いね。』
エリーゼから伝心魔法が届く。行軍する部隊の両翼に展開していた俺とレインは目線を合わせる。軽く頷くとレインは空に波があるかのように乗り上げ上昇していく。
俺も前側に出している右足のフィールド発生器を吹かし、空気に乗り上げるように上昇する。
更に高い位置から周囲を見渡す。ここも丘陵地であるため、起伏に富んだ地平はあまり見渡しが良くない。敵は40m程の身長があるが、ちょっとした窪地にでも潜り込まれたら見失ってしまう。
「うーん、見当たらないなぁ──、」
『コースケ、』
俺が独り言をつぶやいているところに、レインの緊張した念話が届く。
『どうした?』
『いました。』
俺は空中を切り裂くようにエッジを刻みながら旋回、レインの元へと移動する。
レインの示す先、そこには確かにあの白い巨人の姿があった。
「クルゥウゥゥ……、」
白い巨人は、窪地に隠れるように伏せ、僅かに声を漏らしている。あれは……、もしかして寝ているのか?
『敵は硬い外殻と高い再生能力を持っています。包囲して最大火力で一気に殲滅します!』
エリーゼが伝心で部隊全体へ指示を飛ばす。
マグナ4機と歩兵が白い巨人を取り囲むように展開していく。巨人は相変わらず伏せたままだ。俺とレインは少し離れた位置の上空から巨人を監視している。
部隊が巨人周囲へ展開される。俺も新造したバックパックのガンアームを稼働させ、多段式魔導加速銃2丁を両脇に抱えるように構え、巨人に照準を合わせる。レインも同じように多段式魔導加速銃を構えている。
──視線。
伏せていたはずの頭部がこちらを向き、その仄暗い眼窩がこちらを捉えている。
「見っ──、」
『攻撃開始ィィィっ!!』
両脇のトリガーを引く。多重の轟音が響き、銃弾が巨人に向けて飛翔する。
2丁の多段式魔導加速銃を回転させてコッキングする。即座に第二射。
俺とレインは多段式魔導加速銃を連発、周囲のマグナからも思念力による遠距離斬撃、歩兵からは各種魔法攻撃が殺到する。
「グヴゥゥウゥゥウァァァァ!!!」
体のあちこちを欠損させながら、巨人がのたうつ。
『撃ち方やめ!』
十字砲火が止み、砂煙が晴れ巨人の姿が覗く。全身の外殻が砕け、四肢も欠落し瀕死状態だ。
「グ、グルワァ……、」
僅かに体を伸ばしたのち、巨人は再び窪地に倒れ込む。体から白煙を上げなが融解していく。
『モンスターを呼ぶ叫びを上げると聞いていましたが、呼ばれる前に倒せましたな。』
『ええ。』
ルディル隊長からの問いかけに、エリーゼは安堵の声で答える。
『案外余裕っすね!』
『バスティ、油断してはいけません。ここは廃墟遺跡です。いつモンスターが現れてもおかしくありません。』
他2機のマグナパイロットたちも余裕の雰囲気だ。だが、たしかに、ここは敵地の真ん中、油断はできないな。
俺は改めて周囲を観察する。特にモンスターらしき姿は……、
『わかってますって、油断して背後からグサッ!!とか嫌っすから──、』
ミシリ
『……ごぶ』
『せ、先輩……? 先輩ぃぃぃぃぃぃぃ!!』
思念波を揺らすバスティの悲鳴。その視線の先、ナタリア機は胴体を巨大な手で握りつぶされていた。大きな左腕が地面から生えている……。
地面が掘り返り、地中から白い巨人が姿を現す。地面に埋まっていたのか!?
「クルゥワァァァァァァァァァ!!」
聞き覚えのある、頭に響く奇声を巨人が上げる。周囲がにわかにざわつき始める。
『てぇめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
バスティが大剣で斬りかかる。巨人の左腕に命中し、浅い切り傷を刻む。
『マグナ、魔法兵は新たな巨人に威嚇攻撃! 戦技兵は周囲のモンスターを討伐!! ルクト!! ナタリア機を救出して!!』
エリーゼの指示により、突然の事態で静止していた各員が動き出す。
じわじわと集まってくる小型、中型モンスターと歩兵が戦闘を開始する。同時に遠距離攻撃可能な歩兵とマグナは、新たな巨人に向け攻撃を加える。
『先輩を離せよぉぉぉぉ!!』
バスティは無我夢中で巨人の腕を滅多打ちにしている。だが、切り傷は次々と修復されてしまっている。
「制限解放!!!」
視界がモノクロに変化し、周囲の全てが緩慢になる。巨人の頭上、俺はそこから巨人に向けて急転落下する。
「おおおおぉぉ!!!」
落下しつつ、左腕から連発式の束撃弾こと、速射束撃を顔面目がけて撃ちこむ。
「クオゥ!」
速射束撃の雨を嫌がり、巨人が右腕を振り回す。
巨大な腕は暴風を巻き起こしながら接近してくるが、今の俺にはスローすぎる動きだ。腕の動きを掻い潜り、懐へと潜り込む。
【Willact Field Detected ...】
【Willact Field Detected ...】
周囲から殺到する思念力の接近警報が鳴り響く。|視界投影型ディスプレイ《インサイトビュー》には攻撃予想軌道が表示され、視界に多数の軌跡が錯綜する。
隙間を縫って突き進む。その合間を縫うように味方の攻撃が巨人に着弾する。
「グ、グルゥゥ」
巨人がひるんでいる。その隙に!!
「オォォォォォラァァ!!!」
俺の右掌から膨大な力の放流が噴き出す。強引な圧縮から放たれる一撃は、巨人の左腕を外殻ごと粉砕する。引きちぎれた左腕が落下し、手の中からひしゃげたマグナが転がり出る。
「グルルルルゥゥゥゥァァァァッ」
唸るような悲鳴を漏らしつつ、巨人が後ずさる。追い打ちのように味方の援護射撃が再び着弾し、巨人は背中から倒れる。
『先輩っ!!』
バスティ機がナタリア機へと近づく。
「バスティ!! ナタリア機を連れて下がれ!!」
『……っ!!』
俺の声に反応するように、バスティ機はナタリア機に肩を貸すような姿勢で離れていく。
「グボガグゥゥゥガァァ!!」
巨人が上半身を起こし、右手で俺を掴むように近づいてくる。叩き壊してやったはずの左腕も再生しつつある。ほんと、嫌になる再生能力だ。
巨人右腕に銃弾が命中し、はじかれるように吹き飛ぶ。
「コースケには触らせません。」
両脇の多段式魔導加速銃を連発しつつ、レインは俺の横まで飛行してくる。
「グガァァ……、」
巨人は苦しげな声を上げる。
『今だ! 畳み掛け──、』
ドシン……、
エリーゼ背後の丘の上に巨大な手が現れた。丘から顔小出す白い顔面。
『なっ……、』
2対目の出現に、エリーゼすら一瞬言葉を失う。
『ルディル! 私と2機で2対目の巨人を足止めします!! バスティとルクト、レインはそちらの巨人に止めを!!』
俺とレインは再び多段式魔導加速銃を構え、目の前で倒れている巨人頭部目掛けて連発する。
巨人が白煙を上げて溶けていく。
「すぐに援護に向かおう。」
エリーゼの状況を確認すべく振り向く。そこには2体の巨人と戦うレミエルの姿があった。
今まさに、ルディル機が吹き飛ばされ、粉々になりながら空を舞っていた。
『た、隊長……、』
更に低い地鳴りが響く。
左右の丘を超え、更に追加で2体の巨人がこちらに向かってくる。
「コースケ、後ろにも……。」
レインの言葉で振り向くと、そちらからも1体の巨人が接近してくる。
「5体……だと……?」




