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異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』  作者: FOX4
レティアラ大陸
535/1927

PHASE-535【聖龍なのにね】

 調子づくコクリコは更に過熱。

 本当にワンドを張り扇のようにあつかい、近くの岩に叩いて調子を取りつつ話す。

 大切なワンドじゃねえのかよ。


「いいのかトール。調子に乗っているぞ」


「まあいいんじゃないの。嘘は言ってないしな」


「……そうだな……」

 ベルの問いかけに返せば、ゲッコーさんも嘆息気味だが首肯する。

 しかし言い方が上手いな講談師コクリコ。魔法で幻惑とか。

 幻惑と聞けば、イリュージョンなのだろうか? とか、ミラージュダンスかもしれない。と、聞いたこともない魔法名を上げていく集落の皆さん。

 違います。ファイヤーボールです。ノービスです。

 喉元まで出かかっていたが、コクリコは嘘は言っていないからな。皆さんが勝手に勘違いしているだけだ。

 実際はファイヤーボールを水面に着弾させて、足音を聞き取りにくくしていたが正解でした。と、心の中だけで言っておこう。

 コクリコも頑張ってたし、実際、あれがあったから一太刀を入れる事にも成功したからな。

 花を持たせてやろう。


 当の本人は、いつ俺が真実を公言するのかと緊張感もあるようで、琥珀色の瞳が忙しなく俺の方に向けられる。

 俺がリアクションを起こさないと知れば、嘘を言わないようにしつつ、誇張しながら自身の活躍を語り、明らかに一対一だとコクリコでは勝てない皆さんから拍手喝采をもらっていた。

 なんとも綱渡りな講談だ。流石に笑えてきたぞ。

 

 この件は当然のことながら自伝に書くだろうけど、ここだけは俺の優しさとして、同時発売される暴露本には真実を記載しないでおこう。

 今回の活躍の報酬としてな。

 ゼノの時も頑張ってくれたし、要塞での戦いでは新魔法も披露してくれたコクリコ。

 なんだかんだで成長している。


「ところで、ここには護衛軍なんかは来なかったんですか?」

 リズベッドが救い出され、コクリコの活躍譚にテンションが上がっている面々の中で笑みを湛えて佇んでいるガルム氏に問えば、


「来たぞ。いつもの様に翼幻王ジズの連中がな。勇者はここには来なかったのか? と、普段みせる事のない神妙な面持ちでな。神妙すぎて嘘くさくもあったが」


「それで返事は?」

 このノリからして聞かなくてもいい事だろうけど。


「もちろん来なかったと言ったさ。言っただけで調べもせずに帰っていったがな」

 なんとも適当だな。普通なら集落内を一応は見て回るだろうに。

 適当すぎるから助かるね。


「連中、空からの監視を強めているそうだが、どうなんだろうな」

 ガルム氏は空を見上げる。

 俺もつられて見れば、砂金を空にまいた様な美しい星空が夜の空を彩っているが、脅威になるような存在は確認できない。

 基本的に鳥系の亜人が多いのかな? 夜は行動できないとか。

 もしくは適当だからサボっているだけなのか。

 どちらにしても、こちらからすればありがたい。


「さて、再会を喜んでいるところ申し訳ないが」

 地中からの声と、隆起する大地にざわつきが生まれる。

 ガルム氏の子供たちは怖かったのか、いつの間にかベルに抱っこされていた末っ子君がしがみついている。

 他の子供たちもベルの後ろに隠れるという行動。

 有事における行動としては大正解の子供たち。

 一番の安全地帯だからな。

 でもって、いつの間にかモフモフと戯れているベルの速さは流石でしかない。


「大丈夫ですよ皆さん」

 俺が仕切らなくてもしっかりとコクリコが伝えれば、皆さんのざわつきがやむ。

 この求心力。中々に高いカリスマ性をお持ちだな。


「早急にこの地より離れるべきだろう。前魔王が救われたと知れば、この集落以外の派閥の者達も個々に動くはずだ。現魔王の支配地域からはいち早く出ることを進める」

 しっかりと姿をみせる地龍。

 農耕馬サイズの存在に、地龍を目にしたことのない面々はどちら様? といったリアクション。

 本来、人々が目にすることのない聖龍の一柱であるから、リアクションとしては間違いではないだろうけど、神々しく溢れ出る威厳によって、平身低頭となるのが正解ではないだろうか……。

 う~ん、もしかして威厳、溢れ出てない系の聖龍?


「おうまさん」

 地中から出てきた地龍を見て、真っ先にベルにしがみついていた末っ子君がそう言えば、


「そうだ。お馬さんだ」

 と、ベルは当然の如く訂正しない。

 可愛い存在の言動に対して、全てを肯定していくスタイルがうちの帝国軍中佐。


「馬ではない。地龍だ……。地龍パルメニデスだ……」

 何とも寂しそうな自己紹介だった。


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