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PHASE-1536【これで決めたい】

 焦燥――により姿勢の悪い状態で打ち込んでくるクロウス氏の右ストレート。

 狙いはゲッコーさんの頭部。

 苦し紛れの一撃など当たるわけもなく、首をわずかに傾けての回避から、体を反転させての、


「珍しいな。柔道技とは」

 伸びた右腕を両手で掴み、背中をクロウス氏に当てれば、そのまま床へと投げつける技は一本背負い。


「ガァ!?」

 ちょっとカラスチックな鳴き声に聞こえた苦しみからの短い声。

 直ぐさま逃げようとしたのか、床に触れた背中部分で懸命に翼を羽ばたかせている。


「逃がしたくはないな。正直、気を失わなかった事には驚かされた。細身の割に打たれ強い。これも不可視な障壁の恩恵かな?」

 問いかけに返す余裕もないようで、翼をバサバサと動かす。

 それが運悪くゲッコーさんの顔に触れる。

 バチリッ! と、強い音は鞭による一撃を彷彿とさせた。

 顔に強い衝撃を受けたことでゲッコーさんは拘束を解いてしまう。

 その間に脱したクロウス氏。


「大丈夫ですか!」

 スイッチとばかりに俺がクロウス氏に駆ける中で問えば、余裕の笑みを浮かべながら、


「問題ない」

 と、短く返してくれる。

 継いで――逃がしてすまない。と、耳朶に届くが、ゲッコーさんが取り逃がすのだから、ここにいる面子では誰も拘束なんて維持できない。

 投げによるダメージを与える事だって出来ず、手痛い反撃のおまけ付きでやられていたことだろうさ。

 なのでゲッコーさんを責めることは誰にも出来ない。

 

 なによりも強者であるクロウス氏に大きなダメージを与えてくれているからね。

 どれだけの痛打を受けたのかは、眼前にて余裕もなく懸命になって距離を取ろうとしているクロウス氏を見れば分かるというもの。


 必死にこっちと距離を取ろうとしているけど、俺からは逃げ切れない。

 というか、逃げ果せるだけの足運びではない。

 投げによるダメージを回復したいんだろうけども、逃げつつ回復を行うのは難しいようだ。

 ふらつく足。

 視点の合っていない目。

 ここに俺の追撃。

 回復魔法であるヒールを実行したくても、それを実行するだけのネイコス発動のための集中に傾倒する事ができないといったところか。


「これは好機!」

 と、俺以上に勝利へのニオイを嗅ぎ取る嗅覚を有しているコクリコが後衛から一転して前衛へと変わる。


 いつの間にか俺と併走し、


「お先です」

 と、追い越していく。

 ワンドの貴石を黄色に輝かせ、


「アドン! サムソン!」

 と、快活よく継げば、サーバントストーンを自分の周囲から解き放ち、後退するクロウス氏を包囲するように布陣させ、


「アークウィップ」

 電撃の鞭をここでも発動。

 ワンドを振り回し、アドンとサムソンからも帯状の電撃鞭が顕現。

 包囲からの電撃による鞭打。


「ガァァァァァァァアッ!」


「当たった!?」

 三本の電撃鞭がクロウス氏へと直撃すれば、使用者であるコクリコの声は興奮したものになる。

 俺のボドキンが当たった時と同様のリアクションだった。

 つまりは、直撃するとは思っていなかったようだ。

 

 如何にダメージを受けていようとも、大立者という強者なのだから、何かしらの対策を講じてくるとコクリコも考えていたんだろうな。

 

 それが出来ないほど、ゲッコーさんの投げが強烈だったということだ。

 デスベアラーの時もそうだった。

 強者であろうとも、それ以上の強者が繰り出す攻撃を受ければ、そこからのリカバリーにはかなりの時間を必要とするわけだ。

 だがこの世界には、その時間の問題を短縮することを可能とする回復魔法やポーションなどのアイテムといった存在がある。

 解決策を実行させない事こそ、この世界における戦闘で勝利を収める重要な手段。

 

 ――間髪入れずに、


「もう一撃!」


「ぐぅぅ……」

 浅かったけども追撃の左ストレートからの三発目のボドキンは、二発目と違い入る。

 これでこちらが喰らった分は返せた。

 コクリコのアークウィップで動きが鈍くなっていたのに、直撃を与えさせてくれないのところは、流石は大立者といったところ。


「カイディル!」

 背後からの声はアル氏。

 まずい状況だと言うのを悟ったようだ。

 そんなアル氏は懸命に戦ったのだろうけども、今はロマンドさんたち上位スケルトンによって拘束されている。

 ロマンドさん達も善戦したようで、上位スケルトン達の鎧やマント。ローブがボロボロになっているのが目立つ。


「トール!」


「分かってるって」

 絶好の攻め時であるのだからよそ見する余裕はないとコクリコの強い語気と視線。

 俺だって今度はきっちりと決めたいからね。

 

 駆けながらも、右拳の前方に力を蓄えていた。

 イグニースを収縮させて球体へと成形。

 ゲッコーさんの一本背負いを無駄にしないために、練りに練った必殺となる強烈火は用意万端ととのっている。

 加えて、左拳でも力を練り、四発目のボドキン発動も可能。

 あとは両拳を絶好の場面でぶち込むだけ!

 

 ――弱って足元も視線も定まっていないクロウス氏の今の状態こそ絶好の場面!

 

 なので、


「今ここで、全力をぶち込む!」

 力を纏った拳をピーカーブスタイルにて構えながら突進。


「なんと無茶な接近……」


「いえいえ、絶好の好機だと思っています!」

 背後からの不意打ちであったが、クロウス氏並みの強者であるデミタスにも一撃を見舞った経験がある。

 だからこそ決められるだけの攻撃は可能!

 あの時とは違って、この戦闘では俺を支えてくれる頼れる面々も

いてくれる!


「決めますよ!」


「む、無理であることを……教えましょう!」


「気迫は十分ですが、喘鳴混じりの声ですよ」


「であったとしても、無理ですね」


「その無理を押し通らせてもらいます!」


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